だから日本のコンビニは「世界一のサービス品質」になれた…セブンが海外大手から支持を得たこれだけの理由
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米国発のセブンが日本に定着した理由
セブン&アイ・ホールディングスに対する、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案をきっかけに日本のコンビニ事業への注目が高まっている。
日本のコンビニの基本となる仕組みはセブン‐イレブン(以下セブン)が先駆的に開発し、他社が追随する形で普及し定着した。世界が高く評価するセブンの仕組みにはどのような特徴があるのか。
コンビニが現在のように普及した要因はいくつかある。第一に、セブンが1号店を開店した1974年当時、「夜間」に大きな市場が眠っていた。その頃は大型スーパーが成長期で、各地で新規出店が相次いだ。これに対して中小小売店は脅威を感じ、時に激しい反対運動を起こしていた。
そんな流れの中、大型店の出店を規制する大規模小売店舗法が施行され、夜間の営業は厳しく制限された。当時の生活者には夜に買い物ができる場所がなく、仕事帰りに食料品を買おうにも、昼間に買い忘れた調味料や歯ブラシ1本を手に入れようにも、発熱時の冷却シートを購入しようにも開いている店がなかったのである。そこで夜間市場を開拓したのがセブンだった。
当時は大型店だけでなく、多くの中小小売店も夜は店を閉めていた。酒屋、米屋といった特定の商品分野しか扱わない業種店が多く、生活全般をサポートする品揃えで営業する店はほとんどなかった。そこに中小小売店が成長できる余地があることを見抜いたのがセブンの実質上の創業者である鈴木敏文氏だ。業種店からコンビニへの転換が進んだこと、これがコンビニ普及の第二の要因となった。
当時、鈴木氏は大手スーパーのイトーヨーカ堂で出店に携わっており、大型店に対し反発を強める中小小売店の動きに違和感を持っていた。生活者の欲望はたえず変化する。その変化に対応する品揃えを実現し、生産性を高めれば中小小売店は大型店と共存共栄できるはずだ――彼は米国への研修旅行で、当時約4000店を展開していたセブンに出合い、そこに自分が探し求めていた「店舗とそれを支える仕組み」があると考えた。
大型店がナショナルブランドを低価格で提供することで消費者を引きつけたのに対し、セブンは定価でも購入したいと思わせる商品で品揃えを構成したところに鈴木氏の慧眼が生きている。「価格訴求」ではなく「価値訴求」。これがセブンが大型店との競争を回避し成長を果たせた理由であり、コンビニが日本で普及した第三の要因でもある。