「老後資金が貯まらない」のは脳のせい…スタンフォード大の研究でわかった"貯金ができる"意外な解決法
自分の老け顔がもたらす心理学的な効果
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老後のお金の不安を打ち消すには、どうすればいいのか。スタンフォード大学心理学部のローラ・L・カーステンセン教授は「お金を貯められないのは、脳に原因がある。貯蓄を増やすために仕組みを取り入れることが必要だ。一方で、ある実験結果は興味深いものだった」という――。(第2回) ※本稿は、ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
貯蓄ができないのは脳のせい
もし借金を抱えていたり、わずかな貯金をつくれていなかったりで、老後が心配だとしても、それはあなただけのせいではない。これも脳のせいだ。認知科学の成果ははっきりしている。将来に向けて貯蓄できない理由は、実際に歳をとった自分を想像するのが難しいからだ。たとえ貯蓄していたとしても、たいてい金額が不足している。
一般的に、将来の自分を現在の自分より禁欲的で、少ないお金で生きられるとイメージするからだ。夫婦は、配偶者が亡くなったあとに必要なお金をかなり低く見積もりがちだ。生き残ったほうはあまりぜいたくをしないだろう、と考えてしまう(パートナーがいないとすっかり落ち込んでしまうと考えるらしい)。これまでの半分の金額しかいらないと思いがちだが、たとえ1人で暮らし、1人で車に乗るとしても、住宅ローンや車のローンは半額にならない。
若いころにお金に苦労していた人でさえ、引退後の収入はさらに低いのに、それで十分に心地よく過ごせると考えてしまう。結局のところ、お年寄りにそんなにお金がいるだろうか、と思ってしまう。
老後に必要な最低限の収入を計算してみてほしいと尋ねると、たいてい、かなりつつましい金額が返ってくる。本当に80歳になってその金額で生きていけるのかと聞くと、なんとかやりくりするよ、という答えが返ってくる。では、その金額でいま生活できるのか、と確認すると、「とんでもない」と言う。論理的には意味が通っていない。でも、認識のうえでは、私たちはいつもこうしているのだ。

























