世界各国の「保育」を旅して分かった、今の時代だからこそ大切なこと

世界各国の「保育」を旅して分かった、今の時代だからこそ大切なこと

計600日間で25カ国、「世界の子育てと保育を知るため」の世界一周の旅を行った保育士の久保田修平さん。第4回は、さまざまな国の保育を見てきた経験から、現在、さまざまな国で大切にされている保育の新たなあり方についてご紹介いただきます。

久保田修平
これまで、私が世界を一周し、世界の子育てと保育を見てきた経験から、「自然が子どもの生きる力を育む」「子どもを信じて、ゆだねる勇気を持つ」「子どもの興味を止めない」といったさまざまな保育のあり方をお伝えしてきました。

今回は、それらを含め、世界各国の保育に共通して大切にされている「協同と共生」という考え方についてご紹介します。
提供:久保田修平さん
ペルーにて。(提供:久保田修平さん)

答えのない課題を乗り越えるために必要な「協同的な学び」

さまざまな国の教育方法の中で、いま「協同的な学び」の大切さが謳われています。

今までの一斉保育とは違い、協同する中でお互いの意見を出し合い、時には意見のぶつかり合いも経験し、それを乗り越え自分たちの未来を作っていく。この学び方は、これからさらに必要とされてくる「非認知能力」を豊かにすると考えられています。

またこの学びは、いわば「社会の中で生きるための学び」とも言えるでしょう。だからこそ、我々大人は子どもたちの意見や想いに共感し受け止め、ときには代弁しながら、みなで考えられる環境を整えていかなければならないのです。
 
ではなぜ今、「協同的な学び」が今求められているのでしょうか?

それは世界各地で起きている環境問題や貧困、格差など、さまざまな答えのない課題に対して個人ではなく集団で考え、工夫し協力して乗り越えていかなければならないからです。いまこの時代だからこそより、仲間と共に考え、お互いに協力・共感をしながら課題に取り組んでいく力が必要なのです。
※写真はイメージ(iStock.com/imtmphoto)
※写真はイメージ(iStock.com/imtmphoto)

対面コミュニケーションで養う、「協同」への喜び

協同することの大切さにおいて、僕はひとつの課題も感じています。それは対面コミュニケーションの減少です。

現在、僕たちの暮らしにはパソコンやスマートフォンが欠かせない存在になっています。

どこにいても欲しいものがすぐに購入できたり、友人と会わずとも気軽に会話ができたりするのは今ではもう当たり前。もちろん、いまのコロナ禍において仕方のない面もありますし、このような技術を使うからこそ改善されることや叶うこともあります。

しかし、対面で会話や関わりを持つことは、オンライン上でのそれとは違い、その場でしか味わえない喜びや、相手の感情や情緒を細かく読み取って共感する感情が芽生えてくるとも思っています。
※写真はイメージ(iStock.com/kali9)
※写真はイメージ(iStock.com/kali9)
便利な世の中になりさまざま情報が行き交う中、その陰影で見えづらくなってしまっている人の温かさや触れ合いといった「見えないもの」を今一度見える化していく必要があるのではないでしょうか?

そして、そこにこそ、協同する喜びや、分かち合いの精神がしっかりと存在しています。それをみんなで感じ、共生していくことで、きっと温かで豊かな社会になると信じています。

「競争」ではなく「共生」へ。

「協同的な学び」で大切なのは、「自分がいて、相手がいる。相手がいて、自分を知る」ということ。子どもたちは、他者との関りがあってこそ育つのです。

僕がここで伝えたいことは「個から群れへ。競争から共生へ」ということです。

旅に出る前に日本の保育は「個人が尊重されていない」「自主性が置き去りになっている」と感じていた僕は、この旅で「世界には個を大切に子育てしている場がたくさんある」と知り勇気をもらいました。

さらに個を大切にするだけではなく、その先の集団の中で過ごすことの大切さも、海外の保育では配慮されています。個の意見を尊重しつつも他者の意見を聞き、それも踏まえてどうしていくのかを考えさせようとしているように感じました。
提供:久保田修平さん
ドイツにて。(提供:久保田修平さん)
競い合いではなく、共存・共生する中でこそ個々の力が強まり、結びつく。この結びつきこそが、これからの時代に必要になってくる力です。

確かに競争の中で他者と比較し、自分の力が高められることもあります。競争することで文化が栄え、経済が発展してきたからこそ今の暮らしがあるのではないかと思っています。

共生を基礎としながら、その上に競争があるくらいの方がいいと思うのです。競争と共生とでは、その先の一歩にもたらすパワーは遥かに共生の方が大きく、柔軟なように思えます。

かかわり合いを持つことで起こる問題もありますが、集団の中にいることで今までになかったアイデアや工夫が生まれ、共感から喜びが生まれるでしょう。

この感覚は僕自身も旅のさまざまな場面で体感しました。この喜びは何にも代え難いものです。

共生から生まれる「多様性」

そして、共生することで生まれる大切なものは「多様性」です。

人にはさまざまな文化や言語があります。その一つひとつが良い、悪いではなく「Be(あるがまま・その人らしく)」なのだと思います。
※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)
※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)
その「Be」をどう受け止めるかも僕たち一人ひとりの在り方です。

僕らが旅していた頃から、欧州では移民問題が大きな課題になっています。ここ日本にも、移民つまり外国籍の方や海外にルーツを持つ人たちが増えており、日本で暮らし働いています。そして保育・教育現場でも、そんな子どもたちが増えてきています。

オランダでは、外国籍の子ども、とりわけ現地の言葉が話せない子どもたちに対して、就学前に言語や文化を学ぶ環境が整っていました。

日本も人口減少や少子高齢社会に伴い、生産力の減少から科学技術に頼ると同時に、外国籍の方々の力を必要としています。

だからこそ受け入れる側の僕たちが、多様で柔軟な価値観を持っていたいと強く思います。個から群れへ。競争から共生へ。対面コミュニケーションや多様性を大切にすることが、今の保育や子育てに重要なことだと日々感じています。
提供:久保田修平さん
ペルーにて。(提供:久保田修平さん)
最後にアフリカのことわざを紹介します。

「It takes a village to raise a child」(子どもをひとり育てるのに村一つ必要)
 
お母さんやお父さんだけでなく、親戚・友人・知人・近所の人々など、地域のさまざまな人が子どもの存在を意識し、かかわり合い、見守り、共に育てていくことが必要です。

みんなで育てていくことで、子育ての多くの課題はクリアできるでしょう。かかわり合いから生まれる喜びが、人生の喜びになると信じています。
※写真はイメージ(iStock.com/kali9)
※写真はイメージ(iStock.com/kali9)
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久保田修平

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保育士・共育者
東京都大田区出身。私立保育園に7年間勤務後、夫婦で600日間25カ国の世界一周に出かける。「世界の子育て、保育を知る旅」をテーマに掲げ、保育教育施設の視察・海外在住日本人保護者へのインタビューを実施。帰国後、保育現場に戻ると同時に、団体「aurora journey -保育の世界を旅してみよう-」を発足。「保育者の専門性が高まることで、社会がより良くなる」を理念に、講演会・研究会・動画配信を精力的に行なっている。2019年には待望の書籍を発売。昨年9月19日《新しいカタチの保育・子育てフェス》「第1回えどぴフォーラム」を開催。現在、3歳児担当。

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2021年07月08日

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