教育熱心はどこまで?
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不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親がどうあるべきか、各専門家に取材しました。
2023.06.27
予測不能な時代を生き抜くためには、これまでの常識とは異なる「〇〇力」が重要になってくるだろう。そんな「〇〇力」を子どもが身につけるためには、親はなにをしてあげられるだろうか。今回は全四回にわたり「コミュニケーション力」について脳科学者の西剛志先生に解説いただく。第一回の本記事では、コミュニケーションの前提である脳の認知バイアスについて教えてもらった。
コミュニケーション力は「コミュ力」とも言われ、友だちが多いクラスの人気者や話が上手な人を「コミュ力が高い」などと言うことが多い。物静かで主張が苦手だったり、ひとりで遊ぶことが好きな子どもの親は、「コミュ力が低くて大丈夫なのか」と心配になることもあるでしょう。
今回は、コミュニケーション力をテーマに、脳科学者の西剛志先生にインタビューしました。
ーー今日は「コミュニケーション力」をテーマにお話をお伺いしたいと思います。
西先生:よろしくお願いします。私は長年コミュニケーション力について研究していますが、ビジネスやスポーツなどで成功している人はそのほとんどが高いコミュニケーション力を持っています。
では、コミュニケーション力とはどんな力なのかを説明するためにいくつか問題を出すので、読者の皆さんも考えてみてください。
西先生:同じものを見ても人によって見え方が違うということが、このような問題でわかります。次に、この絵を見てください。
西先生:これは、人間は右視野よりも左視野を重視しがちな認知傾向があるためで、特に右利きの人はその傾向が強く表れるとされています。つまり、Bの絵が笑っているように見える人が多いのは、人間の約9割は右利きだからだと考えられます。
ーー反転しただけで同じ絵なのに全く印象が違って見えますね!
西先生:そうなんです。ではもうひとつ見てみましょう。
ーー私も「Aの花がグループ1、Bの花はグループ2」だと思いました。グループ1は丸くて柔らかい印象で、グループ2はトゲトゲしていて固い印象に感じたので。
西先生:東洋人タイプはなんとなく全体の雰囲気を見てグループ分けをしがち。一方で、西洋人タイプは、「花の茎の部分が全く同じ形をしている」という明確なルールをもとに判断をしています。
つまり東洋人は全体を見る傾向が強く、西洋人は部分を見る傾向が強いことがわかります。
ーーなるほど! 男女間でもこのような違いはありますか?
西先生:男女間の認知バイアス(脳の偏ったクセ)は全然違います。たとえばこんな問題があります。
西先生:ひとつのことに集中して取り組みたい男性と、ふたつのことを同時に行うのが得意な女性。このことが脳にバイアスを与えています。
ーーよくわかります。夫を見ていると「ついでに」なにかをするのが苦手だなと思います。
西先生:そうですよね。ひとつのことに集中しすぎて周りが見えていないこともあるので、女性から見たら気が利かないと思うこともあるでしょうけど、男性も悪気があってそうしているわけではないのです。同時にふたつのことをするのが苦手な脳の性質もあることを知っていただきたいです。
ーー悪気はなかったのですね。それにしても、いろいろな認知バイアスがありますね。
西先生:はい。今お話したのは、肌の色や右利き左利きなどの身体的特徴、国民性、男女間での認知バイアスですが、他にも育った土地の気候や、きょうだいの中で生まれた順番など、さまざまなことが脳に大きな影響を与えています。
見えているものや感じていることが人によってこんなにも違うということを、まずは認識していただきたいと思います。それが、コミュニケーション力の話につながります。
今日紹介した問題の他にも『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)という本でも、人によって見えている世界が違う事例を多数紹介しているので、興味があれば読んでみてください。
ーーありがとうございます! 全四回にわたりコミュニケーション力を紐解く本企画。第二回では、「友だちが多い人が本当にコミュニケーション力が高い人なのか」という疑問について教えていただき、そもそもコミュニケーション力とはどのような力なのかを解説してもらいます。
▽▽▽第二回の記事はこちらから(全四回)▽▽▽
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