高濱先生に聞く、スマホばかりの夫を家族と向き合わせる伝え方

高濱先生に聞く、スマホばかりの夫を家族と向き合わせる伝え方

2021.07.06

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は花まる学習会代表の高濱正伸先生が、教育に関するお悩みに答えます。お悩みはオンラインで随時受付中。

【お悩み】スマホに夢中で話を聞かない夫。改善させることはできますか?

7歳5歳のママ
7歳5歳のママ

以前から休みの日の夫を見て、スマホをいじっている時間が長いと感じていましたが、コロナ禍でのリモートワークで一日中夫の姿を目にするようになり、「いつもスマホ片手になにかしているな」とイライラすることが増えてきました。

仕事の休憩中のスマホはまだ分かりますが、朝も夜も食事ができるまでスマホ、子どもや私の話を聞く際も基本スマホ画面を見ていて、注意すればやめることもありますが、ゲーム中などの場合は渋るときもあり、半ば呆れています。

また、自分はスマホ三昧なのに子どもにはゲーム時間を厳しく言うので、その姿を見ている子どもたちも「なんでお父さんはいいの?」「ずるい」と矛盾を感じているようです。

子どもへの影響も気になるため、できれば改善してほしいのですが、どうすればよいでしょうか。

【高濱先生の回答】夫婦円満には直接のコミュニケーションが必要。デジタルデトックスをしましょう

夫に共感してほしい妻とスマホ依存の夫

スマホが普及してまだ10年くらいですが、今は電車に乗ったほとんどの人がスマホを触っています。もしも宇宙人が地球人を観察しに訪れたら、常にスマホを見ていることが当たり前の生き物なんだと思うでしょうね(笑)。

何か用事があるわけでもないのに無意識に何度も確認してしまったり、通知はないのにバイブレーションが鳴った気がして触ったりしてしまうのは、「幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション・シンドローム)」といって、スマホ依存症の可能性も出てきます。

もちろん、スマホを手放せないのは男性に限ったことではないので、お互いさまな部分もあると思いますが、私の経験上、こうした不満は圧倒的に妻側からのことが多いです。

その原因を考えてみると、女性は共感を大切にする生き物で、画面越しだけではなく、目と目を見て頷き合ったり、心と心で分かりあったりすることを求めているのに、パートナーである夫に理解されず、それができない状態なのではないでしょうか。

世の妻たちから「スマホを見ながら返事をされることほど嫌なことはない」という話をよく聞くのも、せっかく分かってほしくて話しているのに、向き合ってもらえないことに耐えられないからですよね。

また、相談者さんが心配している子どもへの影響も深刻です。

お父さん自身が「お母さんの話を聞かないでずっとスマホを触ってる」というのを日々実践で教えているようなものだから、子どもは「コミュニケーションとはこういうものだ」と思ってしまう危険性があります。


夫婦関係を改善する2つの解決策

具体的な解決策ですが、まず1つ目は、「19~21時の間は家族、全員絶対にスマホを見ない」という風に、家庭ごとに1時間でも30分でもいいからデジタルデトックスをする時間を決めることです。

夫に伝えるべきことは「子どもの成長のためには、一日に数十分でもスマホを見ず、お互いに目と目を見て話す時間や、共感したり笑い合ったりする団らんの時間を作り出すのが親としてのつとめではないか」ということ。

自宅にずっといるのであれば、食事の間だけでも家族団らんの時間になるように、食事を終えたらすぐに席を立つのではなく、今日あった良いこと・悪いことをひとりずつ話すなど、ルールを決めるのもよいでしょう。

この問題の根本は、スマホ以前に「そもそも結婚生活を維持する気があるのか」ということで、「なんのために結婚したのか」が問われていますよね。

夫婦はお互いに、日々パートナーに受け止めてもらってなんぼです。とくに周囲とのつながりが薄くなってしまったコロナ禍において、子育ての不安を聞いてくれる相手が夫しかいないときに、スマホを見ながら対応されたら怒り心頭になるのも仕方ありません。

そこで、解決策の2つ目としておすすめしたいのが、夫への伝え方を工夫してみることです。

効果的な方法はいくつかありますが、私が知る限り、かなりの確率で夫が変わったとみなさんが言うのが、手紙です。

たとえば「〇月〇日〇時、私が話しかけたときにあなたはスマホばかり見ていて、きちんと会話ができませんでした」と夫がスマホを触っていた日時から細かく記載し、「これでは結婚生活を続ける意味がないので、真剣に相談したい。今後も家族を続けていく気があるのなら、お互いに向き合って話をする時間を持ちたい」という旨を書いて切実に訴えましょう。

世の夫たちは、普段妻がどんなに口頭で伝えても「なんだかんだいっても妻は自分のことが好きなんだ」と夫の座に胡坐をかいているので、あまり聞き入れないことが多いものですが、真剣な手紙を見るとたいていの男は「やばい!」と思って行動が変わるはずです。ぜひ、メールやLINEではなく、手書きで本気度を伝えましょう。


スマホを置いて、目の前にいる相手と向き合って

もちろん夫婦の在り方はひとつではありませんが、要は相手の気持ちを受け止めようとする姿勢の見えなさに、人は腹が立つのだと思います。

たとえば、ひとりで家事も育児も担い、いっぱいいっぱいになりながら料理をしてるのに、目の前で優雅にスマホをいじっている相手に、ここぞというときに頼れるでしょうか。

スマホばかり見ていて、パートナーが元気がなかったり、調子が悪そうにしていたりする様子に気が付けますか?

スマホ依存の問題は「目の前にいる人の気持ちに気がつけない人を量産している」ことです。

同じ空間にいる人の様子を察知して「どうしたの?」と気づいてくれるだけで、人間関係はだいぶ変わってきますよね。

一緒に暮らしていくわけですから、「相手の心を受け止めよう」とか「気づこう」という気持ちを持ち続けるよう、日々意識しなければいけません。

子育て中の夫婦がスマホとどうつきあうかは今後も大きな課題となっていくでしょうね。

コロナ禍で、家族で一緒にいる時間が増えた方が多いと思いますが、その時間をスマホではなく家族のために使えば、会話も笑顔も増えます。

実際デジタルデトックスを取り入れたご家庭では、食後に毎日トランプやボードゲームをすることにしたそうです。

お子さんの成長を日々感じられるようになり、家族で「あの手はこうすべきだった」「この戦略のここがよかった」など、その後の会話も楽しんでいるそうです。

まずはデジタルデトックスの時間を提案し、それでも受け入れてくれなければ手紙、というステップで夫が変化するか見守ってみてください。

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高濱正伸

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数
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