「子どもの熱が下がらない」「元気だったのに急に高熱が出て焦った」などの経験をされたママも多いのではないでしょうか。いつもよりかなり高めだけどわりと元気だったり、逆に微熱程度だけど、ものすごく元気がないときもありますよね。そこで、鈴の木こどもクリニックの小児科専門医、鈴木博先生に子どもの急な発熱のときの正しいケア方法について聞いてみました。
発熱するとき、子どもの体の中では、どのような状況になっているのでしょうか。鈴木先生に聞いてみました。
ママたちは子どもが発熱するとあわてて、熱を下げようと必死になってしまいますね。しかし発熱という症状は、子どもの体内に入ってきた病原体と、子どもが戦っている証拠なのです。
鈴木先生曰く「発熱は早く病気が治るために必要な現象です※。だからむやみに熱を下げる必要はありません。子どもを応援する気持ちで、ゆっくり休ませ、栄養を摂らせることが一番大切です」
※熱が上がれば子どもの免疫力(防御力)が強化され、病原体が弱るため
高熱といってもその幅は広いものですが、「体温が〇〇℃以上になってしまうと危険!」という基準があるか、鈴木先生に聞いてみました。
一般的に37.5℃以上を発熱、38.5℃以上を高熱といいます。
「大切なのは、〇〇℃という体温計の数値よりも、健康で元気なときと比べて、機嫌や食欲がどうなのか。呼吸の状態、手足の冷感、意識レベルなど、子どもの様子を冷静に観察して評価することです」(鈴木先生)。
ひと昔前は「40℃以上が出ると脳に影響が出る」といわれ、これを信じているおばあちゃん世代は結構いたりしますよね。本当にそうなのか鈴木先生に聞いてみました。
「それは迷信で全く根拠はありません。ただおばあちゃん世代が子どもの頃の日本では、日本脳炎がかなり流行していました。日本脳炎になると高熱が出て死亡するか、脳に障がいが残ったりしました。
今は日本脳炎ワクチンが定期接種のため、そのような不幸な状態になってしまうお子さんはいなくなりました。きっと昔の日本脳炎の記憶が残っているのではないでしょうか。
さきほども述べましたが、感染症の発熱では脳が破壊されることは、まずありません」。
病院で受診したのに、1~2日経っても熱が下がらないとママは心配になってしまいますよね。
「1~4日は通常の感染症でも熱が続きます。『熱が高いから』『熱が下がらないから』というだけの理由で救急病院へ行くことはおすすめできません。弱った体で救急病院に行くことは、余計子どもの負担になりますし、別の病気をもらうリスクもあります。また、そもそも救急病院は重症で緊急を要する患者さんを診るところだからです。
生後3カ月未満で38℃以上の発熱ある、意識がなくけいれんを起こしている、顔色が悪くぐったりしている、汗をかかず尿も出ないなどの症状は、緊急を要するので救急病院を受診しましょう。このような症状がなければ診療時間内にかかりつけ医へ行きましょう」と、鈴木先生。
そこでなかなか熱が下がらないときに、チェックしておきたいポイントを教えてもらいました。
けいれんが最も警戒しなければならない症状です。けいれんが起きた場合は、意識があるか、けいれんしている手足の動きに左右差があるか、どのくらい続いているか、冷静になって時間を計ってください。15分以上けいれんが止まらなければ、救急病院へ。
せき・鼻水・ゼイゼイ・腹痛・おう吐・下痢などの症状があるかないかもしっかり確認しておきましょう。
食欲の程度、意識がはっきりしているか、頭痛や体に痛いところがあるか、嘔吐はないか、ぐったりしていないかなどもチェックしましょう。
熱がどのように変化しているのかも大切な情報です。1日3回朝昼晩に検温を行うとよいでしょう。
「解熱剤を服用すれば熱は一時的に下がりますが、病気が治ったわけではありません」と、鈴木先生。
「試験勉強のとき、親が夜食を作ってくれた経験はありますか?夜食を食べながらひと休憩した人も多いでしょう。まさに解熱剤は、病原体と闘っている子どもにとっての休憩、『夜食』のようなものです」
子どもが熱でよく寝つけない、ひんぱんに苦しそうに起きてしまうなど、つらそうなときに「少し体を休め、体力を温存するもの」として使うとよいでしょう。
熱を出している子どもが少しでも快適に過ごせるよう、親は配慮することが大切です。どのようにすれば気持ちよく過ごせるか、ホームケアのポイントを教えてもらいました。
衣服はふだんと同じか、熱がるようであれば1枚少なめで良いでしょう。子どもが熱がる場合は涼しく、寒がる場合は温めることが原則です。
空調が利用できるときは27~28℃を保つようにし、直接冷気があたらないように気を配りましょう。また、ときどき空気の入れ替えをしましょう。
水分補給は欠かせません。飲ませるものは、乳児用イオン飲料のような経口補水液が原則。食欲も落ちているので少しずつこまめに与えましょう。少し冷やした方が子どもは飲みやすそうです。ただの水は避けるようにしましょう。
「発熱したら冷却シートをおでこに!」と思い込んでいるママもいるでしょう。でも残念ながら冷却シートに解熱効果はほとんどありません。子どもが嫌がるならば、使用する必要はありませんが、気持ち良さそうなら貼っても良いでしょう。
37.5℃以下で、機嫌が良いならまずシャワーで体を洗いましょう。
シャワーを浴びて汗などを洗い流すことでさっぱりし、本人も気持ちよくなります。ただし入浴は体力を消耗するため子どもの体力を奪います。また、汗をかくので脱水になってしまう危険もあるかもしれないため、長風呂には注意を。
子どもの熱が下がらないとき、どうしたらよいのかやきもきしてしまうママも多いことでしょう。
発熱は子どもが病原菌と果敢に戦っている証拠。発熱することによって子どもの免疫機能は活性化され、病原体は弱まります。つまり病気を治すうえで「発熱はよいこと」と考えるようにしましょう。
熱があるときは、服や部屋の温度で調整し、水分と栄養をこまめに与えて病気と闘う子どもを応援してあげてください。また、どうしてもつらそうなときは解熱剤でひと休みさせるのもよいでしょう。
「子どもの熱が下がらないと、親も不安で心細くなりがちです。病院で受診した後もなかなか熱が下がらない場合は、本人の状態をよく観察しながら、必要に応じて再診を受けましょう。熱が下がらないときだけでなく、子どもの病気についてなんでも相談できる小児科専門医の『かかりつけ』を作っておくと、ママの力強いサポーターになってくれると思いますよ」(鈴木先生)。
ママ、パパとかかりつけの先生が協力し、子どもの急なトラブルに備えたり、日々の体調管理に気を配ってあげることが大切ですよね。
鈴木博(小児科専門医)
埼玉医科大学卒業。大学病院NICU(新生児集中治療施設)に20年勤務の後、1998年に、東京都品川区に「鈴の木こどもクリニック」を開設。監修書に「赤ちゃんの病気・けが&トラブル救急箱」(学研)等。昭和大学医学部客員教授、小児科学会認定小児科専門医。「母と子どもの講演会」を毎年開催し、子育てのアドバイザーとしても活動。品川区議会議員としても子育て支援に活躍中。
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