「平素より格別なご愛顧を…」ド定型文が見違える…"品のある人"が繰り出す人の心をほどく大和言葉の実例4
「ご配慮下さりありがとうございます」では不十分…絶妙言い換えフレーズ
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同じ内容を伝えても言い方でその印象は大きく変わる。人の心に残る話し方・書き方とはどんなものか。書道家の詠月さんは「言葉が美しく響く人は、言葉の順番を意識したり、音読みの漢語ではなく訓読みの大和言葉でゆったりと話したりする習慣がある」という――。 ※本稿は、詠月『「品のいい人」が大切にしている「和」の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
言葉の順番を意識する
「同じことを言っているのに、なぜあの人の言葉はこんなにも美しく響くのだろう」と感じたことはありませんか。
その違いは、言葉の内容そのものよりも実は「順番」にあるのかもしれません。
言葉の並び方には、人柄や品格までもが映し出されます。
日本語は、世界でも稀に見るほど、言葉の順番に心が宿る言語です。
たとえば「ありがとう」ひとつをとっても、「本日はお越しいただき、ありがとうございます」と言うのか、「ありがとうございます、本日はお越しいただいて」と言うのかで、受ける印象はずいぶん違います。
前置きに敬意を込め、感謝を結びに置く。それは、相手を思いやる日本人特有の奥ゆかしさの表れなのです。
日本語は、終わりの言葉に気持ちをこめることができます。
「~かもしれません」「~していただけるとうれしいです」「~させていただきます」など、丁寧さや控えめな気持ちを最後に添えることで、言葉に丸みが生まれます。
手紙やメールでも同じようなことが言えます。
まず時候の挨拶、次に近況、そして本題へ、感謝をこめた結びで終えるという順序の流れを守ることで、言葉に“調べ”が生まれます。
この最初と最後を丁寧に整えることが言葉全体の印象を決定づけるのです。
急ぐあまり、本題だけを簡潔に伝えると、どこか機械的でそっけない印象になるものです。言葉の順番を整えることは、相手との関係にひとつ“温度”を加えることに似ています。また、年齢を重ねるごとに大切になるのが「聞き方」の順です。
相手の話を最後まで聞く。 |
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その言葉の順番が、人間関係を円滑にしてくれます。話す内容ももちろんですが、言葉を「どのような順に届けるか」によって、信頼や安心感が育まれるのです。
言葉の順番は、ただの並びではないのです。それは相手を思いやる「心の順番」、美しく生きるための作法でもあります。まず、言葉の順を意識する。
あなたの“品”は、きっとそこから育っていくのです。