【図解/前編】アウトドアプロデューサーに聞く「自然遊びで育つ3つの能力」

【図解/前編】アウトドアプロデューサーに聞く「自然遊びで育つ3つの能力」

家庭学習の時間が増えている今、アウトドアでの自然体験を通して子どもが遊びながら学べる「外育」が注目されている。なんとなく外へ連れ出し、遊んでいる姿を見守るだけではなく、その効果を知り、よりよい学びにするためにはどうしたらいいのか?さまざまな専門家にその極意を聞いていく。第2回は、アウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんに、子どもを伸ばす親のかかわり方について聞く。

<連載企画>外育のすすめ
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長谷部雅一(はせべ・まさかず)/有限会社ビーネイチャー取締役、アウトドアプロデューサー。幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行い、保育士向けに 自然体験指導者教育、幼児へは自然体験を通じて行うボディーバランス、感性、社会性などの教育に力を入れている。社会人向けにはアウトドアイベントの企画・プロデュースのほか、研修講師、ネイチャーインタープリター、場作りの仕掛け人も務める。一児の父。
キャンプをはじめ、自然の中で遊ぶ体験は、子どもの脳の発達を促進し、非認知能力を育むといわれている。しかし実際、連れて行った先で、親子でどのように遊べばいいのか戸惑う方も多いだろう。

アウトドアプロデューサーとして、保育園や幼稚園、親子向けの自然体験指導を行っている長谷部雅一さんに、「子どもが伸びる自然体験での接し方」についてレクチャーしてもらう。
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当たり前のことですが、子どもたちは日々、私たち大人の都合やルールの中で生活しています。

たとえば朝、幼稚園や保育園に行くまでも、もう少し寝たいとか、遊びたい、という気持ちと裏腹に、顔を洗って、着替えて、朝ごはんを食べて、と出発するまで分単位でスケジュールをこなしていますよね。

家に帰ってからも、夜、「パパとサッカーしたい」とお願いしても、働いている両親は仕事帰りで疲れているし、「もう遅いからお外じゃなくて家の中でテレビを観ようか」と、代案を提示して子どもの欲求を置き換えしてしまっている。

パパと遊ぶ、という欲求は満たされるから、子どもからしたらそれだけでもとても嬉しいんです。でも、根本の「身体を動かしたい」という欲求が満たされないまま、解決されないままになってしまう。これは家庭内だけでなく、幼稚園や保育園でも、園庭の時間はルールが決まった中での遊びになりますし、近頃の公園はボール遊びや自転車の乗り入れなど禁止事項も多いです。
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そんな背景があるからか、大人も子どもも自然に身を置くと心も体も開放的になり、普段より感情を表に出しやすかったり、大きな声ではしゃいだり、素直になると実感します。

自然の中では、いたるところに子どもが学ぶ教材があふれています。遊びが学びに変わり、大きく分けてこれらの能力が育まれるのです。
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たとえば、子どもたちを里山に連れて行ったときのこと。

子どもたちはすごい勢いで、山道を進んでいきます。途中で急な坂道があり、そこで何が起きたかというと、上に登れない子のために、大きくて細長い木の枝を他の子が見つけてきて引きずって運んできたんです。

その木を上に引っかけて、手を引っ張ってみんなで協力しながら、登ったり下りたりして遊ぶんです。そのあと、「ロープつけてブランコにしたい」と子どもたちから提案があり、それを僕が手伝ったり。

またその横で、運動が好きな子は地面に落ち葉を集めてクッションにして、2メートルくらいの上からジャンプして飛び降りてみたり、おしゃれが好きな子は大きな葉っぱを拾ってきて帽子をつくって被ってみたりしています。
iStock.com/HappyKids
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こうした自発性やクリエイティビティ、コミュニケーション力が伸びるおかげで、子どもたちは集中力も身についていきますし、常に歩くスピードや、足や手をどこに置くかなどを考えながら遊ぶことでボディバランスも鍛えられていきます。

ここでポイントは、すべて僕たち大人は「これを使って遊ぼう」とか「こういう遊びをしよう」と指示していないということ。

声掛けをする際のポイントは、子ども目線に立つということです。
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たとえばケース1では、子どもが何か失敗したときも、「どうすれば失敗しないか」を大人目線で教えるのではなく、子どもが考える時間を待つことが大切です。

自然の中で遊んでいると、何度も何度もいろんな方法を試す体験で自分が学べることがあると子ども自身も分かってきます。登りたい木があったら、真正面から登ってだめだったら、こっちから登ったらどうか、ロープを使ってみたらどうか、ってちゃんと考えるんですね。

失敗することは当たり前なので、声掛けをするならば、「じゃあどうしたい?」と聞いてみたり、もし行き詰ったら、「ヒントを教えようか?」と聞いてみてください。

そうすると、どんどん、すぐに答えを求めない自発的な子に成長していきます。「やり方を教えようか?」と聞くと「いい!」と言うんですね。自分でやったほうが楽しい、達成感を感じるというベースを身につけていきます。
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それから、ケース2については、日々子どもたちは家の中や保育園でおもちゃ遊びをしていますよね。

そういった日常生活の中にあるおもちゃって、基本的には大人が大人の意思で作っているものなので、「遊び方」や「完成形」などのゴールが設定されています。

でも、どんぐりひとつとっても、大人の予想や範疇を超えた遊び方を子どもたちはするんですね。並べたり、積んだり、割ったり、投げたり、私たち大人が遊び方を教えなくても、クリエイティビティをどんどん育んでいきます。
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子どもたちは、大人が想像もしないような発想で物事をとらえて実行したり解決したりして前に進んでいきます。それを親がサポートするために、僕は「親子での作戦会議」をおすすめしています。
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たとえばアウトドア好きの親御さんだったり、子どもの失敗や怪我を必要以上に心配してしまう親御さんだったりすると、当日「じゃあこれを使ってこうやって」とつい具体的に指示を出してしまい、最初は子どもも楽しいかもしれないですけど途中で飽きてしまうんです。

大人はその場で「これをこうしたらこうなるからこっちを先にやっておいて……」と工程の先読みができますが、子どもは発達段階的に感性が優位ですから、流れを頭の中で組み立てるのが得意ではありません。

そこで、事前に家族で作戦会議をしておくことで、その日やることの全体像を子どもが把握することができ、「これやりたい」「これを手伝う」と、自発的に次の行動を考えて自分から提案することができるのですね。
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また、作戦会議の中で約束を作ることによって、全体の流れの中にルールを設定することができます。

子どもは当然、広くて自由な場所に来ると解放的になるので、一瞬、周りが見えなくなって遊びたくなるんですが、そうした欲求を満たすだけでなく、寝る場所をつくる、食事をつくる、決まった時間に帰る、などは必要になってきます。

約束をしておくことで危険な行動や大きな怪我を防ぐことにもなります。
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自然の中で遊んでみると、いつもの環境とは違い、人工的に作られた便利で都合のよいものが用意されているわけではありません。

その中で子どもたちは心も体も開放的になり、目の前のさまざまな材料を使って自由な発想で試行錯誤をくり返し、自分のやりたいことを実現させ、ダメだった場合もすぐに心と頭を切り替えて別の方法を模索し、また別の道を歩みます。

こうすることで、自発性、創造性、コミュニケーション力・協働力の3つの能力も育っていくのです。

後編では、具体的に親がやってしまいがちなNG行動から、より子どもたちが自然の中で遊ぶだけではなく、「学ぶ」ために必要な大人の役割をお教えします。
book
自然あそびで子どもの非認知能力が育つ
長谷部雅一 著
1,650円(税込)東洋館出版社

<取材・撮影・執筆>KIDSNA編集部

2020年12月12日

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