『「失敗することは悪くない!」と思える子ども』を育てよう 失敗から学ぶ力がこれからの時代を生きる力になる

『「失敗することは悪くない!」と思える子ども』を育てよう 失敗から学ぶ力がこれからの時代を生きる力になる

2022.02.11

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小宮山利恵子

小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

予測不能なこれからの時代を生きていく子どもが「好き」を追及し、「個」として生きていくために必要なこととは? リクルートのスタディサプリ教育AI研究所所長・東京学芸大学大学院准教授である小宮山利恵子さんの連載コラム第3回。

教育がテーマの講演をすると、「テクノロジーの進歩で未来はどうなるんでしょうか?」とよく聞かれます。

これからは、テクノロジーの進歩によってますます予測不可能なVUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity曖昧性)の時代になるといわれています。

それだけでなく、新型ウィルスによるパンデミックや自然災害など、想像もしなかった災厄も増えていて、不安が尽きることはありません。

それは、いつどんな状況に出くわすかわからない、地図がない世界を歩いているようなものです。

一方、私も含めて今の親世代は、「こっちに歩いていけば大丈夫」と進むべき道を地図で確認するように大人になった方も多いと思います。

「人生のゴールは高学歴で有名企業に就職すること」と敷かれたレールを歩んできた人がその典型でしょう。

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※写真はイメージ(iStock.com/byryo)

しかし、大企業の経営悪化や大規模なリストラが増えている今の時代、「安全な道」などもうなくなっているのです。

では、子どもの幸せを願う親はどんなことを意識して子育てすればいいでしょうか。

「親のフィードバック」が、子どもの失敗を失敗で終わらせない

ひとつはっきり言えることは、地図がなくても進むべき方向がわかるコンパスを持つ必要がある、ということです。コンパスを持った上で動きながら考えて、よりより方向へと進んでいかなければならないからです。

なぜなら、進むべき道を探して石橋を叩いて渡ろうとしても、時代の変化にともなって橋を渡る必要がなくなったり、橋自体がなくなったりすることもあるからです。

そのためこれからは、30パーセント、40パーセントくらい考えたら動き始める。動きながら考えて軌道修正を繰り返したほうが、成果に結びつきやすくなるでしょう。

正解がわからないなかでチャレンジすれば、当然、失敗も増えます。

けれども失敗こそが大事で、失敗にこそ学びがあるのです。

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※写真はイメージ(iStock.com/Orbon Alija)

失敗から学ぶためには、失敗をただ失敗で終わらせるのではなく、その経験を次に活かせるようなフィードバックを得ることが大事です。

とはいえ、小さなお子さんにはまだむずかしいですから、そのときが親の出番です。

子どもは遊びの天才で、失敗をする天才でもあります。そもそも失敗を失敗だと思わないのが子どもの強みですから、どんどん“失敗慣れ”させましょう。

子どもの失敗は失敗ではなく、試行錯誤の結果だと思えば、親の見方も変わると思います。

何か新しいことをやろうとしたら、その好奇心やチャレンジ精神を認めてあげてください。

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※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)

間違っても、「なんでそんなことしたの?」「失敗しちゃダメでしょ!」などと非難や否定はしないことです。

もちろん、危険なことや人に危害を及ぼすようなことは、しっかり注意しなければいけません。でもそうでなければ、失敗は子どもの成長をうながすチャンスです。どうすれば次はもっとうまくいくか、考えさせてみてください。

まだ自分で考えられない小さなお子さんは、親が先回りをして、答えを教えてしまうのではなく、「どうしてこうなっちゃったんだろうね?」と問いかけて、一緒に考えてあげるといいでしょう。

子どもの頭のなかに「?」がたくさんあると、成長とともにその点と点がつながって、理解できることが増えていきます。

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※写真はイメージ(iStock.com/ElenaMist)

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トライ&エラーを繰り返すことで「避けるべき道」が選べる

日本は、学校も企業も、失敗すると評価が下がる減点方式をずっと続けてきました。私はそれが、日本が世界に大幅に遅れをとっている原因のひとつだと思っています。

反対に、時代をリードしている世界のトップ企業は、若い創業者たちのトライ&エラーの繰り返しによって、素晴らしいイノベーションを生み出してきました。その動きはこれからますます加速していくでしょう。

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※写真はイメージ(iStock.com/golero)

リクルートにも大切にする価値観のひとつに、「個の尊重 - Bet on Passion」があります。従業員一人ひとりの違いを尊重し、そのユニークな発想や情熱を歓迎するというものです。

例えば『スタディサプリ』も今では全国の学校に使われていますが、実はこのサービスを生み出した責任者の山口は毎年社内の新規事業提案制度に挑戦しては、落選を繰り返し、6年目にやっとグランプリをとっています。

これは、毎年落選しても、その時にもらう、フィードバックや激励、社内からの期待を糧にして、挑み続けた結果です。

自分が持つコンパスで、時代の流れに沿った方向性をみきわめることができれば、不安は軽減します。

そのためには、経験値を増やして失敗から学び、勘を研ぎ澄ましていくことが大事なのです。

すると答えが100パーセントわからなくても、「進まなくていい道」や「やらないほうがいいこと」が少しずつわかるようになっていきます。

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※写真はイメージ(iStock.com/stockarm)

子どもが折れないためにまず親が「失敗の恩恵」を理解する

私も中学生男子の母親なので、子どもの幸せを願って親が安全、安心だと思える道を歩かせたい気持ちはよくわかります。

けれども、予測不可能な時代で、臨機応変に考えながら行動することが求められるときに、失敗を怖がったり、失敗によって心が折れ立ち直れなくなったりするようなことがあれば、それこそ子どもにとって不幸なことではないでしょうか。

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※写真はイメージ(iStock.com/kieferpix)

日本は、衣食住に恵まれた豊かな環境で育つ子どもが多いですから、失敗する機会自体が少ないといえます。

そういう意味では、「どうすれば子どもの成長につながる失敗をさせることができるか?」と、私自身も考えたことがあります。

息子には、旅やキャンプなどいろんな経験をさせてきましたが、それでもまだ失敗経験は少ないほうだと思うので、本人が希望している留学を叶えたいと思っています。コンフォートゾーン(居心地がいい楽な場所)を抜け出すと、自分しか頼るものがなくなるからです。

私自身、韓国、チュニジア、アメリカなどに留学して、数え切れないほど失敗した経験が、すべて仕事や人生に役立っています(笑)。それほど、失敗から学べることは大きいと、親自身も経験して知ることが大事かもしれません。

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スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

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