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【専門家監修】子どもの社会性は叱っても身につかない?年齢別のポイントや家庭でできること
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立命館大学総合心理学部教授/立命館大学大学院人間科学研究科研究科長
立命館大学総合心理学部教授/立命館大学大学院人間科学研究科研究科長
立命館大学総合心理学部・教授/立命館大学大学院人間科学研究科・研究科長。2001年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。2007年立命館大学文学部准教授、2016年より現職。専門は乳幼児心理学・比較発達心理学。2022年よりRARA(立命館先進研究アカデミー)アソシエイトフェロー就任。
子どもにはのびのびと育ってほしいと願う一方で、保育園・幼稚園や小学校に入ってから、お友だちや先生との関係で苦労してほしくない……。そんな葛藤を抱く保護者の方に向け、子どもにとっての社会性について解説いたします。立命館大学総合心理学部・教授の矢藤優子先生監修のもと、年齢別の対応や家庭でできることもご紹介するので、参考にしてみてください。
そもそも社会性とは?
「あなたには社会性が足りない」など一般に使われる言葉ですが、一体「社会性」とはどんな性質を指すのでしょうか。
1 集団を作って生活しようとする、人間の根本的性質。
2 他人との関係など、社会生活を重視する性格。また、社会生活を営む素質・能力。「—のない人」
3 広く社会に通じる性質。社会生活に関連する度合い。「—の強い文学」
デジタル大辞泉より
人はひとりでは生きられず、さまざまな他人とかかわりながら生活を送る社会的動物なので、一定の社会性を備えることは生きやすさにもつながります。
では、その言葉を子どもに当てはめるとどうなるのでしょうか。
「自分の思いを他者に伝える」「相手の話を聞いて理解する」といったコミュニケーションが、子どもにとっての社会性と言えるでしょう。
たとえば、一つしかないおもちゃをずっと独占して、遊びたがっている友だちを悲しませることは社会性の乏しい行動とも言えますが、こういった衝突から子どもは徐々に「社会性とは何か」を学んでいきます。
社会性は乳幼児にも必要?
人が社会的動物である以上、社会性は生きていく上で必要な力です。保護者に守られる立場の乳幼児には必要ないと思うかもしれませんが、子どもはおもに保護者との関係で社会性を学んでいきます。
生まれて最初にかかわる親や養育者、親戚など、周囲の人々との関係を育むなかで、生活習慣やマナー、道徳、そして社会規範を知っていきます。
乳幼児にとっての社会性とは、保護者とのやり取りの中で「自分は大切にされている」という安心や、そこから芽生える自分や他人への信頼感がベースとなります。
社会性を学ばせるために「ここで〇〇しちゃダメ!」などと、人に迷惑をかけない行動を教えようと、子どもを叱るイメージがあるかもしれません。
ですが、「子どもに社会性をつけなきゃ!」と意気込むよりも、まずは自分や他人を大切に思えるよう保護者が子どもの安全基地になることが重要と言えます。
年齢別のポイント
保護者や身近な人との関係のなかで、乳幼児から社会性を育むにあたり、年齢別に意識したいポイントをご紹介します。もちろん個人差はあるので、目安としてください。
<0~1歳>保護者との間に信頼関係を築く
乳幼児との間で意識したいのは、社会性そのものよりも保護者との間の信頼関係です。
安心して自分を出し、保護者に頼って甘えられることが社会性の礎になります。まめにスキンシップをとること、「おいしいね」「楽しいね」など感情や心の状態について声をかけることを心がけましょう。
<2~3歳>もめごとを無理に止めない
この頃になると、きょうだいやお友だちと遊ぶようになっていきますが、子ども同士の遊びにはいざこざがつきものとも言えます。
子ども同士がもめはじめると、つい仲裁して止めたくなりますが、少しだけがまんしてください。というのも、もめごとは子ども同士がコミュニケーションを学ぶ機会でもあるからです。
叩いたり物を投げたりし始めると危ないので注意が必要ですが、大人が無理に終わらせてしまうと子どもたちの学ぶ機会を奪うことにもなってしまいます。事の次第を見守ることも時には大事だと考えるようにしましょう。
<4~5歳>家の外に連れていく
このくらいの年齢の時に必要なのは、子どもをおうちの外のいろんな場所に連れていくこと。
とは言っても、ほかの人と無理におしゃべりさせようとしなくても大丈夫です。お散歩やおでかけをするうちに、自然とコミュニケーションが発生することもあるでしょうから、そういう時にはひとりにせず、そばで見守っておくのがいいでしょう。
家庭でできることは?
子どもが社会性を育むために、保護者は家庭でどんなことができるでしょうか。
- 子どもの話をよく聞き、遊びに興味を持つ。
- いろんな人がいる場所におでかけする。
- 自分自身がむずかしい人間関係に対処する様子を見せる。
- 子どもがしていることに肯定的な反応を示す。
自分の自主性を大事にしながらも、ほかの人の自主性も同じように尊重するのが社会です。保護者にできることはまず、子どもが自分の自主性を尊重されていると実感できるよう、安心できる環境を整えることでしょう。
また、子どもは身近な人間を見て社会性を学びます。時には夫婦のいざこざもその教材になるかもしれません。夫婦で意見が対立しても、仲直りする過程まで見ることで、普段は仲が良い人間関係にも時には葛藤があること、その葛藤は話し合いで解決できることが自然と腑に落ちることでしょう。
子どもの欲求を抑えつけると社会性が育たない?
社会性を育むと聞くと「バスでは大きな声を出さない」「売り物をぺたぺた触らない」など、人の迷惑にならない行動ができるようにしつけるイメージを持つかもしれません。
ここでむずかしいのは、幼い子どもの欲求を抑え込み続けると、かえってその後爆発してしまう可能性があることです。
先にも述べたように、自分や他人を大切に思えることが社会性の涵養につながります。小学校くらいの年齢になって、急に幼児のような行動を取らないためにも、欲求そのものは否定せず、子どもが納得するように話すよう心がけましょう。
体験談
2児を育てる保護者・神奈川県在住
1児を育てる保護者・東京都在住
3歳になる息子は、よく「ママ見て!」を連呼。あと5分で家を出ないと間に合わない時なんかは、「今それはいいからとりあえず着替えよう!」と急かしてしまいますが、時間がある時にはなるべく「ママ見て!」に答えています。
社会性は安心感から生まれる
おでかけや日々の何気ないやりとりから、子どもは社会性を学んでいきます。
子どもの社会性は、子どものしたいことを我慢させることではなく、むしろ子どもが自分の欲求を受け止めてもらえる安心感から育まれるものです。
大人は日夜時間に追われて忙しいので、子どもの声を受け止め続けるのは大変なこと。大人自身も我慢をしないよう心がけながら、子どもの話を聞く時間を取る工夫ができるといいですね。
監修
Profile
矢藤 優子
立命館大学総合心理学部・教授/立命館大学大学院人間科学研究科・研究科長。2001年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。2007年立命館大学文学部准教授、2016年より現職。専門は乳幼児心理学・比較発達心理学。2022年よりRARA(立命館先進研究アカデミー)アソシエイトフェロー就任。
5歳の長女と3歳の長男は、いつもささいなことで喧嘩になってしまいます。大きな声で泣き叫んだりすると近所迷惑なので、つい「やめなさい!」とこちらも大きな声で喧嘩を止めようとしてしまいます。
2人で折り合いをつける方法を学んでほしいと思う一方、今この瞬間近隣の方に迷惑をかけてしまう申し訳なさもあり、そのバランスにいつも悩みます。