【寝かしつけの新常識#03】赤ちゃんが朝までぐっすり眠る秘密は「赤いライト」にあった
KIDSNA編集部が選んだ、子育てや教育に関する話題の最新書籍をご紹介。今回は、『赤いライトで朝までぐっすり 赤ちゃん寝かしつけの新常識』(東洋館出版社)。睡眠科学者で二児の母である著者が、科学的根拠に基づいた赤ちゃんの眠りのしくみをお伝えします。
光とルーティーンの大切さ
生まれたときの体内時計はでたらめ
赤ちゃんの体内時計がどのように発達するのか、まだすべては明らかになっていませんが、生まれたばかりの赤ちゃんに対しても、光は確実に影響を及ぼしています。
予定日より早く生まれ、NICU(新生児集中治療室)に入っている赤ちゃんたちの、あるグループには一定の明るさの弱いライト、あるグループには昼と夜で明るさの変わるライトを当てる、という実験がエール大学でおこなわれました。
すると、明/暗のサイクルで育てた赤ちゃんのほうが、日常生活のリズムが早く発達し、昼はより活発に、夜はよく眠るようになったのです。
このことから、赤ちゃんに当てるライトの設定を、生まれた瞬間からコントロールすることが重要だとわかります。
新生児の体内時計は、ほかの面ではまだ成熟していません。大人の場合は、毎日のコルチゾール(目覚めをうながすホルモン)濃度のレベルは朝起きたあとにピークをむかえ、注意力を高めます。
お腹の中にいる赤ちゃんや新生児の場合、コルチゾール濃度のリズムは真逆で、活動レベルが低い夕方にもっとも高くなります。睡眠ホルモンであるメラトニンにいたっては、生後2か月まではっきりしたリズムは観察されません。
生まれたばかりの赤ちゃんの行動や身体機能には、まだ効率的な時間割がなく、現実の時刻とも、親の望む就寝・起床時間とも合っていないのです。
つまり、生まれたばかりの赤ちゃんの体はでたらめに動いています。わたしたち親にできることは、赤ちゃんが生活しやすくなるように、体を整えてあげることです。
そのためには、次に何が起こるかを予測できるようなリズムをつくってあげなくてはなりません。赤ちゃんは、不満を感じても、自分ではその原因がわからないことがあります。
光、睡眠、そして食事のスケジュールをつくり、決まったルーティーンを整えれば、赤ちゃんはむやみに不機嫌になるのではなく、自分でもその原因がわかるようになります。ある時刻にはお腹がすき、ある時刻には疲れて眠くなること、そしてママが授乳したり寝かしつけたりしてくれることを学習するのです。
こうすることで、赤ちゃんの寝つきがよくなるだけでなく、夜泣きという大きな悩みの解消にもつながります。赤ちゃんが真っ暗闇や赤い光が寝る時間を意味することを学習すれば、夜中に起きても、自然に落ち着いてまた眠りに戻るようになります。
光の使い方
昼モードと夜モードをしっかり分ける
人間の体内時計は、赤い光には反応せず、ふつうの白い電球やスマホやテレビの画面に含まれる青い光に影響されやすいことがわかっています。わたしは、寝室用に赤い球を買って、長女リアの夜間の授乳やおむつ替えのときだけ使うことにしました。
試してみると、リアはすぐにこの環境に慣れました。寝室で青い光を浴びることがなくなり、メラトニン(睡眠をうながすホルモン)濃度が高まったおかげで、夜は眠るものだと、体で理解したようです。
これが、本書のいちばんの特徴である赤い光です。
赤い光は、メラトニン濃度に影響しないので、寝ている赤ちゃんのじゃまをしません。授乳やおむつ替え、夜泣きのときの様子を見るために明るさを確保しつつ、青い光のように赤ちゃんに朝だというサインを送ることもない、いいことづくめです。
「赤い光だけで朝までぐっすり眠れるようになるの?」
一言で言えば、答えは「あと一歩」。それだけで完璧とはいきませんが、明かりを正しく使うことは、簡単におうちで実践でき、すぐに準備できる解決策です。
わたしは、1日を2つのモードに分け、「昼モード」「夜モード」と呼んでいます。言葉のイメージどおり、昼モードは明るく活動的、夜モードは暗く静かな状態を保ちます。
親にできることは、早くから昼モードと夜モードのちがいをはっきりさせて、赤ちゃんの体内時計が正しく動くようにサポートすることです。このことは、一生役立つ健康的な睡眠習慣を身につけさせることにつながります。
夜モードのすごし方
0歳~1歳の赤ちゃんを育てるママ・パパがいちばん頭を悩ませているのは、夜泣きだと思います。
一方で、成長して2歳~4歳になると、就寝時間と起床時間が問題になってきます。
「子どもが早朝に起きてしまい、困っている」という話をよく聞きます。家族全員が朝5時に起きることを、仕方のないことと受け入れてしまっている家族も多いです。でも、そんなことはないんです!
わたしたちの体に「起きる時間だよ」と知らせるのは、朝の光に含まれる青の成分です。夏には、午前4時頃に日が昇ります。朝4時に寝室に日光がさしこむと、赤ちゃんの体内時計は、それを「起きて!」の合図だと受け取ってしまいます。
どうすれば、これを防げるのでしょう?答えは簡単です。光を完全にシャットアウトする遮光カーテンを買って、赤ちゃんを寝かせている部屋(子ども部屋またはママ・パパの寝室)の窓に取りつけましょう。
夜にはカーテンをきちんと閉め、カーテンとカーテン、カーテンと壁のすきまをなるべく小さくしましょう。必要であれば、カーテンと壁のすきまをテープでふさいで、光が入らないようにしてもいいでしょう。
きちんと遮光できているかどうか、実際に光がさしこむ朝にチェックしましょう。
カーテンを閉めたとき、夜中と同じ暗さになることが理想です。
わたしたちの目は光にとても敏感で、光のつぶ(光子)ひとつでさえ感じてしまいます。光のつぶひとつでは、「朝だよ、起きて!」と体内時計に知らせることはできませんが、ごく弱い光をほんの短時間浴びるだけで、目覚めを引き起こします。光が5分ちらつくだけでも、時計はリセットされ、体内時計が乱れてしまうのです。
赤ちゃんの部屋を暗くすれば、赤ちゃんに起きる時間を知らせるのは、太陽ではなく、あなたの役目になります。
起きる時間まで部屋が暗いままなら、体内時計としては、午前4時はまだ夜ということになるのです。では、寝る前の時間はどうでしょう。夕方の日光では、青い光が減り、赤い光の割合が増えます。赤い光が強くなると、睡眠をうながすホルモンであるメラトニンが生成され、眠くなっていきます。
ところが、このあと部屋の明かりやテレビやスマホの画面の光を浴びつづけると、メラトニンの生成がうまくいかなくなります。
赤ちゃんには、夕方以降はできるだけ青い光を当てないようにします。そして赤ちゃんが夜に寝る部屋では、赤いライトを使いましょう。
ライトに使う赤い電球は、60W相当のLEDを買うようにしてください。従来の白熱電球より長持ちするだけでなく、赤い色彩がより「はっきり」しているため、赤ちゃんの睡眠に適しています。
60Wなら、本が読めるくらいの明るさもある一方で、電気をつけたまま寝たい子のために部屋の隅に置いておいても明るすぎるということはありません。おむつ替えや授乳などのお世話をするのには十分な明るさです。
赤ちゃんが夜中や早朝に起きてしまったときも、すべては夜モードのまま。寝室からは出さず、赤いライトだけをつけ、遮光カーテンは閉めておきます。赤ちゃんが小さいほど、おっぱいをあげるのには時間がかかり、多くのお母さんがスマホで時間をつぶしていると思います。わたしもそうです。
ただ、スマホの画面から出る光には、夕方の自然光より多くの青い光(ブルーライト)が含まれています。そして、スマホであれパソコンであれ、夜に画面を見るとメラトニンの生成が遅れ、寝つきが悪くなることが証明されています。これも、簡単に解決できます。
スマホやパソコンのナイトシフト(iOS)やナイトライト(Android)機能を使うか、ブルーライトをフィルタリングする無料アプリをインストールしましょう。あなたも赤ちゃんもブルーライトを浴びる量が減り、夜中の授乳のあとも、よりスムーズにもう一度眠れるでしょう。
赤ちゃんが寝る部屋からは、青い光をすべて取りのぞいてください。青い光は、青色に光っているとはかぎりません。緑色の光にも含まれています。青く光る目覚まし時計も、緑のランプが光る充電器も、部屋に置かないようにするか、テープや布で覆いましょう。
絶対に失敗したくないなら、赤い光だけを使っておけば安心です。
昼モードのすごし方
起きる時間になったら、1日のはじまりを知らせて、ルーティーンを開始します。「おはよう」と言ってカーテンを開け、赤ちゃんを起こすときは、昼間用の声で話しかけましょう。
目標は、夜モードと昼モードのちがいをはっきりさせることです。昼間の活動、お昼寝や食事は、夜の活動とはまったくちがうやり方にします。
そのために、いちばん大切なのは、昼寝の時間に部屋を暗くしすぎないことです。昼寝が長引かないよう、夜のようにぐっすり眠れる環境にはしません。
おくるみは使わず、昼寝の時間が終わったら起こしましょう。
生まれたばかりの赤ちゃんは、お昼寝をするとき明るくても暗くても気にしませんし、昼間に日光に当てることで、赤ちゃんの体内時計にまだ昼間だと教えることができます。まだメラトニンを生成する時間ではなく、夜のように長く眠るときではないとわかってもらうのです。
バウンサーやスウィングベッドなどを使ってもいいですが、目を離さないでください。ベビーカーのほうが寝つきやすい子は、ベビーカーで散歩しながらのお昼寝でもかまいません。
昼間は、赤ちゃんの周りが静かになりすぎないように、遊んだり、話しかけたり、音楽をかけたり、出かけたりしましょう。
反対に、こうした昼間の活動、光や音は、夜になったらゼロにします。寝かしつけの時間がきたら、夜モードをはじめます。寝室から赤ちゃんを出さず、声の大きさはささやき声にします。
いちばん大切なのは、ふつうの照明はすべて消して、赤いライトだけを使うことです。