こちらの記事も読まれています
なぜなぜ期の子どもには正解を与えない。子どもが質問に答えたときにすべき反応は?
『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)著者の河田真誠さんのインタビュー記事。前編では、本当の自信を持つためには自分を知ることが何よりも大事だと教えてもらいました。しかし、小さい子どもは「自分を知るために自問自答をしよう」と言われても難しい。親が、子どもにたくさん質問をしてあげることが大切。親の「質問力」を高める方法とは。
前編はこちら▽▼▽
人は一日に2万回も質問に答えている
河田さん:人生は選択の連続です。「どんな仕事をするのか」「誰とどんな人間関係を築くのか」「自己肯定感や人生の楽しみをどうつくるのか」このような問いに正解はなく、自分で考え、選んでいくしかありません。
人は無意識の自問自答も含め、一日になんと2万回も質問に答えています。「昨日の晩ごはんは何だった?」と聞かれれば、その答えを考えるように、人は問いかけられると自然と考えることをします。つまり人生は、「何を問いかけるか」でできているのです。
しかし、いきなり「自分で考えなさい」「自問自答しなさい」なんて言われても、子どもにとっては何をどうしたらいいのかわかりません。そんなときに役に立つのが親から子への「質問」です。親が「質問力」を高めることで、子どもにたくさんの視点を与え、子どもの自信や考える力を育むことにつながります。
ーー親の「質問力」を高めるとは具体的にどうしたらよいのでしょうか?
河田さん:そもそも質問力とは、質問を「作る力」と質問を「する力」で構成されています。
まず、親が質問を「作る力」を伸ばすには、いろいろな新しい体験をして、自分の引き出しを増やすことです。相手に何かを考えてもらったり、気付いてもらったり、促したりするためには、相手と違う視点に立った問いかけが必要だからです。
ーー大人も知識や経験をアップデートして、視野を広げ続ける必要があるということですね。でも、忙しい毎日のなかで、新しい経験をすることは難しいかもしれません。
河田さん:経験といっても、難しく考えなくても大丈夫です。僕は10年間以上、毎日ひとつ、初めてのことをやってみることを日課にしています。内容はなんでもよくて、いつもと違う道を通って帰ってみるとか、コンビニで新商品を買ってみるとか、ごくささいなことで大丈夫です。
ーー生活のなかでほんの少し意識を変えてみるということですね。
河田さん:そうです。たとえばいつもと違う道を通ったら「あれはなんの看板だろう」「なんで遠回りなのに近く感じたんだろう」など、新しい問いが生まれますから。その問いが生まれることが重要です。なんでもいいから新しいことを経験して、親自身がたくさんの自問自答をすること。それが質問を「つくる力」を育てます。
子どものなぜなぜ期。正解を教えるのはNG
ーーでは、子どもに質問を「する力」はどのように高められるでしょうか?
河田さん:それは、子どもとの会話を楽しむことだと思います。たとえば子どもは「なんで?なんで?」と聞いてくる時期がありますよね。そのときに、正解を教えてあげるのは、すごくよくない対応。子どもの知識は増えるかもしれないけれど、考える力にはつながりません。
そうではなく、親がその会話を楽しんで、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」と返してあげること。正解は、そのあとでいっしょに調べてみたらいいですから。
ーーもしかすると多くの親は、「子どもに間違えたことを教えたらいけない」というプレッシャーが強く、会話そのものを楽しめないのかもしれません。
河田さん:そうかもしれませんね。情報には、事実と主観の2種類があって、たしかに事実はきちんと正解を教えてあげたいと思うかもしれません。一方で主観は正解がないものなので、まずは気楽に親子の会話を楽しんでみたらいいのかなと思います。
ーー子どもが質問に答えたときの反応は、どのようにしたらよいですか?
河田さん:リアクションはとても大事です。特に子どもが主観を答えたときには、どのような内容であっても「いいね!」とまずは受け止めてあげてほしいです。受け止めることをせずに「それは違うよ」と否定して正解を言ってしまうと、子どもにとって考えることは意味がないことになってしまいます。
それを繰り返すと、子どもは大人が気に入るような意見ばかりを言ったり、誰かに正解を求めて生きていくようになってしまいます。正しいか正しくないかではなく、どのように考えを巡らせると楽しいのかに意識を向けると、子どもの考える力が伸びていきますよ。
大人のふざけた回答例が子どもの意見を引き出す
ーー質問に答えるのが苦手な子どももいますが、うまく答えを引き出すポイントはありますか?
河田さん:待つことが大事なのかもしれません。子どもとの会話はポンポンと弾むことは少ないと認識して、答えが返ってこなくても、気長に待ちましょう。そもそも大事なのは答えではなく、考える時間ですから。あとは、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」と例を挙げてあげたり、選択肢を与えてあげたりするのも方法のひとつですね。
ーー例を挙げると、その例にとらわれてしまって、同じような答えを言ってしまう子も多いような気がします。それでもいいのでしょうか?
河田さん:最初はそれでもいいと思います。人の回答を真似してしまう子は、「自分が意見を言ったことで、どう思われるだろう」と、評価を気にしてしまっているのかもしれません。
でも、まずは人の真似でもいいから意見を言って、それを「いいね!」と受け止めてもらう経験を重ねていったら、「思ったことを言ってもいいんだ」と捉えられるようになるのではないでしょうか。
あと、親がわざとバカバカしい答えを出してハードルを下げる方法もあります。僕は小学校で「しつもんの授業」をやっていますが、「どんなときに幸せか?」という問いに答えられない子がいたんです。
そこで「僕だったら、ずっとトイレを我慢していて、やっと行けたときが幸せ」と言ってみたんです。するとその子は、「そんなことなの?」と面白そうに笑いながら、自分の意見を話してくれるようになりましたよ。
寝る瞬間の記憶が子どもの人格を作る
ーー子どもと質問のやりとりを楽しむのは、どんなタイミングがよいでしょうか?
河田さん:寝る前に行うのがよいと思います。なぜなら、子どもが他に意識を取られる刺激がなく、自分の心とアクセスできる静かな状況であるから。
また、心理学で「寝る瞬間の感情が、その人の潜在意識にインプットされる」という実験結果があります。特別無条件同化暗示感受習性というのですが、寝る瞬間に攻撃的なことを考えている人は、攻撃的な人格になりやすいし、寝る瞬間に幸せなことを考えている人は幸せになりやすいのです。
だから、寝る前には「将来こうなりたいな」とワクワクするような未来を想像したり、「今日の学校楽しかったな」と幸せな感情を思い起こさせたりするような質問をしてあげるとよいですね。
ーー幸せな気持ちで眠りにつけるだけではなく、人格形成にもつながるのなら、ぜひやってみたいです。親子間の質問について、他になにかコツはありますか?
河田さん:質問力が弱い人は、「なんでうまくいかないんだろう…」という思考をしがちです。でも、「なんでだろう」という問いは、自分や他人を責めるだけで、解決にはつながりません。たとえば、子どもが宿題をやらないときに「なんでやらないの?」と聞いても、言い訳を引き出すことしかできません。
ですが、聞き方を少し変えてみて「どうすれば宿題できる?」」にしたら、子どもは解決策を考えます。宿題をやらないという子どもの行動は同じでも、親の質問力が変わるだけで、親子関係も変わっていくし、子どもの未来も変わっていく。そんな質問の習慣を身につけていただけたらいいなと思います。
問いかけて受け入れることで、子どもの個性を守る
ーー河田さんは全国の小学校での「しつもんの授業」を行っていると聞きました。
河田さん:はい。僕のメインの活動は企業での研修ですが、若手社員に問いを投げかけると答えられない人がとても多く、考える力は子どものころから育てる必要があると感じ、それでしつもんの授業を始めました。
たしかに、学生時代にずっと「こうしなさい」と一方的に教えられてきた人たちが、急に「あなたはどう考える?どうしたい?」と聞かれても、答えられなくて当然だと思うんです。
ーーよく指示待ち人間という言葉も聞きますが、考えるという経験をしてきていないんですね。
河田さん:そうです。あと、僕が小学校での活動を行う理由がもうひとつあり、僕は小学校の頃、いじめられていたんです。個性を持て余しすぎていて、周りの子と違っていたんでしょうね。僕はその当時の自分に「その個性で大丈夫だよ。周りに合わせて平均化しなくてもいいよ。その個性がとっても大事な種なんだよ」と言ってあげたい気持ちで活動しているんです。
実際にさまざまな個性を持った子がいますが、問いを投げかけられて、その答えを受け止めてもらう経験をすることで、自分を好きになって自信にしてほしい。そう思いながら「しつもんの授業」の活動を続けています。
ーー子ども時代の自分のような個性のある子を救いたいという想いで、無償で全国の小学校に授業をしに行く河田さん。「全国どこにでも行きます」とのことなので、学校関係の方など気になる方はお問い合わせしてみてください。
お問い合わせ(河田真誠ホームページ)
https://shinsei-kawada.com/lecture/