【図解/後編】アウトドアプロデューサーが教える「自然体験の親のNG・OK行動」
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家庭学習の時間が増えている今、アウトドアでの自然体験を通して子どもが遊びながら学べる「外育」が注目されている。なんとなく外へ連れ出し、遊んでいる姿を見守るだけではなく、その効果を知り、よりよい学びにするためにはどうしたらいいのか?さまざまな専門家にその極意を聞いていく。第2回は、アウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんに、子どもを伸ばす親のかかわり方について聞く。
前編では、アウトドアでの自然体験で育つ、自発性、創造性、コミュニケーション力・協働力の3つの能力について、実例とともに、その能力を伸ばすために親子で行う作戦会議について教えてもらった。
後編では、実際に親が気を付けるべき声掛けなどの接し方について聞いていく。
自然体験での場づくりで大切なのは、「子ども目線に立つこと」と「子どもを信じる」ということです。
僕が講師として呼んでいただいた親子が参加する自然遊び教室では、教育熱心な親御さんほど、過保護に手出し・口出ししてしまうというパターンがよく見られます。逆に、子どもに関心を払わず、スマートフォンによそ見をするなどして放っておいてしまう親御さんもいました。
自然は知らないこと、できないことがあって当たり前。お母さんもお父さんも子どもより上の立場に居続けようとするから、子どもに対して「何かを教えなければ」と思ってしまいますが、失敗してもいいんです。
子どもは本来、未知の世界に興味津々なのです。本当は思い切りやってみたくても、親の目が気になってるだけかもしれません。
自然体験では、基本のルールは「命にかかわる怪我をしないように遊ぶこと」「命にかかわる危険を犯さないこと」だけです。
多少のかすり傷は思い切り遊んだ証なので、親が許容してあげないと、子どもはどんどん自分がおもしろいと思ったことをやらなくなったり、チャレンジしなくなったりしていきます。
主役は子どもですから、正しい答えを知ることよりも、「これって何?」「これってどうするの?」という好奇心や探求心を満たすことで、学んでいきます。
つまり、場づくりのコツは、「答えは相手の中にある」ということを認識し、子どもの目線に立ち、子どもが持つ本来の力を信じるということ。大人があれこれ与えたり教えるのではなく、子どもを自然の中に解放してあげることが大人に求められる役割です。
お母さんお父さんがすぐに分かることでも、子どもは悪戦苦闘します。
どうしたらいいか、考えている子どもに口を出したり手出しすると、せっかく子どもが発見して学ぶチャンスをつぶすことになってしまう。
だからこそ、見守りつつ、上手に待つことが必要なのです。
声掛けする際のケース別の例も見てみましょう。
たとえば泣いている子も、ちゃんと理由があって泣いています。
ただ泣き止ませるために、「あっちにもっとおもしろいものがあるから行こうよ」と別のもので置き換えて気をそらすのではなく、根本の気持ちを解消してあげることが大切です。
見守っていれば、転んで擦りむいたから泣いているんだなということは見て分かったとしても、子どもの気持ちを聞いていくと、実は痛くて泣いていたのではなく、お友だちに笑われたのが悔しくて泣いているということだってあるわけです。
他にも、ある日、友だちがカマキリを持っているところをじっと見つめていた女の子がいました。友だちがその子にカマキリを渡そうとすると怖くて泣いてしまいます。
聞いてみると、虫が苦手だけど、でも持ってみたいという気持ちがあると教えてくれました。
そこで、「怖いなら持ってあげるね」と持って見せてあげるのではなく、どうやったらその子が持てるようになるのか、どうしたら「持ってみたい」という気持ちを満たしてあげられるかをいっしょに考えることが必要です。
「カマキリのどこが怖い?」「シャーッてやるところ」「じゃあ、もしもシャーッていうところが動かなかったら触れそう?」「うん」と話し、鎌の部分をおさえて持ってあげると、触れるようになりました。
そのあとも、「カマキリには弱点があって、背中がかけないんだよ」と伝えると、背中を持てば鎌が手に当たらないんだ、と気づいて持てるようになりました。
ここまで、大人がいかに子ども目線に立って、子どもの興味や好奇心に寄り添う接し方をするかをお伝えしてきましたが、大人はそう簡単に性格を変えることはできません。
そこで、僕は親御さんにおすすめしているのは、自然体験で大人に必要な6つの役に「なりきって演じる」ことです。
山でも、海や川でも、子どもが自然の中で遊ぶことを通して、親としてはやはり何かを学んでほしいという気持ちもありますよね。だけど先ほど事例をお見せした通り、大人目線でいっしょうけんめいに教えたとしても、特に10歳くらいまでの子どもは脳の発達が進んでいないため、ついていけません。
その代わり、目の前のことをどんどん処理することで知識を増やしたり状況を認知したりしているので、子どもは「いま」を生きているのですね。
だからこそ、子どもが自ら学ぶことをサポートし、どうしたら自然体験を通して心と体を満たせるかを考えたとき、まず子ども子どもの好奇心や探求心をくすぐりながらも、学びの場をつくっていく必要があるのです。
そこで、この6つの要素が必要だと考えます。
子どもの状況にあわせて、「ガイド50%・インストラクター30%・エンターティナー20%かな」のように配役を調整していくことで、子どもたちは楽しんだり、集中して話を聞いたり、熱中して作ったり、自由に遊んだりして、いつの間にか学びの機会につながっているはずです。
自然あそび教室で私が大切にしているのは、子どもが体験していることをやりっぱなしにせず、「できるようになった!」と経験として実感できる環境を作ることです。これが子どもにとって、また大人にとっても一番の成長サイクルです。
親のかかわり方、声かけひとつで、子どもたちは自然の中に解放され、遊びながらたくさんのことを学んでいきます。何度か自然体験を実践していると、次第に子どものふだんの「遊び方」も変わってきます。
親御さんもぜひ、子ども目線でサポートしながらもいっしょに自然に解放されて楽しんでくださいね。