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今どき保育事情。口コミで話題の茶々保育園・理事迫田健太郎さんに伺う「オトナな子育て」とは
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KIDSNAの保育園レポート第1弾は、口コミで評判の茶々そしがやこうえん保育園。社会福祉法人あすみ福祉会 茶々保育園グループの理事長、迫田健太郎さんに"オトナな保育園"という園のコンセプトや保育理念についてうかがいました。そこには家で実践できる「オトナな子育て」のヒントがありました。
今どきの保育を、子育てのヒントに
KIDSNA編集部では、いろんな保育のあり方を知ることが日々の子育てに活かせるのではと考え、保育園の取材を始めました。「今どきの保育事情」を調べるために、今回は東京都世田谷区の「茶々そしがやこうえん保育園」を訪れました。
日本初。公園の中に佇む(たたずむ)保育園
まず、その外観に驚きました。心地よい風が吹く公園の中にぽつんと建っている白い建物。おしゃれなカフェのような外観です。
一歩園内に足を踏み入れるとギャラリーのような白い空間。その中で子どもたちがのびのびと遊び学ぶのが「茶々そしがやこうえん保育園」です。
"オトナな保育園"というコンセプトを掲げる茶々保育園グループ。それは、どのように保育の中で実践されているのでしょうか。
取材時はちょうどお昼寝が終わった時間。まだ気持ちよさそうに眠っている子、目をこすりながら起きてきてさっそく遊ぼうとする子。コンセプトは「オトナな保育園」ですが、園児はみんな自然体で、子どもらしくのびのびと過ごしている印象を受けました。
茶畑の中からスタート
昭和54年、茶々保育園は埼玉県入間市の茶畑の真ん中に設立されました。
「僕は二代目です。母が38年前に保育園を立ち上げました。そして15年ほど前に僕が母を手伝い始めました」と語るのは、理事長の迫田健太郎さん。
「日本の子育てに光を」
「最初、僕はこの業界では異色の存在。保育現場の人たちには宇宙人が来たと思われていたかもしれませんね(笑)
でもだからこそ、俯瞰した見方ができるとも思っていて、これは当初から今でも変わっていません。『茶々保育園ががんばって、日本の子育てに光をもっと当てたい』という思いが僕のライフテーマになっています。
子どもが社会の財産だということをちゃんと認識してもらえるような社会になったらいいですよね」(迫田さん)
「オトナな保育園」というコンセプト
子どもあつかいしない
このコンセプトが生まれた背景には「子どもを、必要以上に子どもあつかいしない」という思いがあるそうです。
「たとえば、子どもが自分でできることを必要以上に手伝うということはしません。また、子どもたちは先生のことを〇〇さんと名前で呼びます」
この根底には"お互いにひとりの人間として向き合い、尊重し合う"という考え方があるようです。
保育士も大事な存在
また、この園で働く保育士さんは、みんなそれぞれの名刺を持ってるそうです。
「保護者の方たちと保育士が名刺を交換することで、お互いにひとりの社会として接することができるという考えから2016年に導入しました。
うちを含めて保育園っていろいろな可能性がちりばめられていると思うんですよね。だから保育士の仕事って素晴らしいということを世の中に伝えていきたいです」
保育士さんとの関係性をとても大事にしている迫田さん。「オトナな保育園」はこの思いから始まるのかな、と感じました。
「オトナな子育て」
では、私たちが毎日の生活の中で「オトナな子育て」を実践することはできるのでしょうか。迫田さんにきいてみました。
しつけではなく、しぐさ
「できると思いますよ。たとえばうちの園では、しつけをすることよりも
暮らしのしぐさ
を大切にしています。たとえば折り紙を折るとき、まっすぐに折ったりきっちり折り目をつける気持ちよさから、私たちは"秩序感"を学んできたのではないでしょうか。
そういった暮らしや遊びの中にこそ、学びがあると思います。子どもを子ども扱いして練習させるんじゃなくて、それを自然に身につけさせる。
暮らしにつながっている遊びはたくさんあると思うんです」(迫田さん)
遊びと学びは別々じゃない
また、迫田さんは「遊ばせる」という言葉をなくしたい、といいます。どういうことなのでしょうか。
「子どもはきっと、遊ばされるなんて思ってないのではないでしょうか。子どもはいつでも主体的に遊ぶし、遊びの中からたくさんのことを学んでいます」
たしかに「遊び」と「学び(勉強すること)」をわけているのは、私たち大人だけなのかもしれません。子どもだけではなく、大人を必要以上に大人あつかいしない謙虚な考え方も「オトナな子育て」のヒントになるような気がします。
これからの子どもに必要な能力とは
最後に、迫田さんに「これからの時代、子どもに必要な能力や身につけるべきことはなんだと思いますか?」と質問してみました。
「やっぱり、コミュニケーションなんじゃないでしょうか」
という答えが帰ってきました。
「子どもも大人も尊重し合うという意味では、他人に対してはもちろんですけど。コミュニケーションって自分を振り返るためのものでもあると思うんです。
僕の場合は、園児はもちろんのこと、自分の娘との対話から自分のことを振り返ることもあります。そういうことを繰り返して親が親となっていくのは子どものおかげですよね。
だから子どもとは、一緒に学び、成長し合える仲間でありたいと考えています」。
取材を終えて
外観や内観からはすごく新しいことを取り入れている保育園というイメージですが、とてもていねいに人と人が向き合う場所になっているように感じました。それが茶々保育園グループの評判の良さにつながっているのではないのでしょうか。
また、迫田さんのお話をきいていると"オトナな保育園"というコンセプトの裏には、大人も謙虚に生きるという姿勢が貫かれているのかな、と思いました。
「大人/子ども」「遊び/学び」と単純に二分化するのではなく、大人も子育てをしながら学び続ける必要があるということに、改めて気づかされた取材でした。