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【小児精神科医監修】早期教育のメリットは?デメリットや子どものストレスサイン、早期教育のポイント
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小児科医/小児精神科医/医学博士
小児科医/小児精神科医/医学博士
青山学院大学 教育人間科学部教授。小児科医、小児精神科医、医学博士。日本小児精神神経学会常務理事、日本小児科学会学術委員、日本発達障害連盟理事、日本知的障害福祉協会専門員なども務める。著書に『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』『教育虐待・教育ネグレクト 日本の教育システムと親が抱える問題』(ともに光文社新書)などがある。
早期教育にはどのようなメリットがあるか、気になるママやパパは多いのではないでしょうか。子どもの特性に合わせて取り組むことで能力を高められることがありますが、逆にデメリットがある場合も。今回は、早期教育のメリットやデメリットのほか、早期教育の分野、注意したい子どものストレスサイン、早期教育のポイント、ママたちの体験談についてご紹介します。
早期教育とは
早期教育とは、小学校入学前の未就学児に対して、知識や技術の向上を目的に行われる教育のことです。
脳の発達が著しい幼児期から教育を始めると、能力を高めやすいという考え方から注目されており、日本では江戸時代以前から取り入れられていたという説もあります。
また、早期教育と混同されやすいものとして幼児教育があります。どちらも小学校入学前に受ける教育ですが、目的が異なっています。
早期教育の目的は、幼児教室に通ったり自宅に教材などを用意して、具体的な知識やスキルを習得する点です。
それに対し幼児教育は、小学校での学習に向けた基礎作りや社会性を身につけるのが目的で、幼稚園や保育園、家庭での教育など幅広い教育を指しています。
早期教育はどのような分野で行うか
早期教育は主にどのような分野で行うかについてご紹介します。
語学
グローバル化の時代において、広く活躍するために幼少期から外国語を聴かせるなど、早期教育をすることで、習得効果があると言われることから始める方も多いと思います。
数の勉強
3〜4歳になると、小学校入学を意識して数字の書き方や時計の見方、足し算など数の勉強を意識し始める家庭は多いのではないでしょうか。
早期教育では、計算に強くなると言われている「そろばん」が人気の習い事のひとつです。頭の中でそろばんをイメージして計算するため、右脳の活性化に有効であると言う説があり、集中力や記憶力が磨かれるかもしれません。
また、小学生に上がると、数学検定(数検)受検や、算数・数学オリンピック出場を目指して教室に通うケースなどもあるようです。
楽器演奏や情操教育
幼稚園や保育園などでは、鈴やカスタネットといった簡単な楽器に触れる機会しかないかもしれませんが、早期教育ではよりステップアップし、ピアノやバイオリンなどの楽器演奏を学ぶことも多いようです。
また、音楽を通じて体を動かし子どもの表現力を育むリトミックやバレエ教室のほか、コンサートや美術展覧会へ行き本物の芸術に触れる、絵画教室、本の読み聞かせといったような情操教育もあります。
スポーツ
スポーツの分野では、水泳や体操、フィギュアスケートといった全身を使う芸術性の高い種目を早期教育として行うほか、昨今は子どもの成長段階に合わせ、その子に合った強度の運動をさせる「マルチスポーツ(複数スポーツ)」を運動全般が得意になるように早期に始める方もいるようです。
マルチスポーツは、より多くの成功経験を積み重ねられる可能性があるため、子どもを運動好きに育てることができるかもしれません。
出典:早期教育等の状況について/文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo5/gijiroku/06112715/003.htm
子どもの脳はどのように発達する?
早期教育に関わる参考として、子どもの脳の発達ペースやそれに合わせた親子の接し方のポイントについてご紹介します。
子どもの脳の発達ペース
人間の脳は、年齢によって発達する部位が変わると言われています。
生後すぐ~2歳頃にかけては、後頭葉や側頭葉、頭頂葉など、視覚・聴覚・言葉の理解に関わる部分の発達が始まります。
3~5歳頃には、体の動きにかかわる頭頂葉の運動野が発達のピークに。小学生〜中学生頃には最後に前頭前野が発達し、この時期には考えたりコミュニケーションするなど、人間らしさにつながる高度な認知機能が発達します。
脳の発達に合わせた親子の接し方のポイント
子どもの脳の発達に合わせ、以下のような親子の関わり方を意識するとよいかもしれません。
また、幼児期には質の良い睡眠や栄養バランスのとれた食事も、脳の発達に深く関わると言われています。
子どもの良い所をどんどんほめて、やりたいことを楽しくやらせてあげるといった点も、知的好奇心を伸ばすことにつながるでしょう。
早期教育のメリット
早期教育のメリットについてご紹介します。
得意分野がみつかったり可能性を広げられる
早期教育の教室や教材を色々と体験してみることで、子どもは何に興味があり、何が得意なのか知る良いきっかけになるでしょう。
おとなしい性格だと思っていた子が、実は負けず嫌いだったなどこれまで気づかなかった意外な発見もあるかもしれません。
得意なことがみつかった場合は、より専門的な教育を受けられる教室などで集中して学ばせてあげれば、さらに能力を伸ばせるかもしれません。
自信がつきやすい
早期教育を通して色々なことができるようになると、子どもに自信がつきやすいでしょう。
自己肯定感が高まると、新しいことや難しいことにも積極的に挑戦しようとする意欲がわきやすいほか、自分の短所を受け入れて他人の事も許容できる人に成長するかもしれません。
小学校に上がったときに授業が理解しやすい
小学校入学前に、文字や数字の読み書きなど基礎学力が身についていれば、入学後の授業もスムーズに取り組みやすいでしょう。
先生にも褒めてもらえる回数も上がる可能性があり、それによって「もっと頑張ろう!」とやる気にもつながるかもしれません。
育児の相談仲間ができやすい
早期教育の教室に通う際、先生や他の親子と交流する機会が増えるため、ママやパパにとって育児の相談相手が見つかりやすいという点もメリットのひとつでしょう。
子どもがまだ小さく、他の人とコミュニケーションを取る機会が少ないママなどにとっては、楽しくリラックスできる時間になるかもしれません。
早期教育のデメリット
早期教育をすることで考えられるデメリットについてご紹介します。
自主性や想像力、積極性が抑制される
早期教育では、親や先生が子どもに一方的に課題を与えて、それをこなすといったパターンが多いかもしれません。
そうすることで子ども自身の本来やりたいことができず、自主性や想像力、積極性が抑制されてしまう場合もあるようです。
才能を維持するのが容易ではない
早期教育によって才能が秀でたとしても、それを維持し続けることは簡単ではありません。
成長するにつれてライバルとの競争も激しくなり、もし他の子に負けた場合に心が折れて大きく挫折してしまうこともあるでしょう。
周囲から浮くことがある
早期教育の内容によっては、人より優位に立つことや大人に評価されることが大切という偏った価値観が根付いたり、人と関わる能力が未熟で協調性がないまま成長してしまうケースも。
また、早期教育の勉強に熱心になりすぎて、お友だちと話が合わないこともでてくるかもしれません。
子どものストレスになる
親が過度に期待して教育が訓練になってしまうと、子どものストレスになるかもしれません。
また、知識を頭に詰め込むことに重点を置いた詰め込み式教育では、心身に与える負担が大きいという説も。その負担のために睡眠不足を引き起こし、慢性的な体調不良の原因となる場合もあるようです。
早期教育で注意したい子どものストレスサイン
早期教育が子どもに合っていない場合に注意したい、子どものストレスサインについてご紹介します。
病気ではない体調不良が続く
風邪などの病気ではないのに、腹痛や下痢、便秘、食欲不振、頭痛といった状態が続くようであれば、ストレスからきている体調不良かもしれません。
特に胃腸は、自律神経の影響を受けやすいため、胃腸に関連した症状はストレスサインの可能性が高いでしょう。
その他、皮膚がかゆい、じんましんが出る、寝つきや寝起きが悪い、突然のおねしょ、急に声を出したり動いてしまうチック症状なども代表的なサインです。
体に出るサインはわかりやすいですが、ストレスが原因であることに気づきにくいこともあるため注意しましょう。
自分で感情をコントロールできなくなる
イライラして反抗的な言動が増える、乱暴になる、大声で騒ぎ出すなど、普段とちがった様子が目立つ場合も注意が必要です。
このような行動は、子どもが自分で感情をコントロールできず、ストレスをなんとか表現しようとしている状態かもしれません。
こういったサインは「機嫌がわるいだけかな」「そういう性格なのかな」と思い見過ごしてしまうことも。普段から子どもとよく向き合ったり、園や学校で日頃どのように過ごしているか先生から話を聞いておくことで、ストレスサインかどうか気付きやすくなるでしょう。
早期教育を行う時のポイント
早期教育を行う時のポイントについてご紹介します。
子どもの個性と向き合う
子どもは、一人ひとりの性格や発達の程度が違うため、どんな遊びや勉強、運動が好きかは様々でしょう。
他の子と競わせた方がモチベーションが上がる子もいれば、逆にそうすることでプレッシャーに感じてしまう子、最初から前向きに取り組む子もいれば、最初は腰が重くても段々とのめり込んでいく子もいるでしょう。
そのような個性を理解したうえで、それぞれの発達段階に適した早期教育をさせてあげることが大切かもしれません。
子どもの好奇心や自主性を大事にする
早期教育は大人の意向で行うことが多く、過度にサポートしてしまう場合もあるため、子どもがやりたいようにできずにやる気が下がってしまうことがあります。
子どもの好奇心を維持するには、基本的には大人は適度に距離をおきながら見守って、子どもの自主性に任せるようにしましょう。
例えば、子どもに何かさせたい時に「公園で遊びたい?それとも家で勉強する?」など、子どもにやりたい方を選んでもらうことで、自信を持って行動に移すことができるかもしれません。
アウトプットの機会を積極的につくる
一方的に知識を詰め込みインプットするだけの教育だと、答えはわかってもなぜそうなるのか?といった深い理解まではできないかもしれません。
子どもに理解を促すには、受け身の教育だけでなくアウトプットの機会を積極的につくってあげるとよいでしょう。
例えば、問題を解いた時に「なぜこの答えになったのかな?」と子どもに説明してもらうなどです。
早期教育に関するママたちの体験談
ママたちの早期教育に関する体験談についてご紹介します。
3人子どもがおり、それぞれ保育園、幼稚園が終わったあと、早期教育のためにプールや体操教室、アフタースクールでアートや公文など色々習わせていました。
特に末っ子の通っていた園では、モンテッソーリ教育も導入していたので、そこでお仕事と呼ばれる教育を受け、そろばんや英語、ピアニカ、アートなど2歳くらいから色々と早期教育を受けていました。
追加申し込みでバレエや空手、造形教室なども併設されており、うちの子どもはやりたがりませんでしたが利用している家庭は多かったです
子どもたちに好きなことを深めて色んな興味を広げてほしいと思ったので、それぞれの特性を見ながら早期教育をしていました。あくまでも興味を広げることを優先して、特に結果は求めないように気をつけました。
早期教育は費用がそれなりにかかり、付き合う親も大変でした。正直、早期教育はその子の将来に大きく関わるとは思えませんが、やって良かった点は子どもたちとの幼少期を一緒に過ごせたことかなと思います。
あとは、子どもが成長していくうえで『あぁ、これは嫌いだからできなくても仕方ない』と親が納得しやすくもなりました
幼少期、早期教育として息子にスポーツを勧めたことがありましたが、うちの子はアクティブな子ではなく学習したいタイプの子でしたので、うまくはいかなかったです。
長女は、3歳でピアノとソルフェージュを習い始めてピアノも購入したのですが、本人がまったく興味を示さなかったので1年半で辞めました。高い稽古代だっただけにちょっともったいなかったなと正直思いました。
その後18歳になった娘に聞くと、やはりピアノは嫌だったそうです。手が細く長くてピアノ向きと言われている指を持つ子だったので『いける!』と思ったのですが、体の特徴がよくても本人が希望してないことはやっぱり無理ですね。親として反省しています。
末っ子は1歳で体操教室、2歳で音楽教室にも行きましたが、まったく見向きもしなかったので3カ月で辞めました
子どもに合った無理のない早期教育を試そう
早期教育には、メリットもデメリットもあります。早期教育を行う際は、子どもが楽しんでいない場合は無理強いしない、子どもが自分の力で取り組もうとしている時に必要以上に手伝わないなど、子どもの好奇心や自主性を保てるように工夫しましょう。
子どもの発達に合わせて、親子で楽しみながら早期教育を行うことができるとよいですね。
監修:
Profile
古荘純一
青山学院大学 教育人間科学部教授。小児科医、小児精神科医、医学博士。日本小児精神神経学会常務理事、日本小児科学会学術委員、日本発達障害連盟理事、日本知的障害福祉協会専門員なども務める。著書に『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』『教育虐待・教育ネグレクト 日本の教育システムと親が抱える問題』(ともに光文社新書)などがある。
息子が自分からやりたいと言い出して、3歳でサッカーを始めました。わざわざ通うスクールだと送り迎えする私の負担が大きくなってしまうため、幼稚園併設のサッカークラブで習わせています。
サッカーを早期に始めたメリットは、他の子より早くルールやポジショニングを覚えるので自己肯定感が高まることだと思います。
逆にデメリットは、他のスポーツもやらせてみたかった、サッカーを休んででも自然の中でワイルドな遊びをもっとさせたらよかったなど、多くの時間がサッカーに割かれてしまったことです。
今までに、子どもがサッカーを辞めたいと言ったことは一度もなく、ストレスサインらしきものも特にありませんでした