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共存社会の実現に向けたインクルーシブ教育とは?子どもたちが受ける良い影響について
これまで十分な社会参加が難しかった障がいのある方などが、積極的に参加・貢献できる共存社会を実現させることは、日本が抱える重要な目標です。この実現を目指し、障がいの有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」が推進されています。インクルーシブ教育とはどのような教育なのでしょうか。子どもたちが受ける良い影響と併せて解説します。
インクルーシブ教育とは
インクルーシブ(inclusive)とは、「包摂的な」という意味を持つ言葉。「インクルーシブ教育」は、誰も排除せずにすべてを包み込む教育のことを指します。国籍・人種・宗教・経済状況・性別・障がいの有無などに左右されず、すべての子どもたちが地域の学校に通うことを目指した考えだと言えるでしょう。
文部科学省では、障がいのある子どもが能力や可能性を最大限に伸ばして自立し、社会活動することや、地域社会の中で積極的に活動し豊かに生きるといったことを実現するためにインクルーシブル教育システムの構築を推進しています。
就学先に関することも、その取り組みのひとつ。従来、就学基準に該当する障がいのある子どもは、原則として特別支援学校へ就学していました。しかし「障がいのある子どもとない子どもを分けて教育することをやめるように」と国連から勧告を受けたことなどもあり、2024年時点ではそれを改めようとしています。
今後は、さまざまな違いを持つ子どもたちが同じ学校に通うことが当たり前になるのかもしれません。
インクルーシブ教育によって子どもが受ける良い影響とは?
まだあまり一般的ではない「インクルーシブ教育」について、子どもたちにどのような影響があるのか気になるパパ・ママもいるでしょう。
さまざまなバックグラウンドを持つ子とともに学ぶことに不安を覚えるかもしれませんが、インクルーシブ教育で良い影響を受けることもあるのだそう。詳しく見ていきましょう。
子どもが安心しやすい
アメリカで行われた大規模調査において、インクルーシブル教育を行うことで平均成績が上がったというデータがあります。その背景には「誰も教室から排除されない」という安心感が芽生え、勉強に集中しやすいということがあるのかもしれません。
さまざまなタイプの児童・生徒が身近にいることで「自分もここにいてよいのだ」と思えるのではないでしょうか。
必要な場面で人に頼りやすくなる
2019年に行われた小学校高学年から高校3年生を対象とした東大の社会科学研究所とベネッセの共同調査によると、友だちと勉強を教え合う、考えても分からないことを親や先生に聞くという生徒・児童の割合はあまり高くないという結果が出ています。分からないことがあったとき、周囲の人を頼ることが苦手な子どもが多いことが伺えるのではないでしょうか。
一方、インクルーシブ教育が行われている空間では、子ども同士で教え合う姿が見られるそう。人それぞれに得意・苦手があることを体感的に理解しやすいため、安心して自分の弱さを見せやすくなるのかもしれません。
子ども同士での学びを得やすい
インクルーシブ教育の現場において、友だち同士で学びを得やすいのは、学習面だけではないようです。
子ども同士で教え合っていると、ときには意見の食い違いでケンカになるなど、トラブルが起こることもあるでしょう。大人の視点では「できれば避けたい」と思うかもしれませんが、トラブルがなぜ起こったのか、どうやって解決するかを考えることも、子どもにとっては重要な学びではないでしょうか。
子ども同士で教えあったり考えたりすることが、心の成長につながるのかもしれません。
多様な社会に出るための準備になりやすい
学生時代を終えて1歩社会に出れば、さまざまな人がいます。自分とまったく異なる環境で育った人や、180度違う考えを持つ人とも関わっていくことがほとんどでしょう。
インクルーシブ教育を通して多様な個性を持った仲間と過ごした経験は、後々の人生で大いに役立つかもしれません。
多くの学びを得やすいインクルーシブ教育
学校は、教科の勉強だけでなく、人との関わり方など社会性を身につけるための場所でもあります。インクルーシブ教育は「世の中にはさまざまな人がいる」ということを理解しやすい教育かもしれません。
困っている人に対して自然に手を差し伸べたり、自分が困ったときには誰かに助けを求めたりと、多様な社会で生きる力が育つのではないでしょうか。