子宮筋腫がみられる場合、妊娠は可能か。症状や治療法とは

子宮筋腫がみられる場合、妊娠は可能か。症状や治療法とは

2021.04.16

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杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

女性の20%超が罹患するといわれている子宮筋腫。将来的に妊娠を希望する場合や、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合、どのような対処をするとよいのでしょう。また、不妊との関連はあるのでしょうか。子宮筋腫の症状や、検査、治療方法について解説します。

女性の約4人にひとりが罹患する子宮筋腫とは

婦人科の疾患のなかでも、最も多いとされるひとつに子宮筋腫が挙げられます。小さいものも含めると、女性の20〜30%(約4人にひとり)が罹患するともいわれています。

子宮筋腫は子宮筋層に発生する腫瘍ですが、悪性の腫瘍(がん)ではなく、良性の腫瘍を指します。

女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンの作用により大きくなるため、月経のある20代から40代の女性が発症しやすく、ホルモンの分泌が低下する閉経後は腫瘍がゆっくりと縮小し、症状も改善していくとされています。

家族に子宮筋腫の人がいる場合に子宮筋腫が見つかることが多いようですが、遺伝的要素の関係性については、詳しいことはわかっていません。

また、子宮筋腫は妊娠にどのように関係するのでしょうか。

iStock.com/krisanapong detraphiphat
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子宮筋腫と妊娠の関係性

子宮筋腫が発見された場合、妊娠にはどのような影響を及ぼすのでしょうか。

結論からいうと、子宮筋腫を持っていない場合よりも、流産や早産のリスクが高い傾向にあるものの、子宮筋腫合併妊娠でも無事に出産をした妊婦さんはたくさんいます。

しかし、粘膜下筋腫や筋層内筋腫があると、受精卵が着床しにくくなることもあるようです。子宮筋腫が卵管の通過障害となることもあるようですが、子宮筋腫と不妊のはっきりとした因果関係はわかっていないようです。

子宮筋腫があることがわかったときの、一般的な対処方法をケース別に見てみましょう。

iStock.com/Motortion
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子宮筋腫があり、これから妊娠を希望する場合

子宮筋腫を治療するかどうかの判断は難しいことが多いとされていますが、腫瘍のサイズが大きい場合や、筋腫が不妊の原因だと考えられる場合には摘出治療を検討することもあります。

ただし、手術をすると子宮に傷がつき、子宮の壁が薄くなることによる子宮破裂を防ぎ、母体と赤ちゃんの安全を確保するため帝王切開での分娩が基本となります。

子宮筋腫の手術をする場合は、子宮の修復期間を設ける必要があり、その間は妊娠できないため、医師とよく話し合って判断する必要がありそうです。


妊娠中に子宮筋腫があることがわかった場合

筋腫のサイズが小さければ、経過を観察しながら経腟分娩で出産できる場合もあります。

妊娠期間中に子宮筋腫が発見された場合には、経過観察で様子をみることが多く、積極的な治療は行わないことが多いとされています。

妊娠初期であれば、まれに筋腫の状態により摘出を検討する場合もあるようですが、基本的には、症状がみられる場合には対症療法を行い、妊娠に臨むようです。

子宮筋腫の症状

妊娠を望む場合、早期に医師に相談したいと考えるのではないでしょうか。では、子宮筋腫のサインとはどのようなものなのでしょうか。


過多月経

子宮筋腫の症状のなかで特に多いとされているのが、月経時の出血量が多くなったり、レバーのような血の固まりが出る「過多月経」です。生理期間中の経血量が140mlを超えた場合に過多月経と定義されます。

実際の経血量を把握することは難しいですが、1時間おきにナプキンやタンポンを交換する必要があったり、ナプキンとタンポンを同時に使わなければならない場合は過多月経が疑われます。

また、生理中と同じくらいの量の出血が8日以上続く場合には「過長月経」かもしれません。

iStock.com/Boyloso
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貧血

月経の量が増えると、貧血の症状が現れる可能性が高まります。動悸や息切れ、疲れやすさ、倦怠感がある場合には貧血を疑い、医師に相談し適切な薬を処方してもらうとよいかもしれません。


月経痛

生理中に下腹部に痛みを感じることを「月経痛」と呼びます。痛みの感じ方は個人差があり、子宮筋腫のできる場所によっても異なりますが、下腹部の痛みに加えて吐き気、頭痛、発熱などを伴う場合もあります。この場合は「月経困難症」と呼ばれます。

iStock.com/5432action
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不正出血

生理中ではないにも関わらず出血がみられることを「不正出血」と呼びます。不正出血の原因は子宮筋腫以外にもありますが、早期発見のためにも不正出血がある場合は、医師に相談するとよいでしょう。

また、不正出血以外にもおりものの量が増加することもあります。

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子宮筋腫の種類

子宮内の腫瘍のできる場所によって子宮筋腫は次の3つに分類されます。


筋層内筋腫

「筋層内筋腫」は、子宮の筋肉の中にできる腫瘍で、子宮筋腫の内訳の多くを筋層内筋腫が占めています。筋腫が小さい場合は、症状はあまりありませんが、筋腫が大きくなると不正出血や過多月経を引き起こします。

筋腫が大きくなり、子宮内に突出すると子宮内膜の表面積が増えるため、内膜の剥がれ出る量が増えるからだとされています。


漿膜下筋腫

子宮の最も外側である漿膜(しょうまく)に筋腫ができるのが「漿膜下筋腫」です。子宮内部を圧迫することがないため、比較的症状が出にくいので発見されにくいタイプの筋腫でもあります。

筋腫が子宮から離れ、細い茎でつながる有茎性漿膜下筋腫になると、茎がねじれて強い痛みを伴う場合があります。

iStock.com/apomares
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粘膜下筋腫

子宮の内側にできる筋腫を「粘膜下筋腫」といいます。発生頻度は低いものの、月経量が多くなったり、生理痛などの症状が出やすいタイプの筋腫です。重い貧血や不妊の原因となることもあるため、手術を要するケースもあります。

子宮筋腫の検査方法

子宮筋腫の検査は、まず内診(触診)から行われます。直接子宮を確認することで、見た目にはわからない筋腫の大きさや場所などを調べます。

内診では、小さな筋腫や内側にある筋腫などを発見することができないため、超音波(エコー)検査を行います。細い棒状のプローブと呼ばれる器具を腟に挿入して、子宮や卵巣の状態を確認する「経腟法」と、腹部に超音波をあてる「経腹法」の二種類があります。最近は内診(触診)を省略して超音波(エコー)検査から始めることも多いようです。

血液検査では、血中のヘモグロビンの数値を確認し貧血症状を調べるほか、腫瘍マーカーを検査して悪性疾患(癌、肉腫など)の可能性を調べることもあります。

ここまでの検査で子宮筋腫が確認された場合、MRI検査などで筋腫の状態を詳しく調べることがあります。

子宮筋腫の予防方法は判明していませんが、閉経するとホルモンの分泌が少なくなるため、筋腫は小さくなっていきます。子宮筋腫があったとしても無症状、あるいは症状が軽度であれば治療の必要はなく、経過観察で済む場合も多いようです。

iStock.com/7postman
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子宮筋腫の治療

子宮筋腫の主な治療法は薬物療法と手術療法に大別されます。


薬物療法

子宮筋腫の薬物療法のひとつに「GnRHアゴニスト療法、GnRHアンタゴニスト療法」と呼ばれるものがあり、脳下垂体に働いて卵巣からのホルモン分泌を低下させることにより子宮筋腫を小さくする治療法です。

連続で投与できる期間は6カ月と定められており、更年期症状などの副作用がみられます。

そのほか、症状に応じて鎮痛剤、ホルモン製剤、鉄剤などのほか漢方も処方されます。

iStock.com/AsiaVision
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手術療法

妊娠を希望する場合や、将来的に出産の可能性がある場合には、子宮に発生した筋腫だけを取り除く「筋腫核出術」を行います。

筋腫が大きい場合や、出産の可能性がない場合には「子宮全摘術」で子宮ごと筋腫を取り除きます。

筋腫の大きさが3~4cm以下で、子宮の内側に50%以上突出した粘膜下筋腫の子宮温存治療法として、「子宮鏡下手術」を行う場合もあります。

特に妊娠を望む場合、子宮筋腫のサインを見逃さないようにしよう

iStock.com/Jaengpeng
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子宮筋腫ができたとしても、安全に出産を終えた妊婦さんは大勢います。特に妊娠を望む場合は、早期に医師に相談できるように、過多月経や月経痛、不正出血といったサインを見逃さないようにしましょう。

基本的には、子宮筋腫が大きくなっても命に関わることはないとされていますが、将来的に妊娠を希望する場合は、治療法のほか手術を行うタイミングなど、家族や医師と相談しながら決めるとよいかもしれません。


監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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