視覚・聴覚・体感覚。優先タイプがわかると子育てがラクになる【第3回】
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脳科学者(工学博士)/分子生物学者/ T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。
脳科学者(工学博士)/分子生物学者/ T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。
脳科学者(工学博士)、分子生物学者 T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻卒。 博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。 テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され、「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計31万部を突破。
予測不能な時代を生き抜くために必要になるであろう「〇〇力」。今回は「コミュニケーション力」を全四回にわたり脳科学者の西剛志先生と紐解いていく。第二回では、コミュニケーション力とは相手を理解する力だと教えてもらいました。第三回の本記事では「脳タイプ」がテーマ。五感のどこを優先するのかを知ることで、相手を理解しやすいようです。
視覚・聴覚・体感覚。なにを優先して生きているのか?
ーー第一回では、世界にはさまざまな認知バイアス(脳の偏ったクセ)が溢れていると聞きました。そのひとつとして、人には視覚や聴覚など、優先する感覚があると聞いたことがあります。
西先生:脳タイプですね。視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプの3つに分けることができます。
・視覚タイプ・・・視覚を優先するタイプ
・聴覚タイプ・・・聴覚を優先するタイプ
・体感覚タイプ・・・触覚・味覚・嗅覚などを含めた体の感覚を優先するタイプ
このチェックテストで大体の傾向がわかります。
ーー先ほどやってみましたが、自分のタイプがわかると納得感がありますね。でも、このテストは子どもには少し難しいですよね?
西先生:はい、子どもには難しいです。子どもの脳タイプを知るには、下記のテストが一番わかりやすいかなと思います。私も息子が4歳のときに試してみて、予想通りの結果が出ました。
西先生:子どもの頃は基本的にみんな聴覚が敏感なので、視覚タイプと体感覚タイプのどちらが強いかをこのテストで見極められます。
ーーAは全体に物が散らかっている。Bは全体的には片付いているけれど、テーブルの上からは臭ってきそうな印象ですね。
西先生:家族間でも脳タイプは違うので、部屋が汚いとイライラしている人もいれば、その部屋のどこが汚いのかわからないと思っている人もいるかもしれません。
あと、子どもの脳タイプを判別するには、話すスピードにも注目してみましょう。もちろん100%ではありませんが、話すのが速い子は視覚タイプである傾向があります。話す内容が映像として見えているために、どんどん早口で話すんですね。
西先生:逆に体感覚タイプの子は、今感じていることをかみしめながら話したいため、ゆっくりになりがちです。聴覚タイプはその中間です。
また、視覚タイプの子はすごくキラキラしたものや派手なものが好きです。色に感心がなく地味な服やアイテムを選びがちであれば、体感覚タイプの可能性があります。絵を描くときにもカラフルな絵を描く子と単色で描く子など個性が出るので、脳タイプが見えてくるでしょう。
ーー脳タイプが大体これだなとわかったら、それをどのように活かしたらよいのでしょうか?
西先生:そうですね、たとえばどこかに行く用事があって、準備をしてほしいとき。視覚タイプの子は描いて見せるのが早いです。スケジュールを絵で描いてみるとか、簡単でもいいので地図に描いて、「何時にここに行って、何時にここ行く」などと伝えるとすぐに動いてくれる傾向があります。
西先生:体感覚タイプの子は、とにかく体験させるしかないんですよね。だから、それができないときは、ジェスチャーで体を使って説明することは有効です。たとえば、「ここに行ったら楽しい!美味しい!」などと全身を使って演技をするんです。
そうすることで、ここに行くと楽しくて美味しいものがあるんだと理解します。言葉で言うだけではなかなか伝わらないんですよ。親は役者になるのが一番早いです。
聴覚タイプの子は、音楽をかけると異常にノリノリで準備をしてくれたりします(笑)。出かける前には必ずこの音楽をかけると行きたくなるとか、パターンを決めると日々スムーズに行動できるかもしれません。
認知バイアスがないのは赤ちゃんだけ 成長するための認知バイアスとは
ーー多様な価値観をもつ現代では昔の子どもに比べて認知バイアスがかかっていないのかなと思ったのですが、どうでしょう?
西先生:認知バイアスというものは環境によって影響を受けるものなので、昔は「男はこう」「女はこう」という男女の認知バイアスだったり、差別や偏見につながる認知バイアスが多々あったと思います。一方で今の多様な世界では、「いろいろな人がいていい」という認知バイアスがあるということです。
ーーなるほど。常になにかしらの認知バイアスがかかっている、ということですね。
西先生:認知バイアスが全くないのは、生まれたての赤ちゃんか悟りの境地の人くらいです(笑)。人間は、家族や先生、友だちなど周囲の人の言動やニュースなどから、日々たくさんの影響を受けています。だから認知バイアスをなくすことは不可能で、良い認知バイアスを持つようにすることが大切です。
親が「人の能力は生まれつき決まっている」という認知バイアスを持っている場合、その子どもの能力は伸びなくなるという研究があります。逆に、親が「人の能力は生まれつきではなく、頭を使えば使うほど伸びる」という認知バイアスを持っている子どもは、実際に能力が伸びる。
認知バイアスから逃れることは難しいけど、自分の力を奪う認知バイアスと、力を与える認知バイアスがあるのなら、後者をたくさん持ちたいですよね。まずは、親がそれを持つことで、能力は無限に伸びるという認知バイアスを子どもにも与えていけたらいいなと思います。
ーー「あなたは伸びる」と直接言わなくても、親がそれを信じていれば子どもに自然と伝わるということでしょうか?
西先生:その通りで、これはピグマリオン効果といいます。たとえばサッカーの監督が「この選手はダメだ」と思っていたら、口に出さなくても選手には伝わりますよね。目線ひとつとっても、自分はあまり見られていないと気づいたり。そうすると、その選手が伸びることはなかなか難しい。
家族間でも、きょうだいが多い場合などは完全に平等にするのは難しいかもしれないけど、ひとりひとりみんな大事だということを伝えていけたらいいんじゃないかなと思います。
ーー態度に気をつけることだけじゃなくて、本当に子どもに可能性があることを信じてあげないとだめなんですよね。
西先生:そうです。あとは、小さな成功体験をたくさん積んで脳に学習させてあげること。やることなすこと全部失敗だらけだったら自信をなくして、それが自分の性格だと思いこんでしまうかもしれません。
でも、自信のない赤ちゃんって見たことありますか?ハイハイがうまくできなくて「わたしはダメだ」と落ち込んでいる赤ちゃんはいないですよね(笑)。それが本来の私たちの姿で、いかに伸ばしていくかが大人の役割。子どもは自然と育っていきますが、いかにそれを補助してあげるかが大事。
ーーさまざまなことを体験して自信をつけることが大事だと思いますが、やりきれない部分はどのように補えばいいのでしょうか?
西先生:映画や小説で疑似体験することもとてもよいですよ。やはり社会に出てうまくやっていくには、困難を乗り越える力が必要。どんなに優秀でも心が折れやすい人は、社会的にはうまくいかないですよね。困難を乗り越える力のある人にインタビューすると、伝記を読んでいることが多いんです。
西先生:私も世界の偉人が大好きで、小さい頃からよく読んでいましたが、歴史的な偉人は大体小さい頃から苦労ばかりしてるんですよ。伝記を読むことで、そのような困難をどのようにして乗り越えるのかを学び、そして困難を乗り越えた先には必ずいいことがあることがイメージできるようになります。
見たことも読んだこともないものはイメージをすることができないので、いろいろなものを見たり読んだりすることはとても大事ですよ。
ーーまさに体験によって自分に力を与える認知バイアスを獲得していくということですね。ありがとうございました。最終回となる第四回では、子どものコミュニケーション力を育てていく方法や、コミュニケーションに自信がない人におすすめのテクニックを教えてもらいます。
▽▽▽第四回の記事はこちらから(全四回)▽▽▽
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