MRワクチンで防げる麻疹(はしか)の症状と予防法

MRワクチンで防げる麻疹(はしか)の症状と予防法

2021.03.24

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金髙太一

金髙太一

おひさまクリニック院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 地域総合小児医療認定医/日本アレルギー学会/日本感染症学会

おひさまクリニック院長。小児科専門医、地域総合小児医療認定医。小児の感染症、アレルギー、免疫・膠原病を中心に東京、横浜の病院で研修・診療の経験を積み、2015年に東京の十条にておひさまクリニック(小児科、耳鼻咽喉科)を開院。子どもたちが健やかに成長していくためのサポートをしたいと思っております。また、3児の父でもあるので、子どもに関することでしたら、お気軽にご相談ください。

非常に強い感染力を持ち、空気、飛沫、接触など、人から人へとうつっていく麻疹(はしか)ウイルス。免疫を持っていなければ発症率はほぼ100%といわれています。今回は麻疹(はしか)と、混同されがちな風疹の症状や原因、感染経路や予防方法などについて解説します。

麻疹(はしか)と風疹

「麻疹(通称:はしか)」と風疹(通称:三日ばしか)は、どちらも通称に「はしか」がつく病気です。

予防接種(MR)が、麻疹、風疹の両方を予防する混合ワクチンになっていること、どちらも発疹をともなう症状であることから、一括りにされることの多い感染症ですが、それぞれ異なるウイルスが原因の、まったく異なる病気です。

まずは麻疹(はしか)と風疹の症状や特徴、違いを見ていきましょう。


麻疹(はしか)の症状や特徴

くしゃみをした女の子
PR Image Factory/Shutterstock.com

麻疹(はしか)の原因は麻疹ウイルスです。麻疹(はしか)の流行時期は春先から夏にかけてで、ウイルスの潜伏期間は10日ほどといわれています。

麻疹ウイルスの初期症状は、


  • 38度を超える高熱
  • 鼻水
  • 目やに

など風邪に似ています。

3日前後その状態が続いた後、一旦解熱しますが、その際に、コプリック斑と呼ばれる白い発疹が口内、頬の内側に現れ、再度高熱や咳がでます。

2日程度経過すると全身に赤い発疹が広がり、それから4日程度、発疹、高熱、咳がおさまらないのが麻疹(はしか)の症状です。


麻疹(はしか)の発生状況

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出典:感染症発生動向調査 (国立感染症研究所感染症疫学センター)

麻疹(はしか)は、平成19、20年に10~20代に大流行しましたが、平成20年から5年間、中学1年、高校3年に該当する年代に2回目の麻しんワクチン接種を受けるようにしたことにより、その後の10~20代の患者数は激減。

2008年には11000人を超えていた患者数は、2020年で13人にまで減少し、現在では日本は、麻しんの排除状態に認定され、海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例のみです。

とはいえ、毎年ゼロではないため、注意が必要です。


麻疹(はしか)の感染経路

麻疹ウイルスは人から人へと感染します。感染経路は飛沫、接触感染が代表的ですが、空気感染もします。

麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、マスクやうがい、手洗いを徹底していても感染を防ぐことは難しいといわれ、免疫や抗体を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するといわれています。


風疹(三日ばしか)の症状や特徴

麻疹(はしか)と混同されがちな風疹ですが、原因となるのは風疹ウイルスです。風疹の流行時期は冬から春といわれており、麻疹(はしか)とは発生時期が少し異なります。

風疹ウイルスの潜伏期間は長く、2~3週間は症状が出ないといわれています。個人差もありますが、風疹の初期症状は、


  • 発熱
  • 倦怠感
  • 首や耳下周辺のリンパ腺の腫れ

が見られます。微熱程度の発熱や発熱がないケースもあるようです。

その後、赤い発疹(かゆみがある場合もある)があらわれますが、3日程度でおさまる場合が多いようです。

また、現在日本では、まだ排除にいたっていませんが、平成30年に排除に向けた取り組みとして、医師の風疹の届け出に対する方針を改正しています。


  • 風しんと診断した場合は直ちに届出
  • 1例でも発生した場合は積極的疫学調査
  • 全例に遺伝子配列の解析を含むウイルス遺伝子検査

また、風しん予防の普及啓発活動を実施し、平成26~29年度には年間約10万名に風しん抗体検査の実施や、妊娠を希望する女性に対する風しん抗体検査費用の助成をおこなうなどして風疹患者の減少に国をあげて取り組んでいます。

麻疹(はしか)の予防方法

麻疹(はしか)に比べて、風疹は乳幼児がかかっても重症化することは稀といわれています。

一方、麻疹(はしか)は、乳幼児が感染すると重症化しやすいといわれています。では、具体的な予防方法を見ていきましょう。


MRワクチン

年長の予防接種
iStock.com/luckyraccoon

麻疹(はしか)も風疹も、MRワクチンという予防接種を打つことで予防することができます。MRワクチンは


  • 1歳の年に1回
  • 年長児の年に1回

の計2回の予防接種が推奨されています。

MRワクチンは、一度でも接種するとほとんどの人が体内に麻疹(はしか)の抗体を持つことができ、さらに2度目のMRワクチンを打つことで生涯にわたり抗体が持続されるといわれています。

そのため、1歳からの初回接種を終えていれば、2度目のワクチン予防接種を終えていなくても、保育園や幼稚園などの集団生活を送ることに問題はありません。もちろん、年長の年になったら必ず追加接種をおこないましょう。

1歳のお子さんは2歳になるまで、年長のお子さんは3月31日まで、は公費で接種が可能ですので、接種したか不安な方は母子手帳などを確認してみてくださいね。

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iStock.com/hideous410grapher

麻疹(はしか)の予防接種を受けられるのは1歳からですが、0歳の赤ちゃんでも感染する病気です。

なかには、ワクチンを接種しても抗体ができにくい体質の人や子どももいるため、予防接種をしたとしても、日頃から免疫力の維持を心がけることが大切です。

さらに麻疹(はしか)の流行している地域に、可能であれば近寄らないようにしましょう。

次は気になる麻疹(はしか)の感染経路について解説します。

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麻疹(はしか)の可能性があるときの受診

麻疹(はしか)は初期症状が風邪に似ていて、迅速に結果が出る検査方法がないため、発症後、コプリック斑や皮膚の発疹が出るまで診断がつかない場合があります。

発疹がでてきたら、速やかに医療機関を受診してください。診察前に電話などで医療機関に申し出ておくのもよいでしょう。


受診は何科?

麻疹(はしか)に似た症状で受診をする場合には、赤ちゃんや子どもの場合、かかりつけの小児科医に見てもらうのがよいでしょう。

かかりつけ医であれば、風邪のときの様子と比較しながら診察するので、診断もスムーズです。

感染力の強い病気ですので、電話などで事前に麻疹の心配がある旨を伝えておくと、隔離などの対応をしてくれるので、周囲への感染を防ぐことができます。

病院を診察する子
iStock.com/maroke

麻疹(はしか)の治療方法は?

麻疹(はしか)には、具体的な治療方法や特効薬がないといわれています。麻疹ウイルスの力が弱まるまで症状を和らげるための対症療法をしていくことになるでしょう。

処方される薬は、咳止めの薬や高熱を和らげるための解熱剤などです。咳や鼻水、高熱を放置すると合併症につながる場合もあるため、処方された薬はしっかり服薬させましょう。

麻疹(はしか)について大人が気をつけること

麻疹(はしか)は感染、重症化しやすい

感染力が強い麻疹ウイルスは、赤ちゃんや子どもだけでなく、抗体のない大人にもうつりやすく、大人に感染した場合にも重症化することは珍しくありません。

特に妊婦さんが麻疹ウイルス感染すると流産や早産を招く危険性があるため、注意が必要です。ママやパパは麻疹(はしか)の流行時期の前に抗体検査や予防接種は済ませておきましょう。


麻疹(はしか)で注意すべき合併症

子どもが麻疹(はしか)にかかった際に注意しなければならないのが、


  • 中耳炎
  • 肺炎
  • 脳炎

などの合併症です。

症状が急変していないか、意識の消失などがないか、様子をよく確認しましょう。

麻疹(はしか)は予防接種と免疫力維持で防ぐ

元気な親子
iStock.com/maroke

麻疹(はしか)はかつての大流行をきっかけに、MRワクチンの定期接種化が始まり、今日の日本での発生件数は減りました。

しかし、感染力がきわめて強いため、子どもも大人も発症すると回復までに10日以上かかることが多い、やっかいな病気です。

麻疹(はしか)に感染を防ぐ方法として有効な手段は、MRワクチンの予防接種を受け抗体をつけること、そして日ごろ体調管理をおこない、免疫力を上げることといわれています。

公費で定期接種を受けられるのは1歳と、年長の学年となっているため、該当のお子さんがいるご家庭では、予防接種を受けているかどうか、再度確認してみてくださいね。


監修:金高太一(おひさまクリニック)

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金髙太一

金髙太一

おひさまクリニック院長。小児科専門医、地域総合小児医療認定医。小児の感染症、アレルギー、免疫・膠原病を中心に東京、横浜の病院で研修・診療の経験を積み、2015年に東京の十条にておひさまクリニック(小児科、耳鼻咽喉科)を開院。子どもたちが健やかに成長していくためのサポートをしたいと思っております。また、3児の父でもあるので、子どもに関することでしたら、お気軽にご相談ください。

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