注目度が高まるオルタナティブスクールとは。日本での現在とこれから

注目度が高まるオルタナティブスクールとは。日本での現在とこれから

オルタナティブスクールとは、文部科学省が制定する学校教育にとどまらない独自の教育を取り入れている学校を指します。海外では広く認知されていますが、日本での現状はどうでしょうか。一般的な定義や、教育の未来を担うエレメントとしてのオルタナティブスクールについてまとめました。

オルタナティブスクールとは

オルタナティブスクールとは、公的な学校教育のシステムに捕らわれない独自の理念や手法を持つ「オルタナティブ教育」を取り入れた学校の総称として用いられています。

では、オルタナティブ教育とは具体的にどんな分野を指すのでしょうか?

「オルタナティブ」という語句は「代替の」「対案」「二者択一」と訳されます。

言葉としては音楽・芸術や投資などさまざまな分野で使われており、その場合は「(伝統に対する)新しい選択肢」といったニュアンスで用いられています。

「オルタナティブ教育」も、その意味合いで流通している言葉と考えてよいでしょう。

オルタナティブ教育を取り入れた学校は世界中で展開されており、特に憲法の規定で「教育の自由」が保障されているオランダはオルタナティブ教育が盛んな国と言われています。

オランダにおけるオルタナティブ教育は、20世紀初頭から欧州を中心に広まったモンテッソーリ教育・シュタイナー教育・ダルトン教育・イエナプラン教育・フレネ教育といった独自の教育手法を取り入れていることが多いようです。

出典:【オランダの教育】個性と社会性を育む“オルタナティブ教育”

日本でのオルタナティブスクールの考え方

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iStock.com/Milatas

日本の公教育では、文部科学省が制定した標準教育の実施や設置基準、教職員の配置など教育内容から運営に関する内容まで多くが学校教育法によって定められています。

これらに基づく教育機関は公立・私立ともに学校教育法の第1条を満たしていることから「一条校」と呼ばれます。

はっきりとした定義はないものの、日本におけるオルタナティブスクールは、一般的にはこの一条校以以外の学校を指すことが多いようです。

一例として、不登校児を対象にしたフリースクールや、英語教育を主眼に置いたインターナショナルスクールなどがそれに該当するでしょう。

では、あえてオルタナティブスクールを選ぶのは、どういった状況が考えられるでしょうか。

【オルタナティブスクールのニーズ例】

・オルタナティブ教育の理念への共感がある

・子どもの自主性を伸ばしたい

・インターナショナルスクールで国際教育プログラムに基づいた学校教育を受けたい

・子どもが通学中の学校で不登校になったため学習機会を保障したい

上記のような家庭や子どもの状況によって、オルタナティブスクールは選択肢のひとつとして最適な受け皿になっています。

出典:文部科学省の概要/文部科学省

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日本で期待される教育におけるオルタナティブスクールの未来

児童や保護者サイドのニーズだけでなく、人材教育の観点から国としてもオルタナティブスクールへの関心は高まっているようです。


経済産業省が2012年に公表した「教育イノベーション小委員会学びの探究化・STEAM化WG基礎資料集」において検討されているのが、学校における学習環境を新たに再設計し、児童・生徒にとっての「場の選択肢」を拡充する計画です。

これには、オルタナティブスクールが果たしてきた役割と密接な関係があると言えます。

具体的には、異才(ギフテッド)と呼ばれる子どもや、発達特性の強い子どもなどが十分に力を発揮する場をつくる手段として、オルタナティブスクールと一条校などの教育機関が連携できる制度の見直しが提案されています。

また同資料において、学校教育との競争・協創によって「教育イノベーションの創出」に不可欠な要素としてオルタナティブスクールの発展が期待されていることも、この一環と言えるでしょう。

これら以外に、現状のオルタナティブスクールに対する国や行政の制度にも問題提起がなされています。


同じく経済産業省による資料「第3回『未来の教室』とEdTech研究会」によると、一部のオルタナティブスクールに通う子どもに対する受験制度の不備や、通学定期を購入できない現状への問題点が指摘され、法整備や行政の改革が求められています。

このように、オルタナティブスクールは単なる「学校以外の受け皿」としてだけではなく、学校教育の問題点を解決する重要なファクターとして非常に注目されていることが分かります。

出典:第3回「未来の教室」とEdTech研究会/経済産業省

出典:産業構造審議会教育イノベーション小委員会学びの探究化・STEAM化WG基礎資料集/経済産業省

出典:産業構造審議会教育イノベーション小委員会2022年3月18日事務局資料/経済産業省

子ども主体の教育が叶う、オルタナティブスクールを選択肢に

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iStock.com/Hakase

オルタナティブスクールについて、国内外の教育内容から、日本における一般的な定義とニーズについて見てきました。また、国としてオルタナティブスクールへの注目度が高まっていることも分かりました。

多種多様な理念や教育内容で展開しているオルタナティブスクールは、都心部だけでなく地方にも多くあり、全国から児童・生徒が集まっている現状もあるようです。

オルタナティブ教育に興味がある、子どもの主体性を伸ばす教育を受けさせたいと感じている家庭なら、オルタナティブスクールをひとつの選択肢としてみると視野が広がるかもしれません。

2024.02.12

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