本当の自信を身につける鍵は質問力に。子どもを一生涯支える親の質問

本当の自信を身につける鍵は質問力に。子どもを一生涯支える親の質問

選択の連続である人生で、子どもが自らの意思で選択をしていけるようになるには、自信が必要です。では、自信を持つとはどのようなことなのでしょうか。「質問家」として活動する河田真誠さんに、自分を一生涯支える自信をつけるためにはどうしたらいいのか、話を聞きました。

河田さん:「どんな人生を歩むのか?」「どんな毎日を過ごすのか?」、人生は選択の連続です。子どもの頃は親や先生が決断をサポートしてくれますが、大人になったら誰も正解を教えてくれません。自分で考え、自分で良し悪しを決め、行動していくしかないのです。

そのために必要なことは、「自分で考える習慣」と「自分に対する自信」です。自分で考える習慣があると、自分の人生を生きることができます。「周りに評価されるから」ではなく、「自分がいいと思うから」と人生を選択していけるようになるのです。

そして「自分に対する自信」があると、自分の出した答えに対して、「これでいい」と納得することができます。自分に自信がないと、自分の考えや価値観にも自信が持てずに、常に他人の顔色や評価を気にして「誰かの答え」に沿って生きるようになってしまいます。

それは、安心ではあるかもしれないけれど、納得がいくものではありませんよね。もしうまくいかないことがあると、「あの人が言ったから」と他人の責任にしていまい、自分を省みることにもなりません。

人生で大切なことは、自分で納得のいく選択をすること。そのためには、自分で考える習慣と、自分の出した答えに自信を持つこと。それをするためには、自分に問いかけるということが大切になってきます。

ーーこのように話すのは、「質問家」として企業や学校で研修・講演を行う河田真誠さん。本記事では、河田さんにインタビューを行い、著書『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)のワークシートも抜粋しながら、本当の自信とはどのように育んでいくのかを教えてもらいました。

子どもが本当の自信を持つためには、親の「質問力」が関係しているかもしれません。


河田真誠
質問家。相手に問いかけることで、その人の考えや行動を引き出していく「質問の専門家」として活動する。問いかけて社員がみんなで考えるスタイルのコンサルティングや研修が、成果につながると好評で、多くの企業をクライアントに持つ。また、全国の小・中・高校では、「自分で考える」をテーマにした「問いの授業」を行い、児童や生徒、教師、保護者から好評を博している。

自信とは「どんなときでも」自分を信じる力

河田さん:自信とは、どんなときでも自分を信じられる力です。自信がない人は、一度失敗してしまうと、落ち込んでしまい、なかなか立ち上がれません。一方、自信がある人は、失敗しても前向きで、「もう一回やってみよう」とすぐに立ち上がることができます。

このように、うまくいっているときだけではなく、どんな状況でも自分を信じてあげられることが、自信があるということです。


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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

人生を支えるのは「自分が生み出す自信」

河田さん:実は、自信には「人から与えられる自信」と、「自分が生み出す自信」の2種類があります。

たとえば、テストで100点を取って、先生や親から褒められたら自信につながりますよね。しかし、この自信は他者に依存しています。もし、次のテストが50点で褒めてくれる人がいなかったら、その自信はあっという間に消えてしまいます。「褒められたから良い」という考えは、裏を返すと「褒められない自分はダメだ」と同義です。

つまり、「人から与えられる自信」は、物事がうまくいったときにしか持つことができません。自信を持つためのきっかけにはなりますが、他者に依存しすぎてしまうのは、本当の自信とはいえません。

一方で、「自分が生み出す自信」は、他者からの評価に左右されることはありません。物事がうまくいかなくても、すぐに消えてなくなったりはせず、「大丈夫。またやってみよう」と思うことができます。この「自分が生み出す自信」は、生きていくうえで自分を支えてくれるので、ゆっくりと大切に育てていく必要があるのです。


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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

世の中は無常。変わらない「自分」を見つける

ーーでは、「本当の自信」は、どのように育てていくことができるのでしょうか?

河田さん:「自信=どんなときでも自分を信じる力」であるのならば、まずは「自分とは何なのか」をよく知る必要があります。

ーー本当の自信を育てるために、自分を知る必要があるんですね。

河田さん:はい。僕は仏教のお坊さんでもあるのですが、仏教には「無常」という概念があり、すべてのものは変化したり滅したりして一定ではない、とされています。たとえば大きな山は常にそこにあり変わらないように見えるけれど、実は少しずつ沈んでいたり、噴火したりすることもある。世の中に不変なものは何もないということです。

また、仏教では「縁起」と言いますが、全てのことはご縁で成り立っています。僕がある人に傷つけられたとしましょう。僕はその人を「嫌な人」だと思います。しかし、その人のことを「いい人」だと思う人もいますよね。絶対的な「嫌な人」がいる訳ではなくて、「嫌な人だと感じている僕」がいるのです。その人と僕との関係性の中で、良い悪いが生み出されているだけなのです。

無常と縁起、この2つのことを考えると「変わらないものはない」「全ては自分との関係でできている」ということになります。

もし、いやなことがあったり、うまくいかないことがあって自信をなくしたとしても、あなたに影響を与えたことは移り変わっていきます。そして、あなたの捉え方次第で、それは良くも悪くもなるということです。

その中で、あなたが生きている限り、変わることなく、しかも、他に影響されない、揺るぎないものがあります。それが「自分」です。その「自分」を知ることが自信を持つことにつながっていきます。


人を信じる要素は「いつも変わらないこと」「よく知っていること」

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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

河田さん:あなたはどんなときに、人を信じることができますか?「この人のことは信用しているな」という人を思い描いて、なぜ信じているのかを考えてみてください。僕は、人を信じるにはふたつの要素が必要だと思っています。

ひとつは「いつも変わらないこと」。会う度に性格や発言、価値観がコロコロ変わる人だったら、どういう人なのかが掴めず、信じることは難しいですよね。これは善悪の問題ではありません。僕の友人に待ち合わせに必ず30分遅れてくる人がいますが、僕は彼を「遅れてくるだろう」と信じています(笑)。

もうひとつは「よく知っていること」。初めて会った人を信じることは難しいけれど、よく知っている家族や友人のことは信じられますよね。

ーーいつも変わらないことと、よく知っていることが、「信じる」につながるふたつの要素なんですね。


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名前や肩書、感情は自分自身ではない

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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

河田さん:「信じる」とは何か?がわかったところで、話を「自信」に戻しますね。自信を持つ(自分を信じる)には、「自分を知ること」が大切だとお話しましたが、「自分を知る」には大きくふたつの意味があり、「本当の自分がいる」ということを知ることと、「その本当の自分がどういう存在か」を知ることです。

ーー「本当の自分」とはどんなものなのでしょうか……。考えてみると、よくわからないような気もします。

河田さん:そうですね。こんなに身近にいるのに、以外とよくわからないのが「自分」という存在かもしれません。

以前、インドを旅したとき、サドゥーというヒンドゥー教のお坊さんとお話をする機会がありました。その人は、僕に「君は誰だ?(who are you?)と問いかけてくるのです。僕が「河田真誠」だと答えると、「それは君の名前であって、君ではない。君は誰なんだ?」と聞いています。

「日本人だ」と答えると「それは、君の国籍であって君ではない」、「コンサルタントや作家だ」と答えると「それは君の職業であって君ではない」、「今、混乱しているのが僕だ」と答えると「それは君の感情や思考であって君ではない」と言われるのです。

つまり、僕が所有しているもの、僕を表すもの(名前、肩書、国籍)、僕の感情や思考も、僕ではないのです。僕は、このやり取りをしたあと、とてもラクな気持ちになりました。なぜなら、名前や職業や国籍などは、僕の一部を表現するものではあるけど、僕自身ではないからです。

また、感情や思考は日によってコロコロと変わってしまいます。さっきまで楽しい気持ちだったのに、些細なことで落ち込んだりしますよね。そんなコロコロ変わってしまうようなものが僕だとするなら、不安定過ぎて、とても信じることはできないなと思っていたからです。


揺るぎない自分がいるとわかれば一喜一憂しない

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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

ーーでは、「本当の自分」とはなんなのでしょうか?

河田さん:はい。それは、立場や感情、思考の「主体」となっているものです。その主体である「自分」をわかりやすく表現する手段が名前や肩書です。「主体である自分」が仕事や家庭の中でさまざまな役割をこなしているのであり、感情や思考は「自分」が感じたり考えたりしていることでしかありません。

たとえば何かに怒りを感じている時、「僕は怒っている」というように感情を主体に考えてしまうと、怒りに飲み込まれてしまいます。でも、「今、僕は怒っているな、イライラしているんだな」と客観的に捉えることができれば、感情の波に左右されることなく、冷静に考えることができます。この、すべてを客観的に捉える存在こそが「自分」なのです。

そして、その「自分」というものは、感情や思考とは違って、移り変わっていかない、絶対的なものだと思うのです。揺るがないものが自分だと理解できれば、一喜一憂することも少なくなりますし、感情に呑み込まれてしまうこともなくなります。

自分の中にいつも変わらない揺るがないものがあるのなら、それは信じることができると思いませんか? その揺るがないものが「本当の自分」だと思うのです。自分の中に変わらないものがあるとわかれば、それは信じることができますよね。

ーー「いつも変わらないこと」が人を信じる要素だからですね。

河田さん:そうです。子どものころと大人になった今を比べると、あなたの立場や感情、思考は大きく変わったことでしょう。しかし、子どもの頃から変わらず、あなたはあなたなのです。

僕は、子どもの頃から音痴です。小学校の音楽のテストでみんなの前で笑われてからずっと、歌うことには自信がなく、カラオケなどにも行ったことがありません。歌うことには自信がないのです。

しかし、それは僕が僕として、この人生を全うすることに少しも影響しません。苦手なことがあって当然。それはやらなければいいだけです。自信とは「何かができる」ということではないのです。「これはできない」と知っていることも自分を信じることにつながりますよね。

本当の自分がいることがわかれば、もし新しいことに挑戦して失敗しても、「あ、これは苦手なんだな」と思うだけです。自分の人生には何も影響しないとわかっているから、気軽にやってみよう!と思えるのです。

自分を知ることで、自分を傷つけない生き方が見える

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『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)より

ーー「本当の自分がいる」と知っているだけで、自信につながるんですね。なんだか安心したような気持ちになりました。「本当の自分がどんな存在かを知る」には、どうしたらよいでしょうか?

河田さん:はい。先ほどお話したように、よく知っているものは、信じることができますよね。

自分は何が好きで何が嫌いで、どんなシーンでどんな感情を抱くのか、どんな考え方をしているのか…と自分を知れば知るほど、信じることができるでしょうし、自分を扱いやすくなります。自分は音痴だと知っていれば、わざわざカラオケに行って自分を傷つけることもありません。

僕が若い頃には「自分探し」という言葉が流行り、自分探しのために旅をするのがブームになりました。、僕もアジアを旅したりしましたが、旅を通していろいろな経験をすることで、僕は自分のことをよく知ることができました。毎日のように、初めての体験に出会うので、その度に「こういうとき、僕はこう感じるんだ。これが大切だと思っているんだ、こんな行動をするんだな。」と知っていったのです。

つまり、自分を知るには、いろいろな面から自分を見ていくことが必要なんですね。そのために、もっともシンプルで効果的な方法が「質問」です。

何かを経験しただけでは自分を知ることにはなりません。その経験のなかで自分と対話をし、「何を感じたんだろう?」「どう思ったんだろう?」と考えたりすることが、自分を知ることにつながっていきます。そのための道具として「問い」というものが有効的なのです。

ただ、子どもにとっては、自分と対話をする行為はなかなか難しいですよね。だから、『君を一生ささえる「自信」をつくる本』をツールのひとつとして活用してほしいし、それと同時に親御さんが子どもにたくさんの質問をすることをしてあげてほしいのです。

ーー後編では、子どもの自信をつくるための、親の質問力を高める方法について教えてもらいます。

▽▼▽後編はこちら

なぜなぜ期の子どもには正解を与えない。子どもが質問に答えたときにすべき反応は?

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