こちらの記事も読まれています
働くママの「本質美容」 エイジングのよくある誤解と「ここに投資すべし!」
Profile
皮膚科専門医/医学博士
皮膚科専門医/医学博士
皮膚科専門医、医学博士。アンチエイジングリサーチセンター研究員。2010年日本医科大学医学部卒業後名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)、『おくすり朝ごはん - 皮膚科医が肌荒れしたら食べる - 』(ワニブックス)など。2016年長男、2019年次男をアメリカにて出産。
自身も子育て中の皮膚科専門医・小林智子先生が、忙しいママたちに贈る美容コラム連載。第3回のテーマは「エイジングの誤解と投資ポイント」です。正しく効率的にエイジングケアを実践し、子育て中でもキレイを維持しましょう。
老化の二大原因は酸化ストレスと糖化ストレス
どんな人でも、年齢を重ねればその分、加齢による身体の変化は現れます。
それでも、「あの人は年齢よりも若く見えるなぁ」と感心してしまう人もいれば、反対に年齢よりも老けてみえる人もいますよね。そういった見た目の差というのは、どこから生じるのでしょうか。
老化に大きな影響を与える原因としては、「酸化ストレス」「糖化ストレス」のふたつが挙げられます。
一言で言うと、酸化ストレスは身体の「サビ」、糖化ストレスは「コゲ」を指します。
シワやたるみの原因、酸化ストレスを防ぐ
「酸化ストレス」については、聞いたことがある人も多いのではないかと思います。
酸化ストレスによって身体の中で活性酸素という物質が過剰に増えると炎症をもたらし、それによってさまざまなエイジングサインが加速すると考えられています。
肌においては、炎症によってコラーゲンが分解されやすくなり、シワやたるみをもたらします。通常、加齢によってコラーゲンの量はどんどん減っていくのですが、酸化ストレスが加わるとその量だけでなく質も低下し、「より深い」シワを作ってしまうのが酸化ストレスの特徴です。
酸化ストレスをもたらす原因にはさまざまありますが、最たるものは「紫外線」です。そのため、エイジングケアには何よりも日焼け止めによるUVケアが重要となります。
その上で、日焼け止めと併用して使うのをおすすめしたいのが「ビタミンC」です。
ビタミンCは抗酸化成分といって、酸化ストレスを軽減してくれる作用があります。それだけでなく、美白効果やコラーゲンの産生効果といった美肌効果も期待できる成分です。
これまでの報告で、日焼け止めとビタミンCを併用することによって紫外線ダメージをより軽減する効果がある、ということもわかっています。うまく活用するといいでしょう。
酸化ストレスには、他にも大気汚染やタバコ、ストレスなどが原因として挙げられます。現代社会ではストレスを感じやすく、ビタミンCをサプリメントなどでこまめに取り入れることも有効です。
糖化ストレスを抑えるキーワードは「食」と「運動」
次に「糖化ストレス」ですが、「糖化」という言葉に馴染みがないという方も多いかもしれません。
糖化とは、身体の中で余った糖がタンパク質と結合して老化物質を作り出す現象です。
糖化は全身で起こりますが、肌においては「酸化ストレス」と同じくコラーゲンが主なターゲットとなり、「質の悪い」コラーゲンを作り出してしまいます。それによって肌のしなやかさが低下し、シワやたるみももたらします。
糖化ストレスを抑えるためには、まず身体の中で糖を余らせないことが重要です。
具体的にはまず食事が挙げられます。ファストフードなど、ぱぱっと済ませるような食事は血糖値が急激に上昇し、糖が余りやすい状態となります。
そのため、ゆっくりよく噛んで食べることが大切です。
「どう」食べるか、だけでなく「何を」食べるかももちろん重要です。
ドーナツなどの甘いスイーツは糖質を多く含むため、もちろん血糖は上がります。白米などの炭水化物も、種類によっては血糖値が上がりやすいものがあります。これを数値化したものが「GI値」と呼ばれるもので、白米は高GI値(81)なのに対し、玄米は(55)と、比較的GI値は低いことがお分かりいただけるかと思います。
基本的に精製されていない玄米やライ麦パンなどはGI値が低くなるため、意識して取り入れてみるといいと思います。
また、運動も糖化対策になります。
特に、食後身体を動かすことによって血糖値の上昇は緩やかになりますので、食後すぐにだらだらテレビを見るのではなく、食器洗いやストレッチなど身体を動かすといいでしょう。
エイジングケアはまず「インナーケア」から
「エイジングケア」と言うと、高価な美容液をイメージされる方が多いかもしれません。
しかしここまでの説明で、高価な美容液の前に「毎日しっかり日焼け止めを塗ること」「生活習慣を見直してインナーケアを意識すること」の重要性がお分かりいただけたかと思います。
エイジングケアはシンプルなケアでも十分なのです。
美容液に投資するなら「レチノイド」配合のものを
もちろん、エイジングケアに有効な美容成分は他にもあります。
これまでの研究の中でも最もエビデンスレベルの高いアンチエイジング成分は「レチノイド」と呼ばれるビタミンA、およびその誘導体です。
レチノイドは「ターンオーバー」と言って肌の生まれ変わりを促し、さまざまなエイジング効果を発揮します。
まず、メラニンを早く排泄することでシミの改善が期待できます。
また、コラーゲンの産生を促すことによってシワの改善やたるみ毛穴の改善をもたらしてくれます。それだけでなく、肌のテクスチャーやキメを整えてくれる効果もレチノイドにはあります。
世の中には、たくさんの「アンチエイジングクリーム・美容液」があり、何を選んだらいいかわからないほどです。
もし確実な効果を期待したいのであれば、私は「レチノイド」をおすすめします。レチノイドにはいくつか種類があり、多くの化粧品では「レチノール」と呼ばれる形で配合されています。
実際に、美容に携わるドクターはまず全員レチノイドを取り入れていると言っても過言ではありません。
レチノール化粧品は最近ではプチプラブランドからも登場していますが、レチノールは安定性が非常に低く、処方や容器などが非常に重要となる成分です。そこはある程度高価な商品に投資した方がいいと個人的には考えています。
エイジングケアに「遅い」はありません。気がついた今が一番若いのだから、ぜひ今日から「シンプルだけど効果のあるエイジングケア」を実践してみてください。
Profile
小林智子
皮膚科専門医、医学博士。アンチエイジングリサーチセンター研究員。2010年日本医科大学医学部卒業後名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)、『おくすり朝ごはん - 皮膚科医が肌荒れしたら食べる - 』(ワニブックス)など。2016年長男、2019年次男をアメリカにて出産。
2022.01.28