子どもの「金融リテラシー」を育む8つのアプローチ。親子で学ぶお金教育

子どもの「金融リテラシー」を育む8つのアプローチ。親子で学ぶお金教育

2022.03.25

私たちにとって、お金と関わりを持たずに生活することは避けられません。生活スキルとして欠かせない「金融リテラシー」を子どもに身につけてもらうために、保護者はどのようなことができるでしょう。金融リテラシー・マップを使った子どもへの伝え方や、金融リテラシークイズ、保護者の体験談をご紹介します。

今、親子で考えたい「金融リテラシー」とは?

2022年4月から高校の家庭科が、「金融商品による資産形成」という視点を盛り込んだ内容になることから、今、改めて子どもへの金融教育に注目が集まっています。

では、家庭では「お金」について、子どもにどのようなことを伝えられるとよいのでしょう。

ものを買ったりサービスを受けたり、私たちは生きている限りさまざまな形でお金と関わる必要があります。「金融リテラシー」とは、生活をしていくうえで必要なお金に関する知識や判断力のこと。

子ども自身が「生きていくために必要不可欠な金融リテラシー」を身につけるために、保護者が知っておきたいことをまとめました。

※写真はイメージ(iStock.com/Feverpitched)
※写真はイメージ(iStock.com/Feverpitched)

【体験談】金融リテラシーはなぜ必要?

まずは、子どもへの金融リテラシー教育の必要性から見ていきましょう。子育て中の保護者を中心に、「金融教育が必要だと感じたこと」について聞きました。

 
 

娘が小学校6年生のときに、中学入学のお祝いに祖母が10万円を渡したところ、半分近く好きな芸能人のグッズに使ってしまったことがありました。

小学校の高学年になってからは、もらったお金を自分で管理させていたこともあり、金額が多くても「自分のもの」と思っていたようです。まさか親に言わずに「使ってしまう」とは夢にも思わず、本当に呆気に取られてしまいました。

 
 

息子が乳幼児の頃、コンビニに置いてあるプリペイドカード(※)を持ってきてしまったことがありました。無料でもらえるカードだと思ったようで、ある日、保育園のバッグの中を見たらたくさん入っていて焦りました。

いくらそのカードが販売前でお金としての価値はなくても、売り物であることに変わりはなく万引きです。その後は、お返しするためにコンビニを何軒も回りました。この経験で、見えないお金のあり方含めてお金教育の重要性を痛感しました。

※POSAカード:販売前はプラスチックカードだが、販売(レジを通した)時点で金券として利用できるカード

 
 

4歳の子どもは、おもちゃをねだることが多いのですが、お金を稼ぐことの大変さをよくわかっていないので、少しずつ教えていかないとなぁ……と思っています。

 
 

子どものことでは、まだそこまで大きな金額の失敗はないのですが、3年程前の元旦にめずらしく義実家へ帰省したところ、たくさんのお年玉をもらい気が大きくなったようで使いまくろうとしていました。

そのときは、失敗も含めお金を自由に使う体験も大切と思い、好きにさせてしまいましたが、スーパーのゲームセンターで散財したので、もう少し話してからでもよかったなと思いました。

子どもが大金を使ったときや、ものの価値やお金を稼ぐことについて理解していないのでは、と感じたときなどに金融リテラシーが必要だと感じた保護者が多いようです。

※写真はイメージ(iStock.com/Phynart Studio)
※写真はイメージ(iStock.com/Phynart Studio)

一方で、大人たちの金融リテラシーが十分かというと、もっと教えてほしかったという声や、よくわからないといった声もあり、大人たち自身も金融教育の重要性を感じた瞬間があるようです。

 
 

社会や政経の授業で大枠のしくみは学べても、税金がどのように生活にかかわるか、税務署や役所での具体的な申請の仕方、困ったときのライフラインとしてのしくみなどは教わった記憶がなく……。

国のしくみとしてお金を取られるならば、義務教育の段階で最低限、実務的に教えてほしいと思ったことがあります。

 
 

独身時代は正社員とフリーランスの時期があり、貯金も税金の支払いも、天引きでなければできないとつくづく痛感しました。

 
 

会社を退職したあと年収が下がったのに、税額は前年の収入で決まるので、よくわからないけれどすごく税金が引かれる……と思った記憶があります。

会社員の場合は給与から自動的に差し引かれるからあまり意識しませんでしたが、フリーランスになってからは自分で支払うため、そのあたりは意識が変わったように思います。

今回集まった回答から、子どもにお金に関する知識を身につけてほしいと感じながら、保護者自身も金融リテラシーの必要性を感じていることがうかがえました。

※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)
※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)

金融リテラシーが高い人の特徴

では、金融リテラシーはどのように身につければよいのでしょうか。まずは、金融リテラシーが高い人に共通する特徴を見てみましょう。

金融広報中央委員会が運営する「知るぽると」の調査によると、家計管理や生活設計についての授業などの「金融教育を行うべき」とした人は67.2%。

その中で実際にこうした「金融教育を受けたことがある」と認識している人の割合はわずか8.5%でした。

また、25問の正誤問題を出題したところ、金融教育を受けた人ほど金融リテラシーが高いという傾向が明らかに。

 
 

また、「金融教育を受けている」という点以外に、正誤問題の正答率が高い人の特徴を見てみると、


  • 金融や経済の情報を見る頻度が高い
  • 家計管理がしっかりしている
  • 金融商品購入時に、他の商品との比較などを行い、商品性を理解したうえで購入している
  • 損失回避傾向や横並び意識は低めである
  • 資金計画をたてている
  • 緊急時の資金的備えを持っている

等の共通点が見られます。

この結果、金融リテラシーの高い人は金融トラブルに遭いにくく、経済的ショックへの耐性が強い他、株式や不動産などのリスク性資産への投資額が多い状況がうかがえました。

反対に、金融リテラシーの低い人は、金融トラブルに巻き込まれやすかったり、急な出費への備えが少なかったりするということ。子どもがこのような状況にならないよう、学校での金融教育に加え、家庭でも金融リテラシーについて考える必要があるのかもしれません。

【クイズ】あなたの金融リテラシーは何点?

ここで、金融広報中央委員会の「金融リテラシー・クイズ」を参考に、現在の金融リテラシーはどれくらいか確認してみましょう。

 
 

1問20点として計算すると、何点でしたか?

全国平均は52.6 点。年代が上がるにつれ得点が上がり、いずれの年代も女性より男性の方が高得点という結果でした。

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海外と比べると日本の金融リテラシーは低い

海外との比較ではどうでしょうか。

金融教育が進んでいるイメージのあるアメリカでは、共通の正誤問題(※上記のクイズとは異なります)の正答率は、日本の47%対してアメリカは53%と日本を上回り、金融知識に自信がある人の割合は日本と大きく差がついています。

 
 

OECD諸外国と共通の正誤問題を比較すると、金融知識についての正答率は、いずれも日本を上回るという結果に。

 
 

今後、日本の子どもたちがグローバル社会で活躍するためにも、保護者は子どもにお金についてどのようなことを教えればよいのでしょう。

「金融リテラシー・マップ」とは

金融広報中央委員会(事務局:日本銀行情報サービス局内)に設置された金融経済教育推進会議が作成した「金融リテラシー・マップ」をご存知でしょうか。

このマップは、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を年齢層別に、体系的・具体的に示したもの。生活スキルとして金融リテラシーを身につけ、一人ひとりが自立的で安心して豊かな生活を送ることができるように作成されました。

 
 

マップを活用した子どもへの伝え方

子どもの金融リテラシーを高めるためにどのようなことを伝えればよいのか、マップに沿って確認しましょう。

金融リテラシー・マップは、小学生(低・中・高学年)、中学生、高校生、大学生、若年社会人、一般社会人、高齢者の年齢層別に分かれて作成されていますが、ここでは、社会の中で生きていく力の土台を形成する時期である、小学生の低学年を中心にみていきます。


家計管理

まず、子どもに始めに知ってほしいことは、ものには価値があること。ものを大切に使う習慣を身に付けたい時期です。

必要なもの(ニーズ)と欲しいもの(ウォンツ)を区別し、欲しいものをすべて手に入れることはできないことを教えましょう。

ものやサービスを購入するとき、お金を払う必要があることを理解させ、実際にものやサービスを購入するところを見せることで、お金の価値やお金を大切にする気持ちが育まれます。

5~6歳の子どもに「なぜお金が大切なのか」をちゃんと伝える方法

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生活設計

働くことを通してお金を得たり、将来を考えてお金を計画的に使うことの大切さを理解し、貯蓄する習慣を身につけましょう。

そのためには、家の手伝いをすることで役立つ喜びを知ることや、学校の係活動などを通じて自分の役割を考えること。お店の人の工夫や努力を知り、働く人々の素晴らしさを知ることが大切です。

おこづかいやお年玉を貯めたり、おこづかいの使い方を通して計画的に買い物をすることも生活設計の分野において求められるスキルです。

【調査】おこづかい・お年玉をあげる前に考えたい!子どもの「お金教育」

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金融取引の基本としての素養

子どもが金融トラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。

約束を守ることの大切さを伝え、お金のやりとりの基本としての基礎を築きましょう。


金融分野共通

金融リテラシー・マップの「金融・経済」では、ものとお金は交換されるといった金融の基本や、硬貨と紙幣の違いに気づくという内容が挙げられます。

ものを買うだけでなく、施設やサービスなどの利用には、お金が必要となる場合があることも忘れずに伝えましょう。

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保険

「保険」の分野では、大学生以上の大人に対して、「自分自身が備えるべきリスクの種類や内容を理解し、それに応じた対応(リスク削減、保険加入等)を行うこと」が求められますが、子どもの場合は、身の回りの危険に気づき、安全に生活することの大切さを理解し、行動することから始めましょう。


ローン・クレジット

子どもはローンを組んだり、クレジットカードの契約をすることはできません。しかし、無計画なカードローンやクレジットカードの利用を行わないことの重要性を伝えておきましょう。

計画的にお金を使うことの大切さを伝えるほか、子ども同士でお金の貸し借りはしないようにすることなどもポイントです。


資産形成

人によって投資リスクの許容度はさまざまですが、仮に高いリターンを得ようとする場合には、高いリスクを伴うことへの理解が必要です。

小学生の低学年や中学年では難しいかもしれませんが、高学年くらいからは、金利計算(単利)などを通じて、主な預金商品と利息の違いについて会話の中で触れられるとよいかもしれません。

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外部の知見の適切な活用

専門性、複雑性が高い金融情報、金融商品について判断を迫られたときに、自分で必要な情報を調べたり、相談しアドバイスを求められる適切で中立的な機関や専門家等を把握しておく必要があります。

子どもの頃から、困ったときにすぐに身近な人に相談する習慣が身についていると安心です。

出典:「金融リテラシー・マップ」/金融経済教育推進会議

【体験談】お金のことを子どもにどう伝えている?

保護者が実際に、子どもの金融リテラシーを高めるために家庭で行なっていることや、伝えていることを聞きました。

※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)
※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)
 
 

お金についてはなるべくオープンに話すようにしていて、自分たちの失敗についても話しています。

マンションのローンはいくらでどのように支払われているのか、借金の保証人になってはいけない、リボ払いはしてはいけない、ギャンブルがどういう仕組みで胴元がもうけるのかなどの話もしています。

数十万程度の失敗なら勉強になるかもしれませんが、取り返しのつかない失敗はしてほしくはないですね。

 
 

長男(子どもが一人のとき)は、お財布に300円を入れて自分で買い物をさせ、何が買えて何が買えないかという訓練のようなこともさせたのですが、二人目、三人目となるとだんだん手が回らなくなりました。

だから、金融教育が少しでも学校で実施されることは大変いいことだと思っています。

 
 

お金が増えていく仕組みや複利の力を知ってほしいと思い、おこづかいを定額制ではなく、利息をつけるようにしました。

あとは、日々の食事や、お風呂に使う水、車のガソリンなど身近なものにそれぞれお金がかかっていることや関わっている人がいることを伝えることで、金融リテラシーに限らず感謝の気持ちも持ってほしいと思っています。

 
 

まだ4歳で、お金のおもちゃで遊んだり、子どもがレジに買いたいものを持っていく程度しかお金に関わっていません。

金融リテラシーという言葉を初めて聞いたので、これから教えていきたいと思いました!

不確実性の高い世界において、この先どんなことが起こるかは誰にも想像できないでしょう。しかし、きちんと金融リテラシーが育まれていれば子どもを守ってくれるかもしれません。

2022.03.25

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