ノーベル賞受賞者が続ける「早寝早起き朝ごはん」の習慣【山中伸弥・成田奈緒子】

ノーベル賞受賞者が続ける「早寝早起き朝ごはん」の習慣【山中伸弥・成田奈緒子】

KIDSNA編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の書籍。今回は、ノーベル賞科学者・山中伸弥教授が小児脳科学者・成田奈緒子医師と「子育て」について初めて語った『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(‎講談社) を一部抜粋・再構成してお届けします。

 
 

子どもは「早寝早起き朝ごはん」でうまくいく

山中:大人になっても人生をずっとしぶとくタフに生きてくためには、身体的な健康が必要だろうなと思う。人それぞれ整え方があるんだろうけど。

それでいうと、成田さんがずっと提唱している早寝早起き朝ごはんは重要な要素ですよ。僕なんか朝ごはん食べないと動けへんけどなあ。抜いちゃう人も多いんだろうね。

成田:山中君が実感してる「朝ごはんを食べないと動けへん」は、体というより脳のほうが先だと思います。体を動かすにも、脳から「山中さん、動け〜」って信号を送るので、頭がスッキリ元気になった状態にしなきゃ。

そのためには朝ごはんを食べなくてはいけません。「脳は食べ物で動く」ことを知ってほしい。
※写真はイメージ(iStock.com/taa22)
※写真はイメージ(iStock.com/taa22)
山中:朝は必ず食べてるよ。

成田:「ごく普通の暮らし」やね。特に子ども時代は、早寝早起き朝ごはんによって脳とこころとからだのバランスを維持できます。

なぜなら、脳は体の機能、情動、自律神経などの働きをつかさどる「古い脳」ができてから、記憶や思考、情感をつかさどる「新しい脳」が発達し始める。

最後に適切なコミュニケーションに欠かせない「前頭葉」が育つという順番があるんです。

山中:脳が育つのにも順番があるんや。

成田:ところが、夜更かししたりしてベースになる古い脳を育てないまま、塾とか習い事等々で新しい脳を育てるところに走っちゃうと、バランスが崩れてしまうの。

子どもは早寝早起きさせて、ちゃんと朝ごはんを食べさせていればすべてうまくいくんです。

山中:そこ、言い切るんですね。

成田:断言できます。それでみんな調子が良くなってるから。

コロナ禍になっても、私のところ(子育て科学アクシス)に来ている子どもたちは休校中でも早寝早起き朝ごはんを継続しています。そうすることで、コロナ疲れとか心身の不具合を解消できました。

つまり、エビデンスがいっぱいあるんです。その意味では、山中君も、早寝早起き朝ごはんが脳を育てたという大きなエビデンスですし。
※写真はイメージ(iStock.com/evgenyatamanenko)
※写真はイメージ(iStock.com/evgenyatamanenko)
山中:いや、僕で良ければエビデンスにしてください。小さいころから基本、早起きですね。今でも睡眠は非常に大切にしています。

よく「山中先生は忙しいだろうから、睡眠は3時間くらいですか?」って言われるのですが、そんなのホントあり得へんから。7時間か8時間、できるだけ眠るようにしています。

そうしないとつらいでしょう。つらいなあって思いながら仕事してても、効率は上がらない。それこそ不機嫌な顔になって周囲に迷惑をかけてしまう。

成田:すでに話しましたけど、私自身、早寝早起きが絶対にいいんだと実感しています。

長い間、自分の自律神経の数値をとり続けていますが、中学時代の具合の悪さが噓のように、今はすごく良くなってる。ひたすら生活リズムを整えてきたおかげです。それがあるから、すべて前向きに考えられるんだと思う。

親がしてあげられることは習慣づくり

山中:いつも何時に寝て、何時に起きてるの?

成田:9時ごろに寝て、4時ごろ起きるかな。

山中君、走るのも続けてるんだってね。
※写真はイメージ(iStock.com/nycshooter)
※写真はイメージ(iStock.com/nycshooter)
山中:走るのは、もうずっとやってるかな。特にこのコロナで、こころも体も整えるためにも、やっぱり走るってことは非常に大切にしています。ただ、マラソン大会がなかなかないから。この、目標のない日々っていうのが結構大変なんだけど。

成田:平均でどのくらい走るの?

山中:一日平均1時間は最低走ってるかな。距離でいうと十数キロ。

走ってるときは苦しいねん。二度とやるかと思うときもあるし(笑)。けどなあ。終わった後の達成感かなあ。あとは何かなあ。もう習慣化しています。

成田:それそれ。良い習慣。子育ても。親がしてあげられるのは、どれだけ良い習慣をつけてあげられるかですから。

山中:僕はいろいろ良い習慣をつけてもらったなあ。何?って言われても、すぐに出てこんけども。

成田:早寝早起き。他者への感謝。他人のせいにしない。自分で考える、とかもちゃう?

山中:そうやなあ。親につけてもらったその習慣を、自分の子どもたちにできたのかは、心配やなあ。

成田:大丈夫よ。山中君ひとりで子育てしてたんちゃうし。

山中:そうです、そうです。妻がやってくれました。それに母親や妻の両親やら、みんなが手を貸してくれました。図々しく「助けてくれ」って言えたから。

そしたら、成田さんご自身の子育てについても詳しく聞かせて。どんな子育てやったん?

成田:端的に言うと、私が母からしてもらって「あれは良かった、自分のプラスになった」と思えることを娘にも施す。

一方で、嫌だったことは絶対せずに、してほしかったことをしてあげる。そんなところでしょうか。

山中:おお、早寝早起きがその第一歩ですね。

成田:そう。まずそれは徹底しました。小児科医になって、脳科学も学んで早寝早起きが子どもの脳の発達に及ぼす大きな影響を知ったうえに、自分にもその実感がある。

運良く子どもを育てることになったので、これは実験しなきゃと思ったのね。
※写真はイメージ(iStock.com/paulaphoto)
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山中:わが子で実験したんだ。どのくらい寝させたの?

成田:小学生の子どもの睡眠時間は9〜10時間が望ましいんだけど、時間の長さもさることながら「眠っている時間帯」が重要なんです。

生後50日から保育園に預けてましたが、夜8時までに寝かせる。それだけを徹底してたら小学生の時には自律的に8時就寝、朝は5〜6時起床になってました。

山中:すごいな。で、君もその生活リズムに付き合うの?

成田:私はずっと夜8時か9時ごろに寝て、3時から4時に起きていました。私が付き合うんじゃなくて、娘も勝手に同じリズムになってきた感じ。

コロナ禍で大学が全面オンライン授業となり下宿に引きこもる生活になってからも、娘は朝5時起床。入浴・運動・大量の朝ごはん自炊・学習を午前中に済ませる生活で、心身共に快適に過ごしているようです。

でも、山中君も、小さいときから早寝早起きだったでしょ?

山中:そうね。両親は共働きでほぼ一緒に仕事に出ていくし、僕も中学と高校は1時間くらいの通学だったから、朝は6時に起きてたかな。夜更かしは苦手で、12時までには寝ていたように思います。

大学に入って柔道部から医学部ラグビー部に転部してからは、朝10時から練習だったから、7時くらいには起きて、下宿で一人暮らしだったけど、朝ごはんはしっかり食べてから
練習に行った。ラグビーが面白くて熱中してたから、学生のわりに夜も早く寝てたよね。

ラグビー漬けの学生時代を経て研究者へ

成田:山中君は大学時代、学校には来なかったけど割と規則正しく暮らしていたんだよね?

山中:ラグビーのおかげやね。当時は、ラグビー部OBの教授が4〜5人いらっしゃってね。それで僕も、まあこんなことやってても教授になれるんなら大丈夫やろって思ってしまった。

「山中は医学部じゃなくて、ラグビー部だ」ってよく言われてた。
※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)
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成田:読者の皆様、しばらく思い出話にお付き合いください(笑)。

山中:ほんま、それ。医学部は大倉山ってところにあったけど、ラグビーの練習はそれ以外の神戸大の本体というか六甲の中腹のグラウンドでやってました。

成田:医学部以外の学部は全部六甲やったもんね。

山中:僕はほとんど大倉山(医学部)には近付かず、ずっと六甲やった。ついでに言えば下宿も六甲にあってん。朝起きてランニングに行くのも六甲(笑)。

でも試験は通らなあかん。でも、ノートや資料がない。授業、受けてへんのやから。そこで「奈緒ちゃんノート」をコピーさせてもらったというわけですね。

成田:そっかあ。ラグビーの子たちはホント、学校に現れなかったよね。

山中:今ではあり得ないクラブですねえ。

成田:ひどい、ひどい。ひどいクラブにいたのに、ノーベル賞なんか取っちゃって。

山中:親のほうも、もう医学部入ったんだから医者にさえなればって感じだった。僕は僕でラグビーに前のめりになってたから、とにかく体を鍛えなきゃ、大きくしなきゃって、そればっかりだった。

成田:整形外科か何かの実習のときに「カラダ自慢」してたのを覚えてます。大胸筋がどうの、上腕二頭筋がどうのこうのとか、えらい熱心に筋肉談義してたのを覚えてる。
※写真はイメージ(iStock.com/interstid)
※写真はイメージ(iStock.com/interstid)
山中:僕、狭い下宿の部屋のど真ん中に、バイトして買ったトレーニング機器をボーンって置いてたの。ごはんもそこで食べるしかない、みたいな(笑)。

そうやって鍛えてたから、柔道始めたころは鶏ガラみたいな体だったのに、当時は今より筋肉だけで10キロくらい体重があった。今はもう、マラソンしてるからこんなガリガリだけど。

成田:なんかめっちゃ言ってたのは覚えてるんやけど。私、骨も覚えてへんけど、筋肉も覚えてへんかったから、ようわからへんかった。

山中:いや、ほかは勉強してへんねん。ラグビー部を卒業したときに、あ、違うか、大学を卒業してすぐや。

すぐに結婚したんだけど、結婚のお祝いに一緒にプレーした先輩とか、同級生とか、後輩がラグビーボールに寄せ書きをして、プレゼントしてくれた。そこに、半分くらいの人が「体だけじゃなくて頭も鍛えてください」と書いていました(笑)。

成田:皆さん、同じこと書かれてるのね。それだけ体を鍛えていた印象が強かったんだ……。

山中:勉強してへん印象も強かった(笑)。まあ、ラグビーボールは今でも僕の宝物ではあります。

成田:なんかめちゃくちゃ筋肉の話しとったなって感じするもん。自分の筋肉の話ね。

山中:整形外科でスポーツ医学を絶対やろうと思ってたんで、まさかそんな研究者になるなんて夢にも、いや夢くらいには思ってましたけど、基本は臨床やった。それこそオリンピックを目指すような選手の治療をやろうと考えてたんだけどね。
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山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る
山中伸弥(著)、成田奈緒子 (著)
990円(税込み)講談社

2022年01月27日

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