日本の歴史ある寺社が中国人の「BBQ会場」にされている…跡継ぎなき宗教法人を狙う外国人の「本当の目的」
ビザを取得でき、税制優遇まで受けられる
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後継者不足に悩む日本の寺社やその宗教法人がいま、中国人の売買の対象とされている。彼らの狙いは一体何なのか。日本経済新聞取材班がまとめた『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)の一節を紹介する――。 ※登場する取材協力者の肩書きや年齢は取材当時のものです。
中国人の「別荘」と化した兵庫の寺
「3年ほど前に中国人がこの寺を買ってからは、様子ががらりと変わってしまった」
兵庫県・中西部の山間部に位置する、人口3万人ほどの宍粟しそう市。記者が同市内のとある寺を訪れると、近くに住む70代のある男性はこう言って嘆いた。男性は以前、寺の熱心な門徒であった。
だが2017年、住職が亡くなると、状況が一変した。中国人が寺を買い、「1年に1~2回、ワゴン車で遊びに来ては境内でバーベキューをし、まるで別荘のように使ってしまっている」と言い、男性は深いため息をつく。
男性は、記者の取材意図をすぐに汲み取ると、自らスクラップしてきたという資料を示しながら、寺の歴史から丁寧に説明してくれた。
名前は伏せるが、この寺は、室町時代の1536年に設立された道場が前身。本尊を安置し、地域の信者たちが念仏を唱える場として、長年親しまれてきたという。敷地や本尊、仏具などは信者たちが共同で所有し、維持にかかる費用も皆で工面し、負担してきた。
歴史ある寺社が中国人の「別荘」に
現在の本堂は、播磨国宍粟郡を治めていた譜代大名・安志あんじ藩の御殿を1909年に移築・改造したもの。1910年には近くの神社から薬師堂も移築し、さらに鐘楼は1912年に新築された。「本堂も、薬師堂も、長い歴史がある由緒正しいものだ」と語り、男性は一段と言葉に力を込めた。
約500年にもわたって多くの門徒や地域の人々に親しまれてきた寺が、見知らぬ中国人に、まるで「別荘」であるかのように扱われる状況に、男性は怒りを隠せずにいた。
男性だけではない。近隣住民にも同じ話題を向けたが、皆が似たような状況を語り、寺を取得した中国人とは、「直接会ったことがない」と、口をそろえた。

























