教育系YouTubeクリエイター 葉一さんに聞く幼児期に築きたい学びの土台

教育系YouTubeクリエイター 葉一さんに聞く幼児期に築きたい学びの土台

2023.06.15

チャンネル登録者数190万人を超える人気教育系YouTubeクリエイターの葉一さん。子どもたちに勉強を教えるプロである葉一さんは、ご自身の子どもにはどのように教えるのか。幼児期に「学ぶ」ことをどう教えると、その後の学習に意欲的に取り組めるのか。幼児期に築いておきたい学びの土台についてお話を聞いた。

葉一さん9222

2012年からYouTubeを活用し、小学生~高校生までを対象に分かりやすい授業動画を投稿し続け、いまやチャンネル登録者数190万人超えの葉一さん。手書きのホワイトボード1枚の授業構成や、塾講師時代に考案した男女ともに読みやすい独自のフォントなどのこだわりを持ち、次世代の教育者として支持されています。

そんな葉一さんは私生活では小学校4年生と1年生のお子さんのパパ。子どもたちに対して「学ぶこと」をどのように教えているのか、学習の基礎はどうやって作っていくのかを教えてもらいました。

葉一流 親が勉強を教える時の鉄則 3箇条

――葉一さんは教育系YouTubeクリエイターとして活動する一方で2児のパパですよね。親が子どもに勉強を教えるときのコツを知りたいです。勉強の教え方って誰からも習ったことがないし、親子だからこそ険悪な雰囲気になってしまったりしますよね。


葉一さん:

はい。教えることをずっと仕事にしてきた私でも、我が子に教えるときは思うようにはいかず反省することが多いです。ですが、だからこそ見つけることができた私なりの3つの鉄則があるので紹介させてもらいますね。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/flyparade)

まず一つ目が、禁止ワードを言わないようにすること。特に「なんでこんなこともわからないの」という言葉は子どもたちを傷つけますし、モチベーションを大きく下げることになります。

ただ、他人のお子さんには言わない棘のある言葉が我が子に対してだと口から出そうになることはありますよね。そんなときには、「この子にとって本当に必要な言葉なのか」と考える間を置きましょう。それだけでも多少抑止力が働きます。でもやっぱり100%はできなくて、つい言ってしまうこともありますが……。


――外から見たら完璧なパパみたいなイメージでしたが、葉一さんでもそういう言葉を言ってしまったり落ち込んだりするんですね。少し安心しました。


葉一さん:

まったく完璧なパパじゃないですよ。そして、二つ目に過去の自分と比較しないこと。得意なことや苦手なことは親子でも違って当然なので、過去の自分ができたからといって子どももできると思い込むことはやめましょう。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/Yagi-Studio)

三つ目に、説明するときに喋りすぎないこと。大人は知っていることをいろいろと伝えようとしてついたくさん喋っちゃうんです。分かりやすいと思って例題をいっぱい出したり。でも話が長くなればなるほど聞いている子どもは飽きてしまいます。

もし、シンプルな説明で伝わらなかったら「ママの説明が下手でごめんね。いっしょに考えてみようか」でいいと思うんです。まずは極力シンプルに伝えてみることを意識してみるといいですよ。

親御さん自身が分からないふりをして、生徒役になってあげるのもおすすめです。ママやパパが「せんせーい、これ分からないです。どういうことですかー?」などとわざとふてくされて言ってみたりすると、「それはね……」と急に先生モードになって教えようとしてきたりします。


――たしかに子どもって大人になにか教えるのが好きですよね! 説明させることで理解が定着する効果もありそうですね。

こちらの記事も読まれています

幼児期に身につけたい「選ぶ力」と「学ぶ楽しさ」

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/Mananya Kaewthawee)

――親としては、勉強は楽しくやる気をもってやってほしいと思います。小学校にあがり本格的に勉強が始まる前に、どんな力を身につけておくとよいでしょうか?


葉一さん:

未就学児のうちに「新しいことを知るのは楽しいこと」だと感じることが、小学校にあがった後のやる気にもつながります。我が家では、保育園児の頃からお風呂で数字クイズをやっていました。座学はほとんどせずにお風呂での数字クイズだけで、長男は小学校に上がる前にはある程度のかけ算まで習得していました。

先取り学習が大切という意味ではなく、「新しいことができるようになったらママやパパに褒められるし、自分もうれしい気持ちになる」という構造を作ることが大切なんです。

しかも算数を覚えていくうちに、普段の生活の中で役に立つ場面が出てきます。たとえば長男が「3×2」を覚えたあとにテレビゲームをしていたら「3個セットのアイテムが2個あったら全部で6個だけど、それって3×2=6ということだ!」と気づいたのです。もちろん子どもがそこに気づくように大人がさりげなくサポートをしてあげることは必要ですが、こういった学びと自分の生活がリンクする体験は子どもにとって大きな価値があると思っています。

iStosk
※写真はイメージ(iStock.com/kiattisakch)

――新しいことを覚えることは自分にとっていいことだと経験していくんですね!


葉一さん:

そうです。生活の中で知的好奇心を養うということです。小学校に上がる前は、知的好奇心さえ育ってたらそれで十分だと思います。小学校の最初なんて知らないことだらけじゃないですか。それを知れたら楽しいことがある、だから頑張ろうかな、と思わせられたらOKです。

葉一さん9260

――他に未就学児のうちに身につけておきたい力はありますか?


葉一さん:

未就学児だけではありませんが、「選ぶ力」を鍛えることがとても大切だと思っています。ITがこれだけ発達していて情報が多くて、子どもたちの中でも常に選択肢が溢れているような時代です。

勉強ひとつとっても、いろいろな人がいろいろな話をしていて、どれが正しいのか見極めるのが困難です。でも、生きていくうえでは自分で選んでいかないといけません。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/rudi_suardi)

だから些細なことでも自分で選ばせるようにしています。たとえばプリント学習をやるにしても、どの科目をやるのかを選ばせるのもひとつです。「今日は算数やりなさい」などと親が決めるのではなく、そういう細かいところから「選ぶ」練習をして、子どもが選んだものは尊重するようにしています。


――これからの人生でたくさんの選択をしていく必要があるから、その練習を小さいことから始めていくんですね。先ほどお風呂での数字クイズの話がありましたが、他に葉一家での独自の取り組みやルールなどはありますか?


葉一さん:

私も子どもたちもゲームが好きなので、ゲーム時間のルールとしてチケット制を導入しています。ひとり30分は毎日やってもいい権利があるのですが、30分って意外とすぐに終わってしまうんですよね。そこで、たとえばプリントを2枚やったら10分追加できるチケットが貰える。

ここで大事なのは、チケットは子どもたちが頑張った対価なので、子どもがどのように使おうが親は文句を言ってはいけないこと。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/kokouu)

――ついつい小言を言ってしまいそうになることもありそうですが、そこは我慢ですね。


葉一さん:

そうですね。子どもたちが好きに時間を使うためのルールですから。

自制心の育成は必要なことです。それをどこで育てるかといったら、好きなことで育てていくのがいいと思うんです。好きなことだから制限されたら困るのではなくて、好きだからこそ成長の機会として使っていけたらいいのではないでしょうか。

モチベーション維持には「褒める」を徹底!

葉一さん9237

――ありがとうございます。子どものやる気を維持するには褒めることが大事だと思いますが、葉一さんはどんなときにお子さんを褒めますか?


葉一さん:

褒めのハードルは親が思っているよりも低く設定して、そんな小さいことで褒めるの? というくらいのことでも褒めるようにしています。長男・次男がそれぞれどんな言葉で褒められたら喜ぶのかも気をつけています。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/Erdark)

あと、褒めるときに意識していることは、点で褒めないで線で褒めること。「テストでいい点数取れてすごい!」と言うだけではなくて「この前できなかったところがテストでできてるじゃん!すごいな!!!」と褒めるようにしています。

過去の事例と今回のできごとを結びつけて褒めるということ。こうやって褒めることによって、「パパ・ママは前のことも覚えていてくれている」という安心感にもつながります。これは学校の先生や塾講師でも使えますが、やはり親の言葉ほどパワーのあるものはありません。

このときに気をつけたいのはマイナスのことではなく、プラスの内容で線にすること。


――そうは言っても、年齢が上がると他人と比べられることが増えて、評価や点数が気になってきます。どのように向き合えばよいでしょうか?


葉一さん:

評価や点数は分かりやすいしインパクトがあるから気になってしまうけれど、別に点数が悪くてもよくないですか? テストの点数が中学受験に関わるケースもあるのかもしれないけど、そうでなければそんなに気にすることでもないと思います。

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/Milatas)

テストは子どもを叱るためのツールでは決してなくて、今できること・できないことを知る貴重なツールです。もし小学生低学年のテストで60点だったとしたら親として心配になる気持ちはわかります。けれど、その取れた60点の中には以前できなかったけど、本番で正解していることがあるかもしれないということは忘れてはいけないと思うのです。本当に子どもの成長は0なのかどうか、そういう視点を持った方がいいと思います。

60点だって半分以上は正解なんだから、褒めるところは絶対にありますよね。私は、子育てをするうえで、褒めが9割、叱りが1割がベストだと思っています。褒める比率を上げないと、叱られ慣れしちゃって声が届かなくなる

iStock
※写真はイメージ(iStock.com/Love portrait and love the world)

親自身も子育ての成功体験が溢れている世の中で、子どもを育てると葛藤することがありますよね。必要以上に、厳しくなってしまうこともあると思います。

私も、周りのみんなは上手く子育てをやっているのに、自分だけがダメな子育てをしていると、思い悩んでいた時期がありました。でも、上手くやろうと思いすぎたりカッコつけたりするから苦しいんです。今はカッコ悪い父ちゃんのほうがラクでいいなと思っています。

子育ては今でもうまくいかないことの連続ですけどね。反省の毎日ですが、子どもと一緒にいられることの楽しさは忘れず過ごすようにしています。

【教育系YouTubeクリエイターの葉一さん】子どもがつまずいてしまったとき親は学びをどうサポートする?

【教育系YouTubeクリエイターの葉一さん】子どもがつまずいてしまったとき親は学びをどうサポートする?

2023.06.15

教育コラムカテゴリの記事

教育を親の自己満足にしてはいけない。教育虐待になりうるハイパーペアレンティングの恐ろしさとは

教育熱心はどこまで?

この連載を見る
不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親はどうあるべきかを専門家に聞いていきます。
【レポート】KIDSNAアンバサダー生誕2周年記念インスタライブ

2024年3月1日に開催したKIDSNA STYLEインスタライブ。お忙しい時間帯にもかかわらず、たくさんのアンバサダーのみなさまにご参加いただき、本当にありがとうございました!参加が難しかった方も多いと思うので、インスタライブの様子を簡単にご紹介いたします。