東大合格には鉛筆よりボールペン?カリス 東大AI博士の「天才論」

東大合格には鉛筆よりボールペン?カリス 東大AI博士の「天才論」

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カリス東大AI博士

カリス東大AI博士

16歳で東京大学に合格/カリスト株式会社 CEO

東大AI博士・カリス:1993年、韓国生まれ。16歳で東京大学に合格。日本政府から天才認定を受け、学生としては初めて研究業績だけで永住権を取得。博士(情報理工学/東京大学)。⽇本トップレベルの医療AI研究者であり、「みんな健康かつ笑顔で暮らせる社会」を実現すべく、医用画像データプラットフォームを手掛けるカリスト株式会社を創業。YouTubeチャンネル『カリス 東大AI博士』にて、科学的勉強法・科学的思考法・AIなどについて配信中。

韓国で生まれ育ち、16歳にしてたった半年の受験勉強で東大に合格した「天才」をご存じでしょうか? 今回はそんな非凡な経験をお持ちのカリス 東大AI博士さんにお話を伺いました。後編では、勉強に最適な環境やスケジュール、そして「天才とは何か」を教えていただきました。

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カリス 東大AI博士:1993年、韓国生まれ。16歳で東京大学に合格。日本政府から天才認定を受け、学生としては初めて研究業績だけで永住権を取得。博士(情報理工学/東京大学)。⽇本トップレベルの医療AI研究者であり、「みんな健康かつ笑顔で暮らせる社会」を実現すべく、医用画像データプラットフォームを手がけるカリスト株式会社を創業。YouTubeチャンネル『カリス 東大AI博士』にて、科学的勉強法・科学的思考法・AIなどについて配信中。

前編はこちらから

半年で東大合格を実現した「質の高い勉強法」って?カリス 東大AI博士の勉強哲学

動画版はこちらから

勉強に鉛筆NGの理由

――実際にカリスさんが使っていた教材についてお聞きしたいです。 基本的に受験生が使う定番のものだと思いますが、この参考書をどのように勉強していったのでしょう?

最初に過去問を見ているので、大事そうなものだけ勉強しながら頭の中でマップみたいものを作りました。こういった概念があって、これはここに繋がって、これはあれで、みたいな。たとえば「化学」の化学式であれば、ベンゼンがあるなら、ベンゼンから作れる数十個ぐらいの化合物がありますよね。そういうのを延々と思い浮かべながら勉強していました。だから、応用することを意識しながら勉強していたという感じですね。

ベンゼンの反応について勉強したのであれば、覚えたことを全部思い出すことで記憶を定着させます。結局人間って苦労して挑戦した時にしか覚えられないので、性質や反応例、用途を自分の中で全部思い出して、ベンゼンの性質に関して思い出せるものを全部書く。反応例に関しても、思い出せるものを全部書きました。

もちろん最初は全部思い出せるわけもないから、できない。はじめは2割、3割だと思うけど、やっていくうちに完全にパターン化されます。ベンゼンの反応だけでも数十パターンもあると思いますが、それは全部完璧に思い出せるようになる。そこまでの状態に持っていけば、過去問も実際の本番もそうですけれども、1秒あれば、勝手にペンが動くようになるんじゃないかなって思います。

――自作のテキストを作るようなことですよね。参考書の書き写しじゃなくて、自分の言葉で書くのですか?

はい、自分の言葉で書くのが大事だと思います。自分が理解できてさえいればいいので殴り書きでいいですし、完全な文章で書かなくていいです。きれいに書こうとするのは時間の無駄に過ぎないので、殴り書きでも、箇条書きでも、メモリーツリーでも、 自分の書きたいように書くので構いません。概念を説明するための言葉も、別にテキスト通りの言葉じゃなくても、自分なりに理解している内容を書けばいいんじゃないかなと思います。 その時は、活用を意識するのが大事です。

ーーちなみに受験時に筆記用具はどういうものを使ってたんですか?

今も使ってるんですけど、一番のおすすめはラミー2000という4色ボールペンです。ボールペンを回転させると重力によって位置が変わって、内部の極小分銅が特定のカラー芯(黒・赤・緑・青)を押し出すようにできています。その度に音が出るし、書き心地もいいんで、僕はまあ好きですね。

――ボールペンの方がいいですか?

鉛筆とかシャーペンはやめた方がいいです。なんでかというと、鉛筆とかシャーペンではミスが許されてしまうからです。ボールペンとか万年筆は消せないので、ミスが許されないからより集中力が上がる。厳密にはホワイトとか使うと消せるけど、すごくめんどくさい。だから、あらゆることを本番さながらで取り組むことができるので、僕はボールペンの方がいいんじゃないかなと思います。

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語学習得にはAIを活用すべし

――先ほども3か国語のトリリンガルだというお話がありましたが、おすすめの語学勉強法などがあれば教えてください。

言語は、1000時間もあればネイティブになれるんじゃないかなと僕は思ってますね。だって日本人で日本語ができない人は、基本的にはいないじゃないですか。だから言葉を覚える難易度はそもそも低いです。

これももう受験とまったく同じですが、本当に必要なものにだけに絞って、そこだけ勉強すればいいと思います。 言語処理とは、音声だったり、文法だったり、意味だったり、世界知識だったり、そういったルールを用いて脳内で行う瞬時かつ複雑な認知的処理なんです。そのために必要な要素だけを勉強していけばいいでしょう。

だから、まずはその型を覚えて、型を破っていけばいい。言語の一番の型となるものが、発声・発音・文法・ 単語なので、まずはそれをある程度覚えます。その後はAIを使って、英会話練習や苦手問題作成を行うなどで、自分のレベルを上げたり、自分の弱点を補完したり、自分の目的に沿って学習したりすれば、語学はすぐ上達します。

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※写真はイメージ(gettyimages/Zephyr18)

――「言語力に直結する『自動化』と『気付き』の能力を得るといい」ということをカリスさんが以前おっしゃっていました、この点について詳しくお聞きしてもいいですか?

学習したい言語の型を覚えるのは大事ですが、じゃあなんで型を覚えるのかといえば、この2つの能力を得るためです。

自動化とは、深く考えなくても文脈の中から正確な文章を自動完成する能力を指します。ネイティブは、会話を一部聞くだけで「どうせこれを言ってんでしょ」と推測できたり、ちょっと間違えたことを言われても脳内で正しく変換出来たりするじゃないですか。単語も何を喋ればいいか、いちいち考えなくても自然に出てくる。僕も特に何も考えずにいま惰性で喋ってるわけですよ。こういうのが自動化です。

でも、非ネイティブはいちいち考えて、 「AだからB」で、「BだからC」で、「CだからD」だからこれで完全な文章、と考えてしまう。要は、先ほど話したシステム1と2の話で言えば、小脳を使った惰性的に処理ができないんですね。だから無限に時間がかかってしまうし、早口で話せない。

気付きとは、間違った言葉を間違っていると認識する能力を指します。気付きの能力がないと、いつまで経っても間違った言葉を言い続けてしまいますし、間違いってもいないにしても、不自然だったり失礼だったりセンスのない言葉を言うようになるので、自動化と気付きの能力を得るのはすごい大事だと思ってますね。

僕は間違った日本語を言っても、自分で「これは間違ってるから、本当はこういう言えばよかった」と分かるのでちゃんと日本語が喋れますが、 そういう能力がない普通の外国人だと10年、20年、30年経っても、結局ずっと間違った日本語を言い続けます。

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カリスさん

――気付きの能力を上げるためにはどうしたらいいでしょうか?

それもやっぱり型を覚えることと型を破ることが大事じゃないかなと思いますね。まずは型を覚えて、AIと会話や表現、発音、文法の練習をずっと重ねる。「自分が間違えたら教えてね」と言えばすごく丁寧にAIが教えてくれるので、今はそうやって直していくのが一番効率がいいんじゃないかなと思ってます。

――AIに向かって喋って、間違った箇所を指摘してもらう勉強法があるんですか?

はい、それが一番効率がいいと思います。ネイティブの人間の先生から学ぶより、5倍ぐらいは効率がいいんじゃないかって。だってAIは24時間いつでも使えて、無料で、ネット上の膨大な情報から学習してるのでネイティブの100倍ぐらい専門性もある。だったら、人間から言葉を教えてもらう意味はあんまりないんじゃないかなと思います。

――どのAIツールをおすすめしますか?

どれでもできると思いますが、とりあえずChatGPTでいいんじゃないですかね。

勉強に必要なメンタルを育てる方法

――幼少期から勉強してましたか?

もともと勉強嫌いなんで、というか今も大嫌いなんで(笑)、やってません。必要なところだけ要領良く勉強するのが僕のスタイルなので、幼少期も特に勉強はほとんどやってなかったですね。

ただし、本を読むのは好きで、自分の興味関心がある本は毎日何冊も読んでました。小説も読んでましたし、図鑑や偉人伝も読んでました。あらゆる本を読んでましたね。

――幼い頃からやっておいた方がいい勉強法を教えていただけますか?

勉強以前の覚悟云々といった話もありましたが、要は責任だったり、自信だったり、自主性だったり、知的好奇心だったり、 そういったメンタリティの方が、勉強にも、勉強にとどまらない人生全体にも大事かなと僕は思っています。

だから親御さんとしても、子どもがそういうメンタリティを持てるように教育した方がいいと思います。今どきの日本は、子どもを甘やかしすぎて、わがままな子が量産されてるように思うんですね。

――勉強法よりもメンタルを鍛えた方がいいと。

そうだと思います。やる気のない人に「こうやって勉強すればうまくできるよ」と言ったところで、どうせやらないんですから。

教えられたことを参考にしつつも、自分なりにアレンジしてちゃんと使いこなす人にしか、結局勉強法って意味ないんじゃないですか。そう考えると、特に子どもであれば尚更ですが、そういう癖をつけておくのがすごく大事なんじゃないかなと思います。

何の責任も持ってないし、何の自信もないし、自主性もないし、知的好奇心もなくて、ただ空気吸って生きてるだけの人は、特に子どもだと凄く多いと思いますね。

日本人の多くは出世の意欲もないし、いまの会社で働きたくもない。だけど転職もしたくないし、起業もしたくない。とりあえず人並みでいたい、と考える人が多すぎるので、その辺は非常にまずいんじゃないかなと思います。

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※写真はイメージ(gettyimages/Tony Studio)

――さっきおっしゃってた責任、自信、自主性、知的好奇心というメンタルを鍛えるにはどうしたらいいでしょう?

責任を持たせるためには、役割を与えることが大事だと思いますね。小さなものでよくて、家事やペットの世話といったものでもいいので、役割を与える。あとは、家族の行事ですね。たとえば、ピクニックするのか山登りするのかみたいな。行先や何をすればいいのか一緒に決めたりすることで、「自分がやらないと」といった感覚を味わってもらえる。そうすると子どもが責任感を持てるようになるかなと思っています。

自信に関しては達成感から生まれると思います。小さな目標をまず一緒に設定するようにして、それを達成するたびにその子を褒めたりご褒美を与えたりしていけば、「自分はやればできる」という感覚を味わえるようになるので、自信ももっと持てるようになるんじゃないかなと思います。

そういう小さいことが達成できないと、大きい目標も達成することはできないので。

自主性に関しては、なるべく選択肢を与えたり、スケジュール管理を子どもに促してみるなど、「自分で考えてやる」という感覚を子ども自身が味わえば育てられます。

知的好奇心はこれまでしてこなかったことを経験することでしか育てられないので、なるべく一緒に新しい場所を訪問して、多様な経験をさせるのが大事ですね。博物館や美術館に行く、あるいは海外旅行でもいいと思います。

家族全員で読書の習慣を持つのもとても大事だと思っています。自分で興味を持って、「やりたいことをやる」という感覚を子どもに味わってもらえる。

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※写真はイメージ(gettyimages/Hakase_)

特に偉人伝で、一旦は成功を収めた人が凋落してしまって、そこからまた成り上がったりする例を知ってもらえば、子どもも図太くなっていくんじゃないかなと思います。辛い体験を直接与えなくても疑似体験することはいくらでもできますから、偉人伝や小説を読ませることが僕はすごい大事だと思っています。

ちなみに僕が一番好きな偉人は、ナポレオンです。島で生まれて、フランスの皇帝にまでなり上がって、そこから幽閉されて、一旦は皇帝の座から降ろされたけど、また脱出してフランス皇帝に返り咲いたと。そういうへこたれない精神を見ると、思うところがありますよね。

結局、子どもは親の背中を見て育つので、親が本を読まないと子どもも読むわけがないです。親が手本を見せるのはすごく大事なんじゃないかなと僕は思ってます。

――親自身も、責任と自信と自主性と知的好奇心がないといけないと。

そう思いますね。「自分が達成できなかったから、自分の子どもはそれをできるようになってほしい」と思っても、そうなるわけがないじゃないですか。自分すらできてないんだったら。「誰を見て子どもが育つと思うんですか?」と僕なんかは思っちゃいます。

天才とは自分の心にあるものを実行できる人

――カリスさんは誰でも天才に育てることができると思いますか?

「天才」と呼ばれる人や何かに秀でた子どもというのは、育てるものではなくて、勝手に育つものだと思います。だから、親としてできることは常に何かをやらせるというよりは、必要に応じてサポートしてあげて、背中を押してあげることが大事じゃないかなと思います。

そのために必要なことは、さっき話した責任・自信・自主性・知的好奇心をなるべく持ってもらうように心がけることと、「Why and So What?」を聞いてあげることです。「なんでそうなの?」と「だからどうしたの?」というふうに子どもにずっと問いかけ続けると、子どもは自分の頭で考えて自己選択するようになります。

天才になれるのかという意味では、天才の定義によると思います。誰もが勉強の天才になれるのか、誰もが研究の天才になれるのか、誰もがスポーツの天才になれるのかと聞かれたら、なれっこないと思う。結局それは遺伝によってほとんど決まっているので。

できない人はどう足掻いてもできないと思います。僕がいくら頑張っても、大谷翔平みたいに160キロ投げられるわけがない。どういうことかといえば、魚を木登りで評価すれば、誰もが天才じゃなくて馬鹿になるということなので、じゃあ魚にとって泳ぐことのように、自分が才能を発揮できるような領域を探せば、逆に言えば誰もがその分野における天才になれるってことです。

要は天才というのは、自分が価値があると思ったところで、実際に価値を発揮する人だと思います。自らの志・目標・戦略を立てて、心の中にあるものを実行し続ける生き方をすれば、誰でも天才になれる。これらのいずれか一つでも欠ければ、天才にはなれない。

だから、自分が勝てるもの、自分が持っている特定の才能が何なのか見極めて、それを伸ばしておいて、幸運が訪れた時に発揮できるようにすればいいんじゃないかなと思っています。だから繰り返しになるのですが、やるべきことだけやって、やるべきでないことをやらなければ、人間は勝てるんじゃないかということです。勉強だけでなく、人生でも勝てます。

そういった観点から、近々『誰でも天才になる方法』という書籍を僕が出版するので、もしよければぜひ手に取って読んでみてください。ちょっと宣伝になっちゃったんですけれど(笑)。

生きるうえで最も大切な、まさに人生を構成するともいえる「仕事」「勉強」「人間関係」「自己改造」「未来」の5つの観点から、志・目標・戦略を立てるための本質的かつ実践的思考法を紹介しています。

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