「高級マンションに欠陥発覚」そのとき住民にできることは何か…49戸の弱小管理組合が大手相手にとった行動
1階にカビが大量発生、耐震性の問題に加え違法建築が見つかる…
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東京都世田谷区にある高級マンションで欠陥と違法建築が発覚。6月、管理組合と一部区分所有者が建て替え義務の確認の訴えを起こした。管理組合とデベロッパーの攻防から学び取れる教訓とは――。
行政お墨付きの優良マンションのはずが…
あなたがもし、いま保有しているマンション、住んでいるマンションに、「重大な欠陥、違法建築が見つかりました」と、いきなり言われたらどうするだろうか?
大都市圏を中心として、中古物件も含めたマンション価格が高騰している。ビジネスパーソンの多くにとって、都心のマンションはもはや「高嶺の花」。ところが、恐ろしいことに高額の住宅ローンを組み、ようやく手に入れたマンションが欠陥だらけの「コンクリートの塊」である可能性を否定できないのだ。
というのも、大手デベロッパーの“自信作”のマンションでさえ、重大な欠陥と違法建築があったとわかり、いま大きな関心を集めているからだ。どのマンションでも、同じような欠陥や違法建築が潜んでいるかもしれない。マンション住民は、まさに「自分ゴト」として考えるべき問題なのである。
件のマンションとは、東京都世田谷区にある「東急ドエル・アルス世田谷フロレスタ」。施工は東急建設、売主は東急不動産、分譲後の管理は東急コミュニティー(以下、TC)が担当したという、東急グループが総力を挙げてつくったマンションである。
竣工は1998年で49戸、総床面積は約4100平方メートル。閑静な住宅街に囲まれ、東急世田谷線若林駅から徒歩数分、幹線道路の環状7号線沿線という抜群の立地条件で、人気も高かった。「優良建築物等整備事業」の対象として、国や東京都、世田谷区から、総額約1億5000万円もの補助金まで交付されている。いわば行政も“お墨付き”を与えたはずの高級マンションだったのだ。
しかし、いまや住民は全員立ち退き、“廃墟同然”となっている。2018年以降、耐震性などの深刻な欠陥、「日影規制違反」といった違法建築が、相次いで見つかったからだ。
水がたまった地下、錆びついた鉄筋
マンションコンサルタントの井田健氏の事務所が、建物調査時に撮影した写真をご覧いただきたい。例えば、水道管やガス管などを収めるマンションの「地下ピット」は、床に一面、水がたまっていた。排水機能不全だったからだ。
建物を支える鉄筋コンクリートの梁は、配管などを通すために後から穴を貫通させる「コア抜き」をしたが、鉄筋を切断し、断面をむき出しにしたまま放置したので錆びつき、強度を大きく損ねてしまった。
それだけではない。建物を再調査していた2022年、重大な違法建築が発覚した。通常であれば、図面と建築物の方角は一致しているはず。ところが、同マンションは、図面の北の方角が、実際の方角よりも西に約14度もズレていた。その結果、建築基準法の日影規制や「高度斜線規制」をオーバーし、マンションや周辺の住民の日照権などを侵害している状態にあるのだ。