大学生のレポートの出典に「詩賛新聞」?…知らないと恥をかく「AIはなんでも教えてくれる」という幻想
「存在しない新聞」に疑問を抱かないのは知識不足の証拠
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AI技術を使いこなせる人と、そうでない人の違いは何か。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「高学歴な弁護士でも生成AIに騙され、信用を失う人が出てきている。平気でウソをつくAIを使いこなすには、人間側の試行錯誤とチェック作業が不可欠だ」という――。
「無批判にAIを使う人」を炙り出す仕掛け
ハルシネーションとは、生成AIがまるで幻(ハルシネーション)を見ているように、事実に基づかない情報を生成してしまう現象を指す。生成AIの出力結果を必ず人の目でチェックしなければならないのは、誤りが多く含まれることが分かっているためだ。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の「総合政策学」の授業では、ハルシネーションについて説明した上でPDF資料を配布。資料には、授業と無関係な福澤諭吉の著書『文明論之概略』に関する要約文や指示文が、人には見えずAIだけに見える形で仕込まれていた。
そのため、資料をAIに入力して要約や感想を生成すると、授業では扱っていない『文明論之概略』についてのコメントを生成するため、生成AIを使った学生が一目で分かる仕組みとなっていた。気づかずにそのまま提出した学生は評価対象外にしたという。
生成AI製レポートを提出する学生たち
一流大学であるSFCの学生がそのようなことをしていたこと、AI時代ならではのプロンプトの仕掛けで話題となったが、これはSFCだけの話ではない。多くの大学で、類似のことが起きているのだ。
大学こそ違っても、多くの大学教員が「生成AIで書かせたレポートを出してくる学生は多い」と言う。ある教員は、「『AI使用の疑いあり』として毎回減点している。『抗議があれば受け付ける』としているが、抗議されたことはほとんどない」と話す。
また別の教員は、「レポートを見る時にはAIチェッカーは必須。自分が採点で使っていることを明かした上で、生成AIの文章の特徴、どういうレポートだと生成AI製と判定されるのかまですべて事前に指導している。そこまでやると(生成AI製は)減るけれど、それでもやはり出してくる学生はいる」。