食育で子どもの好き嫌いを克服。年齢別の傾向と対策や体験談

食育で子どもの好き嫌いを克服。年齢別の傾向と対策や体験談

食育を通して、子どもの好き嫌いを克服していきたいと考えるママやパパもいるのではないでしょうか。好き嫌いが多いと栄養が偏らないか心配になることもありますよね。今回は食育を通した好き嫌いの克服方法や、好き嫌いのパターン、デメリット、年齢別の好き嫌いの傾向と対策、ママたちの体験談をご紹介します。

食べ物の「好き嫌い」とは

野菜を好まない女の子
※写真はイメージ(iStock.com/gpointstudio)

食べ物の「好き嫌い」とは、食べ物を選り好みしていることを指します。人によっては、嫌いでも少しであれば食べられる時があったり、成長したり時間が経過することでいずれ食べられるようになるケースもあるでしょう。
また、好き嫌いと似ている言葉で「偏食」がありますが、 こちらは特定の食べ物に対する好き嫌いがはっきりしています。ご飯やお肉だけなど、好きな物しか食べないとても偏った状態を指し、こういった場合は体に必要な栄養素が不足しやすくなることもあります。


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子どもの好き嫌いにはパターンがある?

子どもが好き嫌いをする場合、以下のようにある程度決まったパターンがあると言われています。

酸味と苦味に対し拒否反応をする

子どもの好き嫌いの傾向としてまず、食べる本能にもとづいた自然な拒否反応であることがあります。
食べる本能には「エネルギーを得る、危険なものを食べない」などがあり、子どもの味覚として本能的に好むものは、自然界で安全、高栄養の印とされる果物や野菜の甘みや、魚や動物の旨みの味であることが多いです。
逆に酸味や苦味のあるものは、自然界でも腐敗や毒のサインである場合があり、大人よりも味覚が鋭敏な子どもは体が拒否反応を示して、受け付けないことがあります。

食感や温度、香り、見た目が苦手

味覚以外にも、以下のように食材の食感や料理の温度、香り、見た目が好みに合わず好き嫌いをしてしまうこともあります。

・食感
もそもそ、グニャグニャ、どろっとしたものなど食感に特徴がある食材で、口に入れた時の不快感から苦手

・温度
大人が適温と思っていても、子どもにとっては熱すぎるなど適温ではないために苦手

・香り
シソ(大葉)、ニンニクなど、香りが強い食材が料理に入っていたりすると苦手

・見た目
食べ物の色や形、大きさなどの見た目、盛り付けが苦手

子どもは初めて見る慣れていないものに警戒心を抱きやすいです。何となくおいしくなさそうという理由で、一度も食べたことがないものを嫌いと判断して食べない「食わず嫌い」もよくあります 。
加えて、まだ噛んで飲み込む力も未発達のため、硬いものやパサつくものは食べにくく、嫌うことがあります。

また、このような苦手意識は成長するにつれてなくなることもあり、逆に大好物になることもあるでしょう。

体が欲していない

小さい子どもは大人に比べると胃の容量が小さいです。そのため、例えば好きな食べ物だけを最初に食べて満腹感があると、他のものが食べられなくなってしまうことはよくあるでしょう。また、眠かったり体調がわるくて体が食べ物を欲していない場合も、食べないように避けることがあります。

 同じ物をたくさん食べたのでもう食べたくない、味に飽きていたり必要性を感じない場合も好き嫌いをしやすいでしょう。

何かのきっかけで嫌いになる

今まで好物だったのに、何かのきっかけでその食べ物を嫌いになることもあります。

例えば、食べた後にお腹が痛くなってしまったなど、過去のトラウマによって苦手に感じてしまったり、種や皮、骨が入っていたり食べる工程が大変なために苦手に感じることもあるでしょう。また、 家族や友達が嫌いと言っていたから自分も食べたくない、家族以外の作ったものは食べられないといった場合もあります。

好き嫌いによるデメリット

子どもが食べ物を好き嫌いすることによるデメリットとして、嫌いな食べ物があると摂取できるものが限られ、不足する栄養素を補う食べ物が必要になることもあるでしょう。摂りたい栄養素の代わりになる食べ物や、3回の食事のほかおやつで補う工夫も大切になります。

また、特定の好きな物だけ食べていると、食生活が単調になり飽きやすく食事を楽しめなくなる場合もあるようです。

「食育」で子どもの好き嫌いは克服できるのか?

トマトを収穫する子ども
※写真はイメージ(iStock.com/ziggy_mars)

「食育」とは、子どもから大人まで、あらゆる世代の方が食に興味を持って大切さを実感し、生涯にわたって健康的な食生活を送れるようにするための教育です。2005年には政府によって食育基本法、2006年には食育推進基本計画が制定され、保育園や幼稚園、学校などでも食育が推進されています。

食育では主に、栄養価の高いものを食べるだけではなく「楽しい」と思えるような体験をすることが重視されています。それを通じて食意識が向上したり、食について家族とのコミュニケーションが増えたりと食に興味を持ちやすくなるケースが多いため、好き嫌いの克服にも効果的かもしれません。 

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食育を通した好き嫌いの克服方法

食育を通した好き嫌いの克服方法についてご紹介します。

苦手な食材を使って自分で料理する

子どもが好き嫌いする食べ物として、代表的なのは野菜です。特に、味や食感が特徴的なピーマンやナス、グリンピース、トマト、アスパラ、しいたけなどが苦手な子は多いのでは。「食育」を意識して野菜に接する時間を普段からつくり、野菜を身近に感じてもらえるような工夫をしましょう。

 例えば、子どもの苦手な野菜を使って親子一緒に「ちぎる、混ぜる、カットする」といった簡単な調理をしてみます。
最初のうちは使用する嫌いな食材は少量だけにして、ケチャップ、マヨネーズ、ソースなど子どもが好きな味つけや食べ物との組み合わせで料理してもよいでしょう。

 できあがった料理を食べながら「この野菜にはこんな栄養があるんだよ」といった食材の良い効果などを伝えながら、親子で会話を楽しむことも大切。また、子どもが嫌がっているのに無理やり苦手な食材を使おうとすると、より嫌いになってしまうこともあるため注意しましょう。

自分で栽培、収穫する

保育園や幼稚園、小学校などでは、子どもが自分たちで野菜を栽培・収穫する食育活動も盛んです。

実際に自分が種を植えたり成長を観察した野菜は、子どもたちもより身近に感じられ「食べてみよう」という気持ちを引き出しやすいでしょう。

また、家庭でも畑やプランターで野菜を栽培したり、果樹園や農場へ果物・野菜狩りに家族で行ってみるのもおすすめです。試食ができる所であれば、いつもと違う採れたて野菜の味を知ることができます。

食育向けの絵本や動画、歌で遊ぶ

食べ物や料理がモチーフとなった絵本や紙芝居、動画、手遊び、歌を使った食育で、好き嫌いを克服できることもあります。野菜など子どもの苦手な食材が登場、活躍する内容で、かわいくて美味しそうなイラストや動画を見たり、面白いセリフや歌を声に出したりして楽しい経験をすると、興味や愛着も湧きやすいのではないでしょうか。

 作品に登場する料理やお菓子を、実際に作ることができるレシピ本を活用したり、キャラクターをグッズ化したおもちゃやぬいぐるみで遊ぶのも、より作品の世界観を味わえるでしょう。

 どの作品を選ぶとよいか迷う時は、七夕やクリスマス、ひな祭りなどその時期の行事に合わせて選んだり、保育園や幼稚園で人気の作品を先生に聞いてみてもよいかもしれません。

味覚教育に参加してみる

味覚の形成に大切な時期である11歳頃までの子どもを対象に、食に対する興味を引き出したり五感や表現力を豊かにする食育「味覚教育」も、好き嫌いの克復によいかもしれません。

食品を購入する際、天然素材を中心に選ぶ

普段、家庭の食事で使う食品を購入する際に、天然素材を中心に選ぶことも食育のひとつであり好き嫌いの克服に役立つかもしれません。
市販食品には、添加物や白砂糖などで甘みや油脂を強調して作られた、自然界にない味のものが多いです。

こういった味に子どもが慣れると、味覚が鈍感になったり市販の強い味でないとおいしいと感じなくなり好き嫌いが増えることがあるようです。

お菓子や加工食品、調味料の使いすぎには注意し、どうしても使う際は、成分表示をみてできるだけ天然素材を中心にした、昔ながらの製法で作られたものや自然の甘みをもとにしたものを選びましょう。

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【年齢別】子どもの好き嫌いの傾向と対策

子どもの年齢別に好き嫌いの傾向と対策についてご紹介します。

0~1歳頃の離乳期

0~1歳頃までの離乳期は、まだ食の経験が少ないため食べ物の好き嫌いは少ないと言われています。
離乳食を口に運ぶと拒否する場合は、その食材が嫌いというわけではなく、産まれてからミルクや母乳しか口にしてこなかったことによる食わず嫌いかもしれません。

この時期は、食べることへの興味や、手でつかんで口に運ぶ動作を楽しみながら食べることが大切でしょう。
また、飲み込みやすくとろみをつけるなど、ひとりひとりの発達に合わせて食べやすくする配慮も必要です。

一般的なマニュアルに記載されているような時期別の食べ方ができないことを、好き嫌いととらえる保護者も多いため、この時期は個人差が大きいということを認識しておく必要がありそうです。

1~2歳

野菜を食べる子ども
※写真はイメージ(iStock.com/)

1歳をすぎると、食べ物の味がよくわかってきていても、まだ嗜好は定まっていない可能性があります。また、離乳食が完了しても、歯茎が生えそろうまでは硬いものを食べることは難しく、大きさやかたさが合わずに食べられない場合もあります。そのため、食べず嫌いで好き嫌いをしてしまう可能性もありつつ、純粋にまだ食べられないというケースもありえるでしょう。

無理やり食べさせようとすると、子どもが食べること自体を嫌いになってしまうことも。焦らずに「この頃はそういう時期なんだ」と考えポジティブに捉えるとよいでしょう。

 子どもが好きな味つけやとろみを加えて調理方法の工夫をしたり、大人がおいしそうに食べる姿を見せて「ごはんの時間は楽しい」と思える工夫をしたというママの声もありました。

2~3歳

2~3歳頃になってくると、子どもが自我を持ち、少しずつ言葉で自分の欲求を伝えられるようになるため、好き嫌いが増えてくるケースが多いようです。食べる能力も発達してきて、今まで飲み込んでいたものを味わえるようになってくると、好みに合わない食べ物もあるでしょう。

好き嫌いをする場合は、カレーやチーズなど子どもに好まれやすい味付けにしたり、盛りつけの見た目をかわいらしく工夫すると、食べる気になってくれるかもしれません。

 4〜6歳

4〜6歳頃になると、大人と同じような食事ができるようになってきて、好き嫌いがはっきりしてくる子もいるでしょう。幼稚園などに通い始めたり、弟や妹ができたりと環境の変化も起きやすい時期のため、不安定になって小食や偏食傾向になるケースもあるようです。

好き嫌いが多い場合は、まずは嫌いな理由を子どもに聞き、調理法や盛りつけを工夫してみたり、食事前におやつを食べすぎないことなども対処法のひとつです。

また、家では小食でも、園ではしっかり昼食を食べているというママの声もありました。先生から話を聞いて、問題なさそうであれば家で無理して食べさせなくてもよいかもしれません。

小学生

小学生になると、食べ物の好き嫌いが定着してくる子もいるのではないでしょうか。

習い事などで帰りが遅くなり食事の時間がずれる、間食や夜食をとるなど生活習慣の乱れが好き嫌いの原因になったり、子どもだけで食事する孤食や、家族それぞれで食べているものが異なる個食が該当することも。

三食規則正しく食べ、十分な睡眠をとれるように生活スケジュールを見直してみるほか、食育として子どもが料理や野菜作りを体験して食について理解を深めることも、好き嫌いの対処法になるかもしれません。

友達が食べているから真似して自分も食べるといったように、友達の影響で好き嫌いを克服することもあったというママの声もありました。

好き嫌いについてママたちの体験談

採れたての野菜を受け取る子ども
※写真はイメージ(iStock.com/Yana Tatevosian)

食育を通した好き嫌いの克服についてママたちの体験談をご紹介します。

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 食育といえるのかわからないですが、ひとつ効果的だったことがあります! 子どもたちは全員、小松菜とかほうれん草などの野菜が苦手なのですが、ふと思いついて、ありとあらゆる調味料を並べて、『なんでもいいから好きなオリジナルタレを作ってみよう!』とやってみました。 例えば、ケチャップ+ポン酢+だし醤油+砂糖など大人ではやらないような組み合わせでやっていました。できあがったタレは子どもたちにとっては美味しく感じたようで、『自分のが一番おいしい』とみんなで自慢しながら、小松菜のおひたしを完食していました!毎回やったら飽きると思うので、あまり頻繁にはできませんが、我が家の子どもたちは3人とも効果があったのでおすすめです。

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長男はチーズが嫌いなのでピザはあまり食べないのですが、プレーンのピザを買ってきて好きなようにトッピングさせたら、チーズも一緒に食べてくれました。ただトッピングして食べるだけなんですが『ピザパーティーしよう!』などと言うことで、テンションを上げてくれます。

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うちの子は好き嫌いが多いです!とはいえ、私も夫もあまり子どもに寄せたメニューを出さないためでもあり反省しています。 最近では、子どもに『自分の食べたいものを自分で作ってみたら?』と提案しています。いきなり全部任せるのは難しいので、一緒に食材の買い出しに行くことから始めて、食への興味を持ってもらい、好き嫌いが少なくなればいいなと思っています。

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子どもが野菜や肉を残したときに、それらがどのように作られるのかを解説するYouTube動画を見せたことがあります。お肉はショックを受けていたようでしたが、その後残す頻度は減った気がします。

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子どもたちには好き嫌いがなく、食べるのも料理も好きなのは、小さい頃からいっしょに料理をしていたからかもしれません。ピザ生地とか肉まんの生地をこねるのは、子どもたちはかなり好きでした。あとは家に人の出入りが多く、しょっちゅう大人数で食事や飲み会をしていました。

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うちの娘は赤ちゃんの頃からかぼちゃが苦手だったのですが、保育園の畑でかぼちゃを育てたり、ハロウィンパーティーを楽しんだり、可愛いかぼちゃのキャラクターのぬいぐるみと遊ぶことなどを通して、かぼちゃをとても好きになったようです。5歳の今では、食事に出てきても特に嫌がらずに食べるようになりました。

子どもの好き嫌いは無理せず見守ろう

野菜を食べる親子
※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

子どもの好き嫌いには、生理的な拒否反応から食わず嫌い、何かのきっかけで嫌いになるなどさまざまな理由があります。

 好き嫌いは子どもの成長段階だと考え、少しずつ色々な味に慣れていけるようあたたかく見守ってあげられるとよいでしょう。一方的に無理に食べさせようとすると、その後の親子関係や人格形成に影響が出るケースもあるため注意が必要です。

 また、今回ご紹介した、食育を通した好き嫌いの克服方法を試す際は、子どもの様子を見て効果が期待できそうな食材や方法から試してみるとよいかもしれません。


親子で食事を楽しみながら、少しでも好きなものが増えて豊かな食生活をすごせるとよいですね。

Profile

中村美穂

中村美穂

管理栄養士・料理家。保育園栄養士として乳幼児の食事作りや食育活動、地域の子育て支援事業に携わる。その他にもフードコーティネーターや国際薬膳調理師など、食と栄養に関する様々な知見を持ち、子どもから大人まで、楽しみながら健康につながる食育に取り組んでいる。 離乳食・幼児食教室、食育講座等の講師のほか、各種メディア出演・監修、企業向け商品開発監修、書籍/雑誌/広告/生協カタログの監修・レシピ提供・執筆・撮影調理およびスタイリング等を行う。2009年より、料理教室「おいしい楽しい食時間」をスタートし、現在は キッズクッキング、ローフード・ロースイーツ講座を中心に開講している。2児の母。

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