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妊娠中の頭痛の原因はホルモンバランスの乱れから。服薬はどうするか
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田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠中は体にさまざまな変化が起こりますが、なかには頭痛に悩む方も。片頭痛などのよくある頭痛と、妊娠中に起こる頭痛はどのような違いがあるのでしょうか。今回は、妊娠中に起こる頭痛の原因や対処法、受診の目安について解説します。
妊娠中の頭痛は「よくある頭痛」と同じなのか
頭痛は、妊娠に関係なく起こる身近な症状です。頭痛には、「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2種類あり、こめかみ辺りがズキズキと痛み、脈打つような痛みが生じる頭痛を片頭痛、ストレスなどによって慢性的に起こる頭痛を緊張型頭痛といいます。
今回は、妊娠中に起こる頭痛の原因について解説します。
ホルモンバランスの変化が頭痛の原因に
妊娠中の頭痛は日常生活で見られるよくある頭痛とは少し違い、ホルモンが大きく影響しています。特に妊娠中に分泌量が大きく変化するのが、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)。
エストロゲンは、卵胞を成熟させる作用があり、栄養や水分を体に蓄えて妊娠に適した体を作ります。プロゲステロンは、受精卵が子宮内膜に着床しやすい状態に整える作用があり、妊娠を継続させる働きをします。
これらのホルモンは妊娠中に胎盤を通して分泌されますが、プロゲステロンは、特に妊娠初期に多く分泌されます。プロゲステロンは、妊娠中の排卵を抑制したり、体温を上昇させたりするだけでなく、気分の浮き沈みを激しくさせ、自律神経を乱すことも。これらの作用が原因となり、頭痛を引き起こす場合があります。
その他、妊娠中に起こりやすい頭痛の原因
ホルモンバランスの変化の他にも、妊娠すると、脂肪が増えて、それを燃焼させることで基礎体温が高くなります。新陳代謝が活発になると、汗の量が増えて水分不足になり、脱水症状になることも。
脱水症状とは、体のなかの水分が不足した状態。妊娠中、吐き気や嘔吐などのつわりの症状が重いと、水分や食事が上手く摂れずに脱水状態になり、頭痛を引き起こします。
また、妊娠中は羊水で大量の水分が必要になります。羊水の量は妊娠週数が進むにつれて増えていき、脱水症状になりやすいので、こまめな水分補給をして予防しましょう。
もうひとつ、妊娠中に注意したいのが、貧血です。妊娠をすると、胎盤に血液を送るために母親の体内の血液量が増えるだけでなく、胎児に栄養を運ぶためにより多くの血液が必要になります。
妊娠中期は血液量が増加しますが、赤血球の数は増えないため、血液濃度が薄くなり、これが原因となって、体中に酸素を運ぶ働きが低下し、貧血を引き起こす場合も。貧血になると、頭痛やめまいを引き起こす場合があるので注意しましょう。
妊娠20週~産後12週頃までになりやすい妊娠高血圧症候群には、妊娠中に血圧が上がる「妊娠高血圧症」と、高血圧とタンパク尿、肝臓などの機能障害が起こる「妊娠高血圧腎症」があり、主な症状としては、高血圧の他に頭痛やむくみなどが挙げられます。
ほかにも、妊娠中は体の変化によって姿勢が悪くなりやすく、姿勢の悪さが原因で血の巡りが悪くなり、肩や首が凝ると、頭痛を引き起こす場合もあるため気をつけましょう。
受診の目安や、薬の服用について
熱や危険な症状がないか確認
頭痛が流産の直接的な原因になることはほとんどありません。短時間でよくなり、その後繰り返さない頭痛の場合は、様子をみて気になるようなら受診を検討します。
また、頭痛がある場合は熱があるかどうかも必ず確認し、熱がある場合や、微熱でも風邪っぽい症状がみられる場合、水分不足を感じる場合は翌日〜近日中の受診をしましょう。
熱が伴わない場合でも、なかには危険な病気を引き起こす症状もあります。以下のような症状がみられたら、夜間を問わず、急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
・殴られたような激しい頭痛
・全身が痙攣する
・突然言葉が出てこなくなる
・急に片方の目が見えなくなる
・ろれつが回らない
・体の左右どちらかがしびれる、感覚がなくなる
これらの症状が見られる場合、子癇や脳卒中などの病気が潜んでいる可能性があるため注意が必要です。
自己判断で薬を飲むのはNG
妊娠4週から約3カ月間は赤ちゃんの重要な器官が作られるため、母親が飲んだ薬の影響を受けやすいと考えられています。そのため、薬は自己判断で飲まないようにしましょう。
妊娠に気づかずに薬を飲んでしまった場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談します。市販の頭痛薬を短い期間飲んだとしても、妊娠がわかった時点で中止すれば、赤ちゃんに影響することはほとんどありません。
これから妊娠を望んでいる方も、自己判断で薬を飲むのは避けた方がよいでしょう。妊娠のごく初期は、薬を飲んでも問題はないとされていますが、普段使用している頭痛薬を飲んでも影響がないか医師に確認をとると安心です。
妊娠前から頭痛に悩まされて日頃から薬を飲んでいたという場合は、妊娠前や妊娠中、出産後にどのように対応すればよいか医師に相談しましょう。相談によって、薬を変更したり、量を減らしたりなど専門的な知識をもとに判断することができます。
頭痛薬のなかには、妊婦が安心して飲める薬もあります。頭痛がつらくて我慢できないときは無理をせずに受診しましょう。
毎日の生活に取り入れられる頭痛ケア
妊娠中でも手軽に取り入れられる頭痛ケアにはどのようなものがあるのでしょうか。
患部を冷やす・温める
血管が拡張して片頭痛を起している場合は、痛みがあるところを冷やします。保冷剤をタオルで包むと手軽に冷やすことができるでしょう。
頭が締めつけられるような痛みがある緊張性の頭痛が発症した場合は、血行不良や冷えなどが原因のため、蒸しタオルなどで患部を温めましょう。また、体を温めるために湯船にしっかりつかるのもひとつの方法です。
睡眠を意識する
妊娠中はホルモンバランスの変化によって、不眠や過眠などの睡眠障がいを引き起こしやすくなっています。妊娠初期に増える黄体ホルモンの働きによって体温が上昇しやすく、夜の寝つきが悪くなったり、妊娠中期に卵胞ホルモンの量が増えることで睡眠が浅くなり、不眠になってしまうケースも。
また、深夜にスマートフォンやタブレットなどのブルーライトを見るのは、睡眠を妨げるため、就寝前は避けましょう。適度な運動を取り入れ体をほどよく動かすと、寝つきやすくなります。
気分転換に近所を散歩したり、マタニティヨガを取り入れたりして、自分に合った運動を見つけられるとよいでしょう。
軽いストレッチやウォーキングなどの運動は、血の巡りがよくなることで、頭痛が緩和される場合もあります。
妊娠中の頭痛には適切な対処を
妊娠すると、ホルモンバランスの乱れや、貧血や脱水状態などから頭痛が起こる場合があります。頭痛を感じたときには、熱がないか体温を計ったり、危険な症状がないか確認し、必要に応じて専門医を受診しましょう。
薬の服用は、成分によっては赤ちゃんの成長に影響を与える場合もあるため、注意が必要です。母親の健康は、お腹の赤ちゃんにとっても大事なこと。日々の自分の体調と向き合いながら、無理せず過ごしましょう。
監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
Profile
杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。