中居正広氏をかばい、女性アナを置き去りに…フジテレビが「視聴率をとれる番組」のために支払った大きな代償
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元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる一連の問題で、3月31日、フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会が調査報告書を公表した。中居氏の性加害を認定。複数のハラスメント事案を明らかにした。フジテレビはこれからどうなるのか。元テレビ東京社員で、桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「報告書では中居氏の性暴力を認定した。踏み込んだ内容であると同時に、テレビの構造的な欠陥があぶり出された」という――。
報告書“公表前”の茶番
元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルに端を発したフジテレビの問題で、事実上の最高権力者である日枝久取締役相談役の退任が3月27日に発表された。同時に、フジでは辞意を表明していた遠藤龍之介副会長をはじめ16人が、フジ・メディア・ホールディングス(以下、FMH)では10人の取締役が退任した。
一連の問題を受け、人事を刷新する狙いがあるとみられるが、一部では日枝氏がフジサンケイグループ代表も辞任したことを評価する報道もあった。しかし、私は女性取締役を増やしたことや、取締役の全体数を減らし若返り化を図ったことに対しては一定の評価をするものの、この日枝氏の「退任劇」に関してはまったく評価していない。「お粗末」としかいいようがない「茶番」と感じている。それはなぜか。
それは、第三者委員会の調査結果を待たずにおこなわれたこの人事に、意図的なものを感じるからである。
まず、なぜ「このタイミングなのか」。フジのどんな対応が問題で、その対応を引き起こした責任はどこにあったのか、それらが明らかになっていないのに、あたかも「幕引き」をして問題を鎮火させようとするかのような行為は、不誠実であり、あまりにも世間や国民をバカにしていると言わざるを得ない。このタイミングでの退任は、経営責任を不問にしかねない。
「ジャニーズ性加害問題」と地続き
フジはまた、ここ数年起こっているテレビ局の不適切な対応という同じ轍を踏もうとしている。今回のフジの問題は、かつての「ジャニーズ性加害問題」やドラマ「セクシー田中さん」問題などと「地続き」である。それらのどれもが、最後までちゃんと検証されることなく、中途半端に論じられ、何となくうやむやにされて終わってしまった。世論が興味を失い、忘れ去られることで、問題の本質は置き去りにされている。それを今回も繰り返しているように私には思えてならない。
フジのスポンサー離れ、CM離れを考えれば、企業としては早急な刷新を打ち出したいところだろう。しかし、これほどまでにフジ内で実力を誇り、独裁政権を敷いていた人物が去るのに、「その功罪は何だったのか」という総括もされないまま、うやむやにされていいものか。「去る者は語らず」というのであれば、それはあまりにも奇麗事であり、傍観主義としか言えない。
繰り返して断言する。「ジャニーズ性加害問題と今回のフジの問題は地続き」で、あのときにちゃんとテレビ業界全体が総括できなかった、向き合わなかったから、今回のフジの問題が起きたのだ。