フランスの離乳食は「栄養源の多様化」。使う食材や進め方、日本との違い

フランスの離乳食は「栄養源の多様化」。使う食材や進め方、日本との違い

「美食の国」とも言われるフランス。赤ちゃんは一体どんな離乳食を食べているのでしょうか?日本との違いを知ることで、離乳食をもっと楽しむきっかけにもなるかもしれません。今回は、フランスの離乳食の特徴や開始時期、調理法、食材選び、進め方、フランスの食文化などをまとめました。

フランスの離乳食の特徴

※写真はイメージ(iStock.com/Rayes)
※写真はイメージ(iStock.com/Rayes)

フランスの離乳食は、日本とは違った特徴が多くあり離乳食に対する考え方や、食材選び、進め方などが異なります。

まず、フランスでの離乳食に対する考え方は「栄養源の多様化」です。

日本の「離乳食」は文字通り、母乳やミルクから離れる過程のことを意味しますが、フランス語では離乳食とは呼ばず、「L’alimentation Diversifiée(=多様な食事)」と呼びます。

「母乳やミルクを早く卒業して食べることを覚える」という日本での意味合いよりも、「これからは色々なものを食べていこう」というフランスの意味の方が、プレッシャーが軽く感じられるママもいるかもしれません。

また、フランスのスーパーの赤ちゃんコーナーでは、月齢に応じた様々なベビーフードやオーガニック商品などが売られており、日本と比べると離乳食をすべて手作りする人は少数派のようです。

さらに特徴的なのは、赤ちゃんの頃からデザートやおやつを味わう習慣が大切にされている点です。

フランスは、食後に甘いものがないと食事が終わった気がしないという方が多く、大人の食事と同じように離乳食でもデザートは欠かせないもの。

「グテ(goûter)」と呼ばれる16時のおやつの時間は、大人も大好きな時間で日常生活の一部。そのため離乳食売り場でも、牛乳などの乳製品を使った常温保存可能なデザートが数多く売られています。

【世界の離乳食】多種多様な食材で作る離乳食

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フランスの離乳食の開始時期

日本の離乳食は、およそ生後5〜6カ月頃に開始するのが一般的ですが、フランスでもほぼ同じく生後6カ月頃から始めることが多いようです。

この頃になると、成長に必要な栄養が母乳やミルクだけでは足りなくなると言われています。また、食物アレルギーのリスクを避けるためや、噛んだり消化したりする体の発達を促したりする点からも、この時期が理想的といえます。

離乳食の時期は、フランスではおよそ初期と後期に分かれており、子どもの成長具合にもよりますが生後8〜12カ月頃が後期となるようです。

また、フランスでも日本と同じように、出生時に産院から母子手帳「Carnet de santé」をもらうことができ、離乳食を始めるための具体的な食品の種類や目安が記載されています。

離乳食を開始する時期の判断基準は、赤ちゃんのよだれが増えている、食べ物に興味を示す、首がすわっているといった条件が揃っていれば、母乳やミルク以外のものを食べる準備ができていると判断してよいでしょう。

フランスの離乳食の調理法やメニュー

※写真はイメージ(iStock.com/Poike)
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フランスの離乳食の主な調理法は、ブレンダーやハンドミキサーなどでペースト状にするやり方が基本となります。

1品に色々な食材を混ぜるということは少なく、にんじんのピューレ、りんごのコンポートといったように1つの食材のみを使って仕上げることが多いのが特徴。

大人の食事でもペースト状のピューレは定番の付け合せのため、月齢が上がっても食べる機会は少なくありません。

最初は赤ちゃんがほとんど食べないことも多く、市販品を買ってももったいないため、手作りした離乳食を小さく小分けにして冷凍して使うママもいるようです。

またフランスでは、もともとの食習慣である「前菜、メイン、デザート」といったメニューで赤ちゃんの頃から食事をすることが主流。日本のように「主食、主菜、副菜」で与えることは少ないでしょう。

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フランスの離乳食の食材選び

フランスと日本では、食文化の違いから離乳食の食材選びにも異なる点があります。フランスの離乳食の食材選びについて紹介します。


最初に与える野菜は胃にやさしいものを

フランスの離乳食初期に与える食材は、にんじん、かぼちゃ、ブロッコリー、ほうれん草、長ねぎの白い部分、いんげん、皮と種を取ったズッキーニ、じゃがいもなど赤ちゃんの胃に負担が少ない野菜から与えることが多いようです。

キャベツやブロッコリー、きのこ、豆、玉ねぎ、ピーマンといった繊維質が多く、消化の際にガスを発生させやすい野菜は避けましょう。

またフランスでは、じゃがいもは味が単調なため、味わう野菜としてではなく、水分が多い野菜に混ぜて食べやすくするために使われるそうです。


野菜に慣れたら果物を与える

※写真はイメージ(iStock.com/Chiemi Kumitani)
※写真はイメージ(iStock.com/Chiemi Kumitani)

フランスでは、先にフルーツを与えてしまうと赤ちゃんが甘みを好んでしまい、野菜を食べなくなるという考え方から、野菜に慣れてきてから果物を与えるのが一般的。

イチゴなどのベリー類やマンゴーなどの南国の果物などは、アレルギーのリスクがあるため最初は避けた方がよいとされ、りんごやバナナ、洋なし、桃、アプリコット、カリン、プルーンなどから与えます。


赤ちゃん用シリアルを使うこともある

またフランスでは、赤ちゃん用の粉状シリアルやセモリナ粉を、離乳食初期から導入する方も少なくないようです。

ミルクに混ぜるタイプで腹持ちがよいため、夜泣きが多い赤ちゃん向けとされており、食欲が少ない赤ちゃんの栄養源にもなるでしょう。

月齢の低い赤ちゃん向けのものはグルテンフリーとなっており、6~8カ月向けのものはフルーツ味などの種類も増え、野菜スープに混ぜられるタイプのものもあるそうです。


ヨーグルトなどの乳製品を与えることが多い

デザートには、フランスの定番であるヨーグルトやフロマージュブラン(白いチーズ)などの乳製品を、生後6カ月の野菜や果物に慣れてきた頃から与えることも多いです。

日本の離乳食でも、生後6~7カ月頃から与えられるため共通していますね。

また、乳製品に慣れてきた頃には、舌平目のムニエルやチキンといった魚や肉を大人の食事から少し取り分けて与えることも。

塩気のある調味料は使わずに、辛くないスパイスやマイルドなオイルで風味づけして作ることもあるそうです。


お米は8カ月頃から、塩は1歳からOK

さらに日本とかなり異なる点として、フランスではお米は8カ月頃から与えてもよいとされています。

日本では最初の離乳食として与えられるお米も、甘みがあるので最初は避けるべきとフランスでは考えられているようです。

お米を与える前は、小麦やキビ、とうもろこしなどが数種混ざっている粉状の乳児用シリアルをミルクに混ぜて与えます。

また日本では、塩や醤油、味噌といったしょっぱい調味料は、離乳食中期の7~8カ月から少量使ってよいとされていますが、フランスでは赤ちゃんが1歳になるまでは避けた方がよいと言われているようです。

フランスの離乳食の進め方

日本とフランスでは離乳食の進め方も異なります。フランスの離乳食の成長段階ごとの進め方をご紹介します。


生後6カ月の離乳食開始頃

※写真はイメージ(iStock.com/Christophe Huchet)
※写真はイメージ(iStock.com/Christophe Huchet)

日本の離乳食は、赤ちゃんの月齢や発達に合わせて、食べ物の形状を細かく確認しながら進めるやり方ですが、フランスでは月齢が上がってもペースト状の「ピューレ」を与えることが多いようです。

大人の食事にも野菜のピューレが添えられることが一般的なため、離乳食の形状を固くしていくことに特にこだわらないのでしょう。

赤ちゃんに初めて食べさせるものは、日本では10倍がゆですが、フランスでは塩は入れずに水だけで加熱したにんじんのピューレから始め、昼食時や16時のおやつの時間に食べさせます。

初めはひとさじから始めて徐々に量を増やしていき、1度に与える初めての食材は1つずつ。アレルギーのリスクを考え、新たな食材を導入したら2~3日間は他の新たな食材を与えないよう指導されることもあるようです。この点は日本と同様です。

また、離乳食が始まっても、主要栄養源はあくまでも母乳やミルクです。1歳までは子どもの食事量と合わせながら少なくても1日500mlは与えていきます。

離乳食をスプーンから食べたがらない赤ちゃんには、味に慣れさせるためミルクに混ぜて哺乳瓶で与えてもよいでしょう。


生後6カ月の離乳食に慣れてきた頃

野菜や果物に慣れてきたら、たんぱく質を与え始めます。「前菜、メイン、デザート」のメニューとなり、前菜は野菜のスープを与えるのが一般的です。

メインは、魚や鶏肉、ステーキやハムを調味料なしで焼きペースト状にしたものや、潰したゆで卵などを少量ずつ与えます。

デザートやおやつは、ヨーグルトやフロマージュブランのほか、りんごや洋なしを水で煮込みペースト状にしたフルーツコンポート、バナナをつぶしたものもよいかもしれません。


生後8カ月以降

生後8カ月からは、野菜ピューレの粒の量を荒くする、お肉や卵などたんぱく質の量を少しずつ増やすなどして進めていくようです。

野菜やお肉のピューレにバターを少量加えて脂肪分に慣らしていったり、小さくちぎったフランスパンをそのまま与えることも。

フランスパンを与えるときは、赤ちゃんが喉に詰まらせないようしっかり見守ることも大切です。


1歳以降

※写真はイメージ(iStock.com/Alexandra Iakovleva)
※写真はイメージ(iStock.com/Alexandra Iakovleva)

1歳頃になると、スープに入れたりバターなどで味付けしたパスタを食べられるようになるほか、牛乳も飲めるようになります。パスタは、赤ちゃんでも食べやすいよう柔らかく茹でるとよいでしょう。

また、お米も食べられるようになりますが、日本のご飯とは異なりパスタのように茹でるため、ひと粒ずつぱらぱらした状態で野菜スープなどに混ぜて与えます。

さらに、赤ちゃんの歯の生えぐあいによっては、野菜やお肉も形があるものを与えたり、大きさを変えていってもよいでしょう。

フランスのそのほかの食文化

フランスの基本的な食文化についてご紹介します。


美食を追求したフランス料理やワイン、スイーツ

フランスの食文化として、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている「ガストロノミー(美食術)」があります。

ガストロノミーとは上質な食材やシェフのすぐれたテクニックを駆使して美食を追求することで、高級レストランでのディナーは数百ユーロにものぼることも。

フランス料理の定番は、シンプルに焼いた肉や魚にさまざまなソースをかけて食べるものです。

また、食事の大切なお供としてワインがあります。フランスでは各地方ごとにブドウ畑が多く広がっており、中でも二大ワイン生産地と言われるのがボルドーとブルゴーニュ地方です。

さらにフランスは、数多くのスイーツ店が立ち並ぶ国としても有名で、中でもマカロンはフランスを代表するスイーツ。

そのほか日本にもあるケーキやタルト、シュークリーム、エクレア、マドレーヌ、ラングドシャといったクッキーも、もとはフランスのお菓子です。


家庭料理ではバゲットやチーズが定番

フランスには、各地方によってさまざまな郷土料理があり、有名なものでは南フランスの郷土料理ブイヤベース、前菜としてよく出されるエスカルゴ、夏野菜をゴロゴロと煮込んだラタトゥイユ、そば粉を使ったクレープのようなガレット、フランス式のおでんポトフがあります。

日本での洋食の定番、オムレツやコロッケも元はフランスから入ってきたもので、フランスの家庭料理としてよく食べられています。

また、食卓に欠かせないのはバゲット。乳製品のバリエーションも多く、チーズやヨーグルトはかなりの種類があるようです。

さらにフランスで食生活の中心となっているのが、マルシェ(市場)での量り売り。新鮮な野菜や果物のほかお惣菜なども売っています。

フランスの離乳食を参考にしてみよう

※写真はイメージ(iStock.com/piskunov)
※写真はイメージ(iStock.com/piskunov)

母乳やミルクのほかにも「色々な食材を知り味わって食べてみよう」というフランスの離乳食の考え方は、早く離乳しなければ、食事から栄養を取らなければといった焦りを抱えるママたちの気持ちを和らげてくれそうですね。

離乳食にそこまで手をかけない、シンプルな考え方も取り入れると日々の離乳食のプレッシャーから少し解放されるかもしれません。

しかし、離乳食の進め方は赤ちゃんによって異なるため、体質に合わないなどの心配がある場合は小児科や保健センターなどで相談してみましょう。

フランスと日本、両方の良いところを取り入れたバランスのよい離乳食で、のびのびと子育てができるとよいですね。

2022年04月08日


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