【産婦人科医監修】妊娠中疲れやすい期間はいつまで?原因と対処法

注意が必要な疲労感とは

【産婦人科医監修】妊娠中疲れやすい期間はいつまで?原因と対処法

妊娠中、疲れやすいと感じる妊婦さんは多いのではないでしょうか。妊娠初期から6カ月、7カ月頃、後期に渡り疲労感の種類が異なるかもしれません。妊娠するとなぜ疲れやすくなるのかを時期別にご紹介します。また、疲れを感じたときの対処法について産婦人科医監修の元、解説します。

妊娠中疲れやすいと感じる

さまざまな体の変化を迎える妊娠中は、母体に負担がかかり疲れやすいと感じることがあるでしょう。

「疲れ」は妊娠中の代表的な兆候の一つです。

時期別の疲れの特徴や疲れを感じたときの対処法について見ていきましょう。

妊娠中疲れやすいと感じるのはいつからいつまで?

妊娠時期によって疲れやすさの種類や質は異なります。


妊娠初期

妊娠初期はホルモンバランスの変化により、疲れやすさや眠気を感じることがあるでしょう。つわりの症状により、吐いたりして疲れやすくなることもあります。

人によっては気分の浮き沈みがあり、これにより疲れやすいと感じることもあるでしょう。


妊娠中期

妊婦さんのお腹
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妊娠中期である5カ月、6カ月、7カ月頃は安定期に入り、人によってはつわりなどが落ち着き体調が安定します。

一方でお腹は徐々に大きくなるので、疲れやすいと感じる妊婦さんもいます。妊娠初期のひどく疲れやすい時期は過ぎているものの、引き続き疲れやすさの他、倦怠感やだるさ、熱っぽさを感じる場合もあります。

個人差もありますが安定期であっても妊娠6カ月、7カ月頃に疲れやすいと感じることがあります。


妊娠後期

妊娠後期になると、お腹の赤ちゃんが大きく重たくなることで疲れやすくなります。

寝る体勢が整わなかったり、お腹で膀胱を圧迫され頻尿になり、夜中に起きてしまうことで疲れが取れず、翌日に疲れを持ち越してしまうこともあるでしょう。不安感によって眠れないこともあるかもしれません。

妊娠中疲れやすい原因

妊娠中に疲れやすい原因にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。


ホルモンバランスの変化

妊娠中、大量に分泌される妊娠ホルモンにはいくつか種類があります。その中の一種である「プロゲステロン」が妊娠中の疲れやすさの原因の一つです。

プロゲステロンは妊娠初期頃に分泌量が増え、子宮内膜の形成をサポートしたり、乳腺を発達させる働きをします。一方で、疲れやすいと感じさせる働きもあります。疲労感のほか、基礎体温上昇に伴うほてりや、消化不良、眠気もプロゲステロンに関係する兆候です。

ホルモンバランスの変化が原因で憂鬱に感じることもあるでしょう。


貧血

妊娠7カ月頃から9カ月頃(中期~後期)にかけて貧血が起こりやすくなります。妊娠中は鉄分の不足による「鉄欠乏性貧血」になることがほとんどです。

血液成分のヘモグロビンは酸素を体に行き渡らせる働きをしていて、ヘモグロビンには鉄分が必要です。妊娠中はお腹の赤ちゃんに栄養を送るため、母体の鉄分が不足しやすい状態になります。鉄分が不足するとヘモグロビンがうまく合成されず、血中の酸素濃度が薄まってしまいます。

これに加えて妊娠中は、お腹の赤ちゃんに血液を届けるため血液量が増えますが、血液中の赤血球が増える速さが追いつかず血液濃度が薄まり、酸素も不足しやすくなります。

その結果、体内への酸素供給量が減り、疲れやすいなどの症状が起こります。


お腹が大きくなる

妊娠8カ月~10カ月の後期は、お腹が大きくなってきたことにより疲れやすくなる傾向があります。

厚生労働省によると、妊娠中期~後期の体重増加ペースは1週間あたり「300g~500g」であることが望ましいとしています。

出典:妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に/厚生労働省

妊娠後期の目安の体重は、妊娠前の体重によって異なるため個人差がありますが、数キロ増えている体を支えるため疲れやすくなるのは当然といえそうです。

子宮が大きくなり肺を圧迫することで息切れしやすくなり、疲れを感じやすくなることもあります。十分な睡眠が取れず疲労感が残ることもあるでしょう。

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疲労感を感じたときの対処法

疲れを感じたときは、どのような対処法をするとよいのでしょうか。


休息をとる

妊娠中は疲れやすくなります。疲れを感じたら、無理をせずこまめに休息をとりましょう。

妊娠初期はつわりにより疲れを感じることもあるため、できるだけラクな体勢で休むとよいでしょう。仕事中であっても無理は禁物です。

お腹が重くて疲れる場合には長時間歩いたりせず、こまめに座るなど体を労わりましょう。


バランスのとれた食事

バランスの良い食事
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妊娠中は血液中の酸素が薄まり貧血になりやすいため、疲れやすくなることがあります。

肉や卵、魚などの動物性たんぱく質に含まれる鉄分は比較的吸収が良いとされています。しかし、鉄分摂取のために動物性たんぱく質ばかり食べると、体重増加の原因になります。

緑黄色野菜や大豆製品にも鉄分が含まれているため、バランスよく取り入れましょう。


十分な睡眠

妊娠中はホルモンバランスの変化により眠気を感じることがあります。妊娠中はカフェインを控えた方がよいため、カフェインの制限により眠いと感じることもあるでしょう。

また、寝るときの体勢が整わず夜中何度も起きてしまい、寝不足になる妊婦さんもいます。

睡眠不足は疲れやすさの原因となるため、できるだけ十分な睡眠をとるよう心がけましょう。

夜中に十分眠れない場合は、日中に昼寝を取り入れたり、休憩時間に仮眠をしたりと数回に分けて睡眠時間を確保するとよさそうです。


家事は適度に手を抜く

妊娠中は体の変化や疲れやすさから、いつも通りに家事ができないことをパートナーに理解してもらう必要があります。

家事は完璧にこなそうとせず適度に手を抜き、お腹の赤ちゃんを優先しましょう。空いた時間を休息や睡眠にあてて、心と体をリラックスさせることも大切です。

妊娠中に疲れを感じたときの通院のサイン

妊娠中はどの時期にも疲れやすいと感じる原因はありますが、だるさを強く感じたり、無気力状態が長期に及ぶ場合は、妊娠うつの可能性があります。

疲れやだるさが続くときには専門家に相談しましょう。

疲れやすい妊娠中は無理をせず、お腹の赤ちゃんを優先しよう

妊娠中は無理せず休息をとる
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妊娠中は疲れやすい時期です。

特に妊娠初期に分泌量が増えるホルモンには、疲労感を伴うものがあります。中期や後期も、お腹が大きくなるにつて疲れやすいと感じることはありますが、ホルモンバランスの変化による妊娠中の疲れやすさ は妊娠が進むにつれて次第に治まっていきます。 

妊娠中に疲れを感じるときは、こまめな休息やバランスのとれた食事を意識することで疲れが軽減することがあります。十分な睡眠をとって、無理をしないことが大切です。

お腹の赤ちゃんを優先して、妊娠中の疲れを乗り切りましょう。


監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。 患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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