無数の通勤客が"吐き捨てる"ものを処理する駅員の胸の内…全ての働く人が再考すべき「成功する仕事」の本質

無数の通勤客が"吐き捨てる"ものを処理する駅員の胸の内…全ての働く人が再考すべき「成功する仕事」の本質

就いた仕事や勤務先でどのような心構えで臨むのが正しいのか。明治大学文学部教授の齋藤孝さんは「僕は仕事に対する価値観として、収入がいいとか社会的地位が高いとか、そういったこととは別の尺度があると考えている」という――。 ※本稿は、齋藤孝『悩み続けてきた「僕」から君たちへ 社会人1年生に伝えたい成長と成功の本質』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

社会人1年生もベテランも再考すべき「利他」について

「人のために動く」というのは、誰にでもできることではない。だからこそ、お金や自己満足ではなく社会への貢献を目標に働くと、自分自身の能力は飛躍的に高まる――。

僕は今でも常々思うのですが、「仕事」というものは思うほど簡単じゃない。60代半ばという年齢になって、ますますそう痛感しています。

たとえば、酔っ払いが吐いたせいで駅のホームが汚れていることがありますよね。僕らは、みんな「汚いなあ」と通り過ぎるだけですが、駅員さんは片づけなければならない。汚いから近寄りたくない、というわけにはいきません。

あるいは、電車が遅延した場合、自分のせいでないにもかかわらず、問い詰めてくるお客さんに対して謝らなければならない。こういうシーンを思い浮かべるだけでも、僕は仕事というものは甘くないと、駅員さんたちに頭を下げたくなってしまうのです。

思うに駅員さんたちは、おそらく電車の仕事が好きで就職したのであって、清掃をしたくて、客に頭を下げたくて、入社したわけではありませんよね。不測の事態に懸命に対処しているのに、文句を言われたり怒鳴られたり……。とくに新人の場合は、「これも仕事のうちだ」と素直に受け入れることは、なかなか難しいでしょう。

でも、みなさん、それも駅員の仕事のひとつだと受け止めて、職務に励んでいる。本来の仕事とかけ離れているように見えることも、粛々とこなしている。

もちろん、昨今問題になっている乗客の暴言や暴力は見過ごすわけにはいきませんが、どんな状況にも全力で対応する駅員さんの姿を見るたびに、仕事というのは「誰でもやればできる」というような簡単なものではない、と思うわけです。

よく「自分もやればできる」と言う人がいますよね。たしかに、想定外の掃除にしろ、理不尽な謝罪にしろ、行為そのものはやればできるでしょう。

でも、それを責任感を持って遂行できるかと言われたら、おそらくできない。だとしたら、それを「自分もやればできる」とは言えません。「どんな仕事でもやればできる」と豪語する人は仕事というものをなめてかかっていると思うのです。

そうしたことを、われながら痛感した出来事があります。さかのぼること50年以上前、小学校時代の児童会会長選挙のときでした。

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2025.05.02

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