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【小児科医監修】なぜなぜ期はいつから?答え方のポイントや体験談
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医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
イヤイヤ期が終わった頃の子どもは少しずつ言葉のストックが増え、身近な大人にたくさんの質問をする「なぜなぜ期」に突入します。なぜなぜ期の子どもは、大人を質問攻めにしたり、答え方に迷う質問をしたりすることがあるかもしれません。なぜなぜ期の子どもへの質問の答え方や、避けたい接し方、保護者への体験談を紹介します。
「なぜなぜ期」とは
「なんで夜になるの?」
「どうして僕は兄妹がいないの?」
「なぜ保育園に行かなきゃいけないの?」
ある時期になると、湧いてきた「なぜ?」を次から次へと口にする子ども。これを「なぜなぜ期」といいます。なぜなぜ期とは、正式には「質問期」といい二つの段階に分けられます。
第一質問期
個人差はあるものの、1歳半~3歳頃に訪れるのが「第一質問期」。身近にあるものを指して「これは何?」「あれは何?」と質問し、確認することで名づけを行っていくため「なになに期」や「命名期」ともいいます。
この時期にたくさんの語彙をたくわえ、次のステップで質問の幅を広げます。
第二質問期
第一質問期の後、4~5歳くらいから始まるのが第二質問期です。第一質問期との違いは、意味や因果関係を知りたくて質問をしている点。「なぜ?」「どうして?」と物事の原因や理由、結果について質問するようになります。
これは成人の脳神経を100%とすると、3~4歳で80%、5~6歳で90%程度にまで発達することと関係するといわれています。
発達とともに理解力が増し、子どもは好奇心のままに身近な大人にたくさんの質問をぶつけます。なぜなぜ期の質問は、学ぶことの喜びを知ることにもつながるため、子どもの思考力を育む関わり方をすることが大切です。
子ども質問への答え方のポイント
子どもの思考力を育むといわれるなぜなぜ期の子どもには、どのような関わり方をするとよいのでしょうか。質問への答え方や対処法をご紹介します。
わかりやすい言葉で説明する
たとえば「どうして飛行機は空を飛べるの?」「月の形が毎日違うのはなんで?」といった素朴な疑問であっても、きちんと答えようとすると、子どもにとっては難解な言葉を使ってしまいます。
ですが、難しい言葉をなるべく避け、子どもが理解できるよう言葉を変えてできるだけわかりやすく説明することを意識しましょう。口頭の説明だけではわかりにくいようだったら、イラストを描いて説明すると理解しやすいかもしれません。
大事なポイントは説明する事柄に対して、大人が正しく理解していること。大人も知らないことに対して学び続ける姿勢を持つことが重要です。保護者がわからないことに向き合う姿勢も、子どもは無意識のうちに参考にしているかもしれませんね。
自分の説明だけでは不足していると感じたら、調べて情報を補ってあげましょう。
一緒に調べる
大人であっても全ての分野に詳しい人はなかなかいません。子どもの質問にすぐに答えられない場合は、「どうしてかな? 一緒に調べてみよう」と親子で疑問に向き合ってみましょう。
すぐに答えを知りたい時はインターネットが便利ですが、その他に書店や図書館で子どもの疑問に答えてくれる本や図鑑を探す方法もあります。
また、実際に体験できそうなことであれば、試してみると理解が深まるかもしれません。体を通した経験は、記憶の定着にもつながるでしょう。
また、親子で一緒に調べるという経験を通じて、子どもは「自分の質問に真剣に向き合ってくれている」と感じ、自己肯定感を育むこともできそうです。
子どもの疑問に寄り添う
答えられる質問にはその場ですぐに答えるのも一つの方法ですが、わからないことや知らないことに向き合った時に「なぜだろう?」と自分なりの仮説を立ててみることも大切です。
回答を急がずに、子どもの疑問に寄り添って「なんでだと思う?」と逆に質問をして子ども自身の考えを促してもよいでしょう。
子どもが自分で考えたことを話してくれたら、たとえ誤っていても否定せずに受け止め、意見を出したこと自体を認めましょう。その後に、正しい答えにたどり着くための道筋を教えることで、子どもは思考力を育んでいきます。
なぜなぜ期の子どもへの接し方で注意したいポイント
なぜなぜ期の子どもは、大人にとっては当たり前だからこそ答えに困る質問や、すぐに答えの出ない難しい質問をすることもあります。何度も同じ質問を繰り返したり、一つ答えると数珠繋ぎのように次々と質問が浮かんだりする子どももいるかもしれません。
なぜなぜ期の子どもに接する際の注意点を解説します。
適当にあしらう
答えるつもりもないのに「あとでね」と言ったり、「〇〇じゃない?」と、その場しのぎの返答をすることはよくありません。
なぜなぜ期の子どもの質問は、大人とのコミュニケーションの一つです。すぐに正しい答えを出せなかったとしても、子どもの質問に反応することが大切です。
忙しいタイミングで子どもに質問を投げかけられたら、一度手を置き、子どもの目を見て「今は手が離せなくて答えられないの」と正直に答えることがポイントです。後から時間が作れそうであれば「あとで一緒に調べようね」と言うと、子どもも安心しますよね。
拒否する
「なんで? なんで?」と立て続けに質問をされると、イライラすることもあるでしょう。そんな時でも、子どもの質問を無視したり、拒否したりすることは避けましょう。
子どもが公共の場でセンシティブな質問をすることもあるかもしれません。「そんなこと聞いちゃだめ!」と一蹴せずに、子どもの質問へのベストな答え方を探れるとよいですね。
からかう
「〇歳にもなってそんなこともわからないの?」「〇〇なわけないよ」と、子どもの質問をバカにしたり、からかったりすることはやめましょう。
大人には当然だと思うことでも、まだ数年しか生きていない子どもにとって世界は不思議なことだらけです。子どもは人とのコミュニケーションを通じて成長していく過程にあります。
子どものなぜなぜ期には、大人も真摯な対応を心がけましょう。
子どもの「なぜなぜ?」がしんどい、イライラしてしまう……
2歳頃に見られるイヤイヤ期がやっと落着いてきたと思ったのも束の間、続いておとずれるなぜなぜ期。
適当にあしらったり、拒否をしたりしてはいけない……子どもに真剣に向き合うからこそ、イライラしたり、しんどいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、子どもの成長はあっという間です。小学校にあがって自分で調べる術を身につけてからは、親に質問することがなくなったという子や、中学生になって思春期を迎えてからというもの、コミュニケーションをとる機会が減ったという子もいます。
振り返ってみれば、今はしんどいと思うなぜなぜ期も、かけがえのない時間となるかもしれません。いつかは終わってしまう、なぜなぜ期の子どもとのコミュニケーションを楽しめるといいですね。
なぜなぜ期がこない?
「なぜなぜ期は子どもの好奇心を育む時期」と聞くと、なぜなぜ期がこないことを不安に思う人もいるかもしれません。
なぜなぜ期はすべての子どもに訪れるわけではなく、なぜなぜ期を迎えないまま大きくなった子どももいます。また、訪れる時期が早い子もいれば、6歳頃に突然たくさんの質問をするようになった子どももいて、さまざまです。
あまり焦る必要はありませんが、なぜなぜ期がこない場合は、日常会話の中で「なんでだろうね?」と子どもが疑問を抱くように促してあげるとよいかもしれません。
子どものなぜなぜ期に関する体験談
子どもの「なぜなぜ期」に関する体験談を集めました。
なんでの連鎖は、2歳後半~3歳前半頃がいちばん強かったかもしれません。年齢が上がるにつれて答えるのが難しいような「なんで」が増えてきますよね。
小さいうちは、よくないとは思いつつけっこう適当にふわーっと答えることも多かったですが、5歳を過ぎた頃から「なんでママの言うことばっかり聞かなきゃだめなの」など、一度説明しても納得してもらえないような内容が増えてくるので大変ですね。
長男は3歳頃にきましたが、次男には「なぜなぜ期」がありませんでした。子どもに質問された時は、時間がない場合以外は「一緒にしらべよう!」と図鑑を読んだり、ネット検索で調べたりするようにしていました。
中学生になった今はそんなに話してくれないので、今思えば「なぜなぜ期」はぜいたくな時間でした。
うちの子は、なぜなぜ期はなかった気がします。「そういうものだ」と納得しているといいますか……。もしかしたら、子どもの質問の芽を摘むような接し方をしていたのかもしれません。
流れていたニュース映像を見て、3歳の息子に「なんで戦争するの?」と聞かれたことがあります。戦争のきっかけや背景を噛み砕いて伝えたつもりです。子どもの質問に端的に答えられるよう、親の方も常に情報をキャッチするアンテナを張っていなければと思います。
なぜなぜ期のコミュニケーションを楽しもう
なぜなぜ期は子どもの思考力が伸びる大切な時期です。しんどいと感じることがあるかもしれませんが、子どもに向き合った答え方をすることで、子どもは「自分の質問は価値のあるものなんだ」と感じ、学ぶことの楽しみを知っていきます。
もう少し成長すると、子どもは自ら「なぜ?」を調べたり、考えたりするようになるため、今よりも質問をする頻度が減っていくでしょう。
なぜなぜ期の今だからこそできる子どもとのやり取りを楽しめるとよいですね。
監修
Profile
保科しほ
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
すらすら話せるようになってきた3歳頃から5歳の今も、ずっとなぜなぜ期な気がします。
最近はタブレットのアプリを使うことが多いのですが、フリーズしたら「なんで動かないの?」や、操作がわからないと「このボタンはなに? なんでここに行けないの?」など細かく質問されることが多く、その都度ゆっくり説明しています。