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日本と海外を子育て支援制度で比較。各国の子育てを取り巻く環境
子育てで大切な社会制度と環境とは?
日本ではこれまでにないスピードで少子化が進んでいるといわれています。海外と子育て支援制度などを比較した場合、日本は子育てがしにくい国なのでしょうか?子育ては楽しいことだけではなくつらいこともありますよね。そのようなときに大切なのが、子育て環境の理解が子育てのしやすさにつながるかもしれません。今回の記事では、海外と日本の子育てを比較し、取り巻く環境について考えてみました。
資料で見る日本と海外の子育て支援制度と子育て環境
子育ての楽しさとつらさに関しての意識調査や、夫の家事・育児への関わりかたについて、日本・フランス・ドイツ・スウェーデンに対して行なった内閣府のアンケートがあります。その資料を元に日本の子育て環境について見てみましょう。
日本でも海外でも同じ項目
アンケート調査の中で、子育てはつらいことよりも楽しいことのほうが多いと答えているのは万国共通でした。
たしかに子育ては楽しいことだけではありませんが、それにも増して楽しいことが多く、子どもの笑顔や寝顔などを見て癒されることも多いのではないのでしょうか。
また子育てをしてよかったこととして、「家族が明るくなった」「生活にはりあいができた」「子育てを通じて自分の視野が広がった」と答える人が多いのは日本も海外も同様でした。
子どもを通して保護者が学ぶ部分が多い、というのは万国共通のようですね。
子育てでつらいと思う点に関しては、どの国でも「子どもが病気のとき」に感じているということも資料から分かりました。
また、「子育てに出費がかさむ」という回答も各国共通で多く、子育てにかかるお金を負担に感じている保護者も多いようです。
日本と海外で特に違う項目
日本とフランス・ドイツ・スウェーデンでは、夫婦に関する回答で違いが見られました。
海外では「子育てをしてよかったと思う点」に関して、「夫婦の愛情がより深まる」という回答が多く見受けられました。
また「子育てをしていてつらいと思うこと」という項目において、海外では「夫婦で楽しむ時間がない」と回答する人が多くなっています。
一方で日本では子育てのつらい点は「自分の自由な時間が持てない」と回答する人が上位を占めていて、夫婦で楽しむ時間より自分の時間がほしいと感じているママやパパが多いようです。
資料の結果から、日本と海外では夫婦の関係性や価値観が大きく違うようです。
ママが家事と子育てをこなすという概念の違い
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内閣府の資料によると、小学校入学前の子どもをもつ夫の1日あたりの育児時間の調査では、各国よりも低い結果になりました。
小学生未満の子育てや家事に関して、「妻も夫と同じように行う」という回答に関してはスウェーデンが94.5%、ドイツが62.7%、フランスが60.9%に対して日本は40.5%と最下位です。
資料で見る限りですが、日本ではほとんどの家事や子育てをママが中心にしているという状況がうかがえます。
日本と海外との子育て環境を見てみると、このような点において子育てしにくいと感じることがあるのかもしれません。
子育て支援制度から見る日本の子育て
日本は子育てしやすい環境なのでしょうか?それともしづらい環境なのでしょうか?日本の子育て支援制度についてそれぞれ見てみましょう。
保育園と幼稚園の無償化が決定
今までは就園奨励費補助金や通園児補助金制度などで、園の費用の負担が軽減されていましたが、2019年10月より幼児教育・保育の無償化が行われています。
これにより幼稚園や保育園にかかる費用が無料となるため、子育てにおける金銭的な負担が軽減されるのではないでしょうか。保育施設を利用することで保護者の方は就労することができ、子どもは集団生活でさまざまなルールを学ぶことができるでしょう。
原則として、保育施設の利用料はすべて無料となりますが、一部上限金額が設けられていたり、対象外となるものもあるようです。幼稚園や保育所など利用する保育施設に、無料になるのか確認をした方がいいかもしれません。
児童手当
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児童手当は高等学校修了までの子どもに決まった金額が支給されます。
なお、児童手当は2024年10月より制度が拡充され、高等教育終了まで支給されます。大学入学直前まで支給されるというのは、子どもにもさまざまな選択肢を与えることができそうですね。
オムツ代などの出費が多い3歳までは1人15,000円、3歳から高等学校修了までは1人10,000円(第3子以降は30,000円)が支給されるので、子育て真っ最中の家庭にとってはありがたい制度といえるでしょう。
そのほか、ひとり親世帯のための児童扶養手当では所得によりますが、満額で45,500円が支給されます。
産前・産後休暇、育児休業制度
子どもに対する支援制度だけでなく、出産・育児をする労働者を対象にした支援制度もあります。
産前・産後休暇は、出産予定のある人を対象に出産前6週間、出産後8週間の休暇を取得できる制度です。休業中は、出産手当金が支給されます。
育児休業は、満1歳までの子どもをもつ保護者を対象に育児休業取得ができる制度をいいます。育児休業取得中は、育児休業給付金を受給することができます。
上記制度のほかにも、大学や専門学校などの高等教育の就学支援制度なども行っています。
子どもや家庭の状況によってきちんと手当が支給される日本は、世界的に見ても子育てしやすい国といえるのかもしれません。
海外の子育て支援制度
日本は幼児教育無償化をはじめ、少子化対策としてさまざまな子育て支援制度がほかにも考案されているようですが、海外の子育て支援制度にはどのようなものがあるのでしょうか。日本とは違う子育て支援制度について見てみましょう。
週3・週4勤務のオランダ
オランダは世界一子どもが幸せな国と言われていますが、その理由の一つはオランダの子どもがいる家庭の働き方かもしれません。
オランダでは「週3勤務」や「週4勤務」が珍しくなく、パパとママが平日にずらして休みを取り、子どもと過ごすことが多いそうです。
週3・4日だとパートタイム扱いになりますが、勤務日数が少ないからといってアルバイトや非正規社員と差別されることはなく、正社員扱いなのがこのオランダの働き方の特徴です。
また、オランダでは社会制度として子どもが家族の中心にいて、パパとママが協力しながら子育てをしている、という姿が多く見られるようです。
育休中の賃金がしっかり補償されるノルウェー
最近では、育児休業取得するパパも以前より増えてきましたが、それでもまだママと比べるとパパの育児休業取得は低い割合といえます。
ノルウェーではパパもママも育児休業を取得することができ、その休業中も賃金が80%〜100%補償される仕組みになっています。
そして子どもが1歳になったときには、ママやパパの仕事の有無や就労時間などに関わらず全ての子どもが保育園に通うことができるようです。子どもが、早い段階から集団生活のルールを学べるので、子どもにとっても成長の機会になりそうですね。
ノルウェーの保育園は働く親のためだけではなく、親の孤立放置を防ぐ役割も担っているようです。
働く時を自由に選べるイギリス
イギリスでは働き方にさまざまなチョイスがあり、パートタイム・フレックスタイム・ワークシェアリングなどの中から自分のライフスタイルに合わせた働き方を選ぶことができます。
子育て中は子どもの年齢に合わせて、小さいときはなるべく就労時間を短く、そして子どもの成長と共に時間を増やしていくママやパパが多いようです。
イギリス独特の「タームタイムワーク」という働き方は、子どもの学校に合わせることができ、夏休みや冬休みなどの期間は親もいっしょに休むことができるので便利で、多くの子育て世代の家庭でこの働き方が選ばれているようです。
夫婦で話しながら子育てしよう
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今回の記事では、海外と日本の子育て支援制度を比較し、子育てを取り巻く環境についてご紹介しました。
日本では家庭の状況に応じたさまざまな子育て支援制度が、国によって設けられています。子育てのしやすさにおいては比較的恵まれた国といえるのではないでしょうか。
ただ、海外と日本では夫婦の育児の関わり方や働き方などの社会制度が違い、その違いから子育ての楽しさやつらさの感じ方が変わってきているような印象を受けます。
今すぐ日本で働き方や夫婦間の子育ての状況を平等にすることはむずかしいですが、家族で話し合いながら少しずつ家事や子育てを協力し、子育てがしやすい環境、自分の時間が確保できる状況をまず家庭から目指してみてはいかがでしょうか。