妊活前に知りたい、妊婦が感染すると危険な感染症一覧と予防法

妊活前に知りたい、妊婦が感染すると危険な感染症一覧と予防法

妊娠中に母親が感染するとそこから起きる胎内感染。実は日常のなにげない行動から感染してしまう場合もあることをご存じでしたか?正しい知識を持ち、感染症の予防を心がけましょう。

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠を望む方、または妊娠中の方が気をつけたいことのひとつに感染症があげられます。
感染症は、微生物(ウイルス、細菌など)からおこりますが、妊娠中、もしくは妊娠前に母体が感染していた場合、母子感染してしまう可能性があります。

母子感染には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染があります。

妊婦健診の検査項目にもこれらの検査項目はありますが、すべての感染症の検査がおこなわれるわけではありません。

今回は、日常生活の中で感染リスクがあり、妊婦が感染すると危険な感染症について、とくに、どのような感染症があり、どのように感染し感染すると胎児にどのような影響があるのか、予防に有効なワクチンの有無について解説します。

先天性風疹症候群

風疹とは

風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる急性の発疹性感染症。春先から初夏にかけて流行するといわれています。

感染経路

飛沫感染で人から人へ伝播する風疹ウイルスは、風疹の免疫が十分にない人に対して、強い感染力があります。
妊娠20週頃までに妊婦が風疹ウイルスに感染すると、先天性風疹症候群(感音性難聴・心疾患・眼疾患など)の可能性があります。

妊娠中の影響

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iStock.com/Yue_

ワクチン

ワクチンがあるため、妊娠中でなければ接種可能です。

伝染性紅斑(りんご病)

伝染性紅斑とは

伝染性紅斑(Erythema infectiosum)はヒトパルボウイルスB19を病因する感染症で、両頬がりんごのように赤くなることからりんご病とも呼ばれます。とくに未就学児から9歳の児童を中心に疾患することの多い感染症のひとつ。

年始から7月上旬頃にかけて流行し、9月頃にはピークを終えます。0〜20日の潜伏期間の後、頬に蝶翼状といわれる紅い発疹が現れるのが大きな特徴。

手・足、胸・腹・背などにも網目状やレ−ス状などに発疹が出る場合もありますが、1週間程度で消えます。
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iStock.com/Tetiana Soares

感染経路

飛沫、接触感染。頬に発疹が出る7〜10日くらい前に、微熱やだるさなどが見られ、この時期にウイルスの排泄量がもっとも多くなります。

発疹が現れたときにはウイルス血症は終息し、ウイルス の排泄はほとんどなく、感染力もほぼ消失しています。

子どもから大人に感染することもあるため、注意が必要です。

妊娠中の影響

胎内感染すると、胎児の異常(胎児水腫)および流産の可能性があります。とくに、妊娠前半期の感染の方がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずると報告されていますが、妊娠後半期でも胎児感染は生ずるという報告もあるため、注意が必要です。

ワクチン

ワクチンはありません。

麻疹(はしか)

麻疹(はしか)とは

麻疹(はしか)の原因は麻疹ウイルスです。麻疹(はしか)の流行時期は春先から夏にかけてで、ウイルスの潜伏期間は10日ほどといわれています。

麻疹ウイルスの初期症状は、38度を超える高熱、咳、鼻水、目やになど風邪に似ています。

3日前後その状態が続いた後、一旦解熱しますが、その際に、コプリック斑と呼ばれる白い発疹が口内、頬の内側に現れ、再度高熱や咳がでます。

2日程度経過すると全身に赤い発疹が広がり、それから4日程度、発疹、高熱、咳がおさまらないのが麻疹(はしか)の症状です。
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iStock.com/FotoDuets

感染経路

麻疹ウイルスは人から人へと感染します。感染経路は飛沫、接触感染が代表的ですが、空気感染もします。

麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、マスクやうがい、手洗いを徹底していても感染を防ぐことは難しいといわれ、免疫や抗体を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するといわれています。

妊娠中の影響

胎内感染すると、母体には肺炎の重症化、胎児には流早産、胎児死亡・先天性麻疹があげられます。

ワクチン

ワクチンがあるため、妊娠中でなければ接種可能です。

ムンプス(おたふく風邪)

ムンプス(おたふく風邪)とは

おたふく風邪はムンプスウイルスにより起きる病気で、「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」ともよばれます。

乳児がかかることはまれで、主に3歳〜6歳の子どもが発症することが多く、一度かかると二度とかからないといわれています。

感染経路

おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスの潜伏期間は長く、12日〜25日ともいわれています。ムンプスウイルスは飛沫や接触により感染します。

感染してから発症まで期間があくため、いつどこで感染したか分かりにくく保育園や幼稚園などで集団感染してしまうこともあるようです。

妊娠中の影響

胎内感染すると、流産の可能性があげられます。

ワクチン

ワクチンがあるため、妊娠中でなければ接種可能です。

B型肝炎

B型肝炎とは

B型肝炎は、血液や体液を介し、B型肝炎ウイルスに感染して起こる肝臓の病気です。

感染経路

B型肝炎は輸血や注射器の使いまわし、性交渉など、感染者の血液や体液から感染します。

妊娠中の影響

胎内感染しても多くの場合は乳児への影響はありませんが、まれに乳児期に重い肝炎を起こすことも。

また、将来的な肝炎、肝硬変、肝がんの可能性もあげられます。
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iStock.com/Tero Vesalainen

ワクチン

ワクチンがあるため、妊娠中でなければ接種可能です。

HIV/AIDS

AIDS(後天性免疫不全症候群)とは

後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS, エイズ)は、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染によって感染し、重篤な全身性免疫不全で、日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こします。

感染経路

輸血や注射器の使いまわし、性交渉など、感染者の血液や体液から感染します。

唾液や涙等に含まれるウイルスは微量で、お風呂やタオルなどでは感染しないといわれています。

妊娠中の影響

胎内感染して進行するとエイズ(先天性免疫不全症候群)を発症します。

ワクチン

ワクチンはありません。

HTLV-1関連疾患

HTLV-1感染症とは

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)は、
  • 成人T細胞白血病
  • リンパ腫( Adult T-cell leukemia:ATL)
  • HTLV-1関連脊髄症( HTLV-1 associated myelopathy:HAM)
  • HTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis:HU)
などの疾患を引き起こします。

感染しても大部分は無症状です。
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iStock.com/bee32

妊娠中の影響

胎内感染しても多くの場合は乳児は無症状ですが、一部ATL(白血病の一種、中高年以降)やHAM(神経疾患)を起こすことも。

ワクチン

ワクチンはありません。

サイトメガロウイルス感染症

サイトメガロウイルスとは

サイトメガロウイルス(以下CMV)はヘルペスウイルスの一種で、通常、幼小児期に感染しても無症状ですが、生涯宿主に潜伏感染し、免疫抑制状態下で再活性化して熱や失明などを引き起こす可能性があります。

感染経路

感染すると何カ月にもわたり尿中や唾液中にサイトメガロウイルスを排出することがあります。

また、ウイルスは子宮頸管(子宮の下部)の粘液や精液、便、母乳にも排出されるため、性的接触などでも感染が起きます。

妊娠中の影響

妊婦が感染すると、妊娠中や出産時に感染する場合があり、てんかん、難聴、精神運動発達遅滞、流産、死産などの可能性があります。

ワクチン

ワクチンはありません。

水痘(水疱瘡)

水痘とは

水疱瘡ともよばれ、発熱と水ぶくれ、かゆみを伴う赤い発疹が全身にあらわれるウイルス性の病気です。1年を通してかかる可能性のある病気です。

また水疱瘡の発症患者の9割は9歳以下の子どもだといわれています。
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iStock.com/Tutye

感染経路

水疱瘡の原因となるのは、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスです。水痘帯状疱疹ウイルスは感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染、空気感染によって人から人へとうつります。

妊娠中の影響

母体は肺炎の重症化、また、胎児は先天性水痘症候群(眼球異常・四肢の形成不全・
精神発達遅滞など)、新生児水痘などの可能性があげられます。

ワクチン

ワクチンがあるため、妊娠中でなければ接種可能です。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症とは

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)という寄生虫の一種により起こされる感染症です。

トキソプラズマはほぼ全ての温血脊椎動物(哺乳類・鳥類)に感染し、一度感染すると終生免疫が継続します。

健康な成人が感染しても8割は無症状ですが、リンパ節の腫れ、発熱・筋肉痛が出る場合もあります。

感染経路

病原体を保有している肉を生や半生の状態で食べることで起きます。

病原体は70℃、15分以上の加熱処理によって死滅しするため、妊娠中の生ハム、レアステーキ、非加熱処理のパテなどは控えるようにしましょう。

また、トキソプラズマはネコの糞や土いじりから感染する場合もあります。猫を外飼いをしている場合や、第二子妊娠中に第一子と公園で砂遊びをするというシチュエーションなどには注意が必要です。
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iStock.com/Patrick Daxenbichler

妊娠中の影響

胎児に感染することで、精神遅滞、視力障害、脳性麻痺などの重篤な症状が起きる可能性や、場合によっては流産、死産の可能性もあります。

ワクチン

ワクチンはありません。

梅毒

梅毒とは

梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が原因の性感染症です。感染すると全身に様々な症状を引き起こし、初期では性器や肛門、口唇などに痛みやかゆみをともなわない硬いしこりができます。

梅毒の初期のしこりは治療をおこなわなくとも時間の経過とともに自然に消えてしまいますが、梅毒だった場合は血管の中に細菌が存在して進行し、心臓血管系、中枢神経系などが侵されます。

最終的には大動脈瘤形成、大動脈破裂、神経障害といった症状を引き起こし、死に至るため必ず治療が必要です。

感染経路

患者の粘膜や皮膚に直接接触することで感染するため、基本的には性交渉で感染します。

妊娠中の影響

胎児に感染すると、流産、早産、胎児死亡、胎児発育不全、先天梅毒などの可能性があります。

ワクチン

ワクチンはありません。

妊婦健診で検査可能な感染症は?

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iStock.com/Srisakorn
妊婦健診でおこなれるおもな感染症検査(抗体検査)は以下のとおりです。ただし、自治体や病院により、違いがあり、例えば東京都ではトキソプラズマが推奨されています。

・B型肝炎ウイルス
・C型肝炎ウイルス
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
・ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)
・風疹ウイルス
・梅毒
・B群溶血性レンサ球菌
・性器クラミジア

検査の目的は、赤ちゃんへの感染を防ぐことと、母体の自身の健康管理です。

もし、感染症が分かった場合、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療について医師の指導にしたがいましょう。

妊娠中は感染症のワクチン接種は不可能

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iStock.com/insta_photos
このように、妊娠中に注意が必要な感染症にはワクチンがないものも多く、あったとしてもほとんどのワクチンは妊娠中の接種ができません。

ただし、ワクチンがあるものに関しては、パートナーや同居の家族が接種することで妊婦への感染を防ぐことができます。

感染症を過度に恐れる必要はありませんが、妊娠中は手洗い、うがいなどを徹底するだけでなく、食事や土、猫の糞など思わぬ感染経路があることを理解しておくことで、感染リスクを下げることにつながります。

また、現在妊活中の方は自身とパートナーの予防接種の記録を母子手帳で確認し、未接種のものがあれば接種しておくと安心です。
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杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。

患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

田園調布オリーブレディースクリニック
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2021年05月31日

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