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2016年12月01日

喃語(なんご)は言葉じゃない?赤ちゃんが喋れるようになる過程とは

喃語(なんご)は言葉じゃない?赤ちゃんが喋れるようになる過程とは

生後7ヶ月あたりから「ぱぱぱぱぱ」「まんまんま」のように「喃語(なんご)」を喋り始める赤ん坊。いったい何を喋っているのでしょうか。また、本格的に言葉を発するまで、どう学んでいるのでしょうか。『赤ちゃんはコトバをどのように習得するか』(B・ド・ボワソン=バルディ/藤原書店)から、言葉を習得するまでの赤ちゃんの変化の秘密を探っていきます。

平原 学

喃語そのものは言葉ではない。話す理由は?

そもそも喃語とは、言葉なのでしょうか。私の娘も生後半年を過ぎたあたりから「マンマンマ」や「パパパパ」と話すようになり、「ママのことを呼んでいるみたいだぞ。お腹が減ったのかな」などと解釈していました。しかしご飯を食べた直後でも「マンマ」を言い続けるなど、言葉と話しているととらえるには疑問が多かったのも事実です。

“喃語は言語行為(ランガーシュ)そのものではない。しかし、コトバの発達の枠組みのひとつの言語行為である”

本書では、そう指摘しています。言葉を話すための発声器官は複雑で、生後間もない子どもは、声道すら未発達。音は出せても、とても言葉を口にするようにはできていないのです。

つまり喃語を喋るのは、言葉を話せるようになるための訓練。特に声道を最大限に収縮させるため、日本でもフランスでも共通で「バババ」や「マンマンマ」などの喃語を話すようになるそうです。

喃語は世界共通。とは言え、その発声のタイプは母国語によって多少違いも見られるとのこと。実際にフランスとアラブの8カ月の子どもでは、前者がマイルドな抑揚なのに対し、後者は発声の中に摩擦音やアクセントの強い音節などが確認できたと紹介されています。

喃語は、まだ言葉ではなくても、お母さん・お父さんが喋る行為の真似であることには違いないのです。

赤ちゃんはいつ喋るようになる?

では、本当に言葉として赤ちゃんが話すようになるのはいつからでしょうか。本書によると、一般的傾向としては、11カ月から14カ月目と説明されています。ただ、個人差が大きいとも。私が先日お会いしたとあるご夫婦の二人目のお子さんは、「1歳4カ月ですが、まだあまり話せません」とのことでした。

子ども自体の気質だけでなく、育つ文化や社会的環境、何番目の子どもかという点などにおいても影響されることにより、どうしても差は出てきてしまいます。

それに、早く言葉が喋れることが頭脳の良し悪しを決定するものでもないと本書は解きます。アインシュタインも5歳になるまで喋ることができなかったそう。発達において重要なのは、喋った単語の数ではなく、理解度の方なのです。

言葉を理解するのに必要なのは、大人が喋っている言葉を聴くことです。なにより赤ちゃんが高い関心を示すのは、「母親語(マザリーズ)」だそう。これは、大人が揺りかごの中の赤ちゃんに話しかける、やさしい言葉や擬音語などを指します。

最近ではiPhoneやタブレットなどを与えて子どもを放っておいてしまう親も多いと言います。アプリの中には、言葉を発して学習の助けになるものもあります。しかし、ただひとりで遊ばせておくより、親が話しかけてあげながら一緒に操作するなど、アプリだけに依存させない子育てがたいせつなのです。

言葉を獲得するまでの道すじは千差万別

最初の言葉を話すようになり、会話ができるようになるのは2歳ごろ。それまでに子どもが言葉を身につけるスタイルを、本書では大きく二つ紹介しています。

一つは「指示的(レフェランシエル)」や「分析的(アナリティック)」と呼ばれるもの。耳で聞いた話を単語ごとに区切って、人や動物やモノの名前など、名詞を多く話すスタイルです。

もう一つが、「全体的(ホーリスティック)」や「表現的」と呼ばれるスタイル。文に似た長い音の連鎖を喋るタイプで、前者に比べて最初の語彙に名詞が少なく、動詞・形容詞といった述語や、決まり文句などをより多く喋るのだそう。

著者らが観察を行ったケースを紹介します。「指示的」スタイルの代表として、10カ月から14カ月半までの成長を追ったフランス人の女の子・エミリー。彼女はもっとも語彙の獲得が早く、研究の開始当初は30分間の録音中に25語もの言葉を話したそう。

一方、生後18カ月で数語しか知らないと判定されていた男の子・シモンは、「全体的」代表。語彙は少なくても「文」を話して大人との会話を楽しんでいたそうで、18カ月~20カ月までの観察の間に行った10回の録音中、2,554件もの発声を採取できたとのこと。録音中は、ほとんど休みなく話し続けたそうです。

親の教え方によっても言葉の覚え方、スピードには差があるでしょう。しかしどんな子どもも、親の子育てによって、やがては言葉を習得していくのです。

終わりに

赤ちゃんが言葉を聞き取る力は、母親の胎内にいるころからすでに備わっていることも本書では紹介されています。複雑な過程を経て、言葉を学んでいく赤ちゃん。以下は、訳者・加藤晴久氏の言葉です。

“コドモが成長して豊かな言語生活を送れるようになるかどうか、いや、言語生活だけでない、精神的に豊かな、幸せな人生を送れるようになるかどうか、胎内時からの母親との濃(こま)やかなコミュニケーションにかかっている。”

言葉の習得の研究について、まだまだ解明されていない点も数多くあるそう。ただ、少なくとも子どもは、ひとりでに喋れるようになるわけではありません。なかなか子どもが喋らなくてじれったく思うご両親も、根気強く赤ちゃんとの会話を楽しみましょう。

ライター:平原 学

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小説家、コラムニスト。1児の父。
第3回ツイッター小説大賞佳作受賞。
著書:単行本『ゴオルデンフィッシュ』(文芸社)

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