「やる気がないから」とは限らない…困難な仕事にチャレンジすることを嫌がる部下が"密かに抱えている不安"

「やる気がないから」とは限らない…困難な仕事にチャレンジすることを嫌がる部下が"密かに抱えている不安"

とあるプロジェクトに配属された若手2人の両極端な反応

困難な仕事を任されることを嫌がる部下にはどんな理由があるのか。心理学者の榎本博明さんは「成功追求動機と失敗回避動機のどちらが強いかでモチベーションのあり方がまったく違ってくる。後者の場合には、失敗や困難にもポジティブな意味づけができるようにすることが大切となる」という――。 ※本稿は、榎本博明『なぜあの人は同じミスを何度もするのか』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

与えられた仕事に「充実感を得る人」と「不満な人」

自分に与えられた仕事に対する不満を嘆く人がいる一方で、自分の仕事から大きな充実感を得ている人もいる。前者を不運な人物、後者を幸運な人物と思うかもしれない。そして、前者は後者を羨むかもしれない。

でも、前者が後者の仕事に携わることができたら、充実した仕事生活になるかというと、必ずしもそうではない。そこでもまた仕事に対する不満を口にすることになったりする。

このようなケースを理解するために考慮しなければならないのは、客観的世界でなく主観的世界、いわば事実の世界でなく意味の世界である。

従業員の満足度・不満度から、その仕事や職場の健全性が判断されることがある。たとえば、多くの従業員が不満をもつ職場であれば、その職場には何か重大な問題があると考えるのが妥当だろう。だが、個々の従業員の満足度・不満度を過信するのは危険である。

なぜなら私たちは事実の世界ではなく意味の世界を生きており、意味の世界は人によってさまざまに異なるからだ。

事実の世界と意味の世界を区別するのは、私が提唱してきた自己物語の心理学の基本だが、ここでもこの原則を踏まえて考える必要がある。

同じプロジェクトに配属された「若手2人」の両極端な反応

ある会社の管理職と話した際に、本人のためを思って人事配置を決めているのだが、それがなぜか裏目に出て、なんとも後味が悪いことがあって困るという話が出た。

「昨年は、大きなプロジェクトに若手を登用したら、モチベーションが高まって、意欲的に仕事に取り組むようになり、毎日イキイキしてるので、やっぱりやりがいを感じると人は変わるものなんだなあって実感したんです」

――そうですね。自分の仕事にやりがいを感じるというのは、とても大事なことですよね。

「そうですよね。それで、今年も別の大きなプロジェクトがあって、今年配属されてきた若手を登用したんです。ところが、今回は失敗でした」

――失敗? どういうことでしょうか?

「私は、やりがいを感じてくれると思って重要なプロジェクトのメンバーに推薦したのに、どうも周囲に不満をこぼしているようなんです」

――どういう不満でしょうか?

「それがよくわからないんです。ただ、こんな忙しくなるのは困る、っていうようなことを言ってるらしいんですけど……」

――そうですか。人によって仕事に求めるものが違いますからね。そこが難しいところですよね。

そこで、モチベーション要因や意味づけの問題について解説することにした。概要は以下の通りである。

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2025.08.29

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