「みんなちがって、みんないい」と思える子へ 子どもの世界をひろげよう

「みんなちがって、みんないい」と思える子へ 子どもの世界をひろげよう

2022.02.25

Profile

小宮山利恵子

小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

多様性の社会で子どもが自分らしく「好き」を追及し、「個」として生きていくために必要なこととは? リクルートのスタディサプリ教育AI研究所所長・東京学芸大学大学院准教授である小宮山利恵子さんの連載コラム第4回。

子育て世帯の多くが核家族化しているなか、新型コロナウィルスの影響でますます親子だけでいる時間が長くなっています。自粛しなければいけない期間は、それも仕方ないでしょう。

けれども、子どもが外の世界を見て、家族以外の人と触れ合う経験は、人の多様な生き方、考え方、価値観を知る経験になります。

出会いによって広がる「外の世界への興味」

ゲームやYouTubeなど、家庭内で楽しめる遊びも多いですから、これからの時代は親が意識的に家族以外の第3の大人との触れ合いを増やし、子どもの視野を広げる必要があると私は思っています。

学校の先生や、塾や習いごとの先生との出会いも、もちろん大事です。

でも世界は広く、いろんな生き方、働き方があり、自分とはちがう考えや価値観を持っている人がいて、社会が成り立っています。

子どもと一緒にスーパーに行ったら、鮮魚コーナーの店員さんに声をかけて、買った魚の美味しい食べ方を聞いてみてもいいでしょう。

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※写真はイメージ(iStock.com/Hispanolistic)

タクシーに乗ったら、ニュースや地元グルメの話、景気のことなど聞いてみると、情報通の人も多く勉強になります。時には、身の上話をしてくれる運転手さんもいて、「いい話を聞かせてもらった……」と感動することもあります。

親とはちがう大人との出会いは、子どもが外の世界に興味を持つきっかけにもつながります。

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※写真はイメージ(iStock.com/RyanJLane)

私は旅行が好きなので、国内外いろいろな場所に息子を連れていきました。特に海外に行くと、日本人の中では会ったことがない人、聞いたことがない言葉、見たことがない光景など、はじめての経験ばかりです。

まだ息子が未就学児だった頃、はじめて親子でハワイに行ったときは、肌の色がちがう人、わからない言葉を話す人の多さにびっくりしていました。

我が家は布団派なので、泊まったホテルの部屋のベッドを見て、「なんで布団がないの?」と不思議がっていました(笑)。

朝食のビュッフェにもびっくりして、「なんでこんなにいっぱい食べものが並んでるの?」と質問されたので、「みんな自分が食べたいものを自由に選べるんだよ」と教えてあげました。

いろんなことにカルチャーショックを受けつつも、知らない世界を知ることにワクワクしている様子でした。

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※写真はイメージ(iStock.com/Imgorthand)

それからも、在日外国人の方が参加する親子イベントなどに連れていったりしたので、今では息子もすっかり多様なカルチャーを楽しんでいるようです。

日本でもいろいろな国の人が働いています。

身近で、自分とはちがう言語や文化の人たちとの出会いがあれば、ちがいを認めて、お互いを尊重することがいかに大切か、子どもと話すだけでも学びになるでしょう。

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※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)

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「“らしく”の決めつけ」をやめれば、自分らしさが育つ

「女の子らしく」「男の子らしく」と性差を前提に子育てするのも、多様性の時代に逆行している時代錯誤の刷り込みです。

好きなおもちゃ、遊びはもちろん、好きな色や洋服も、子どもが選んだものはその子の個性の現れ。

「男の子は青」、「女の子はピンク」と決めつけるのは親の偏見ですから、本人に自由に決めさせたほうが「自分らしさ」がわかるようになっていきます。

車椅子に乗っている人、障がいがある人、肌の色がちがう人……外から見るだけだと自分とちがう人もたくさんいます。そもそも見た目はもちろん性格も、自分と同じ人なんて世界にひとりもいないんですよね。

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※写真はイメージ(iStock.com/jacoblund)

でも、どんな人でも、頭で考え、心で感じて、好きなことをしたい、幸せになりたいと思いながら生きています。自分とぜんぜんちがうと思っていた人と話してみたら、同じアニメやドラマやゲームが好きだった、というのもよくある話ですよね。

たとえ共通点がなかったとしても、これからの社会は、異質な者同士がお互いの得意不得意を補い合いながら、協働する時代になっていきます。

いろいろな仕事を平均的にできるゼネラリストより、何か1つでも突き抜けた能力があるスペシャリストのほうが活躍しやすい時代になっていくのです。

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※写真はイメージ(iStock.com/izusek)

ですから、自分とちがうからといって、最初から分からないとか、分かり合えないと決めつけないこと。

そして当たり前ですが、差別しないことです。親自身がそういう態度で、他の大人と対等に接していれば、子どももちゃんと見て学びます。

「他の子と同じようにできないこと」は欠点ではない

「他とは違う個性や才能がその子の価値になる」という意味では、例えば1つのことに過集中してのめり込んだり、逆にじっとしていられなくていろいろなことをやりたがる子も、必ずといっていいほど好きなことやこだわりがあります。

他の子と同じようにできないからといって差別や排除をするのではなく、その子の得意なことをやらせてあげる環境を用意するのが最善策でしょう。

というのも、私自身も多動傾向があるので、同じことを何時間も続けてやるのは苦痛でしかないんですね。

他者のちがいを受け入れられる人は、自分らしさも大切にするようになります。

ぜひ親子で、いろいろな人との出会いを楽しんでください。

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小宮山利恵子

小宮山利恵子

スタディサプリ教育AI研究所所長。東京学芸大学大学院准教授。「教育におけるICT利活用をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。早稲田大学大学院修了後、衆議院、ベネッセを経て2015年株式会社リクルート入社。同年12月より現職。 著書に『教育AIが変える21世紀の学び』(共訳、北大路出版、2020年)、『レア力で生きる 「競争のない世界」を楽しむための学びの習慣』(KADOKAWA、2019年)、『新時代の学び戦略』(共著、産経新聞出版、2019年)など。

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