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steam教育とは。今さら聞けない基本から未来の人材育成について
steam教育と聞いても「ITに関する教育のこと」「プログラミング」といったあいまいな認識でいる方も多いのではないでしょうか。日本だけでなく世界で重要視されている理由、基本となったstemとの違いなどをひもときながら、steam教育の基本とこれからを見ていきましょう。
steam教育とは
steam教育とは、理系や文系の枠を横断して学ぶことで、課題を発見し解決する能力を育成するための協働的な学習分野です。
「steam」は、それぞれ以下のカテゴリーの頭文字から成り、「スティーム」と発音します。
【s】Science(科学)
【t】Technology(産業・技術)
【e】Engineering(工学)
【a】Arts(芸術・リベラルアーツ)
【m】Mathematics(数学)
2013年にアメリカで国家戦略として提唱されたことを皮切りに、IT技術やAIの急激な進化によりヨーロッパやアジアなど全世界的に必要性が注目されることとなりました。
日本でも、2020年に政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2020について」で、初等教育から大学改革に至る教育・研究の分野においてsteam教育が主要施策として明記されました。
これを受けて、文部科学省、経済産業省などが主幹となり、学びのsteam化が教育・人材育成のビジョンにおける柱として位置づけられています。
未来の人材育成という観点からも、問題発見・課題解決・創造力の醸成に応える教育として、産業界や教育現場でsteam教育のためのプラットホームの構築が必要とされています。
stem教育とsteam教育の違い
「stem教育」という言葉を見聞きして「stemとsteamの違いは?」と首をかしげる方も多いのではないでしょうか。
簡潔には「stem」に「arts」の「a」を追加することで、よりクリエイティブに学ぶ要素を強めたものがsteam教育です。
そもそもは、科学技術の素養や論理的思考力を司る「科学・技術・工学・数学」(stem)の要素を横断的に学ぶことが必要とされてきましたが、それらに芸術などを含む広義でのリベラルアーツ(a)を組み込んだことで「steam」となりました。
2020年に経済産業省が公表した.steam教育などを取り入れた教育改革プランの実証報告書では、stemからsteamへの進化について以下のように記述しています。
“
STEMからSTEAM(S)へ、加えて“Playful” が重要な要素 「科学を学ぶ」ではなく、「科学者のように夢中になる」
出典: 出典:経済産業庁「「未来の教室」とEdTech研究会STEAM検討ワーキンググループ中間報告」
科学・工学分野を基盤とし、現実社会の問題を認識して問いを立てる「stem」。
それらにartsの「a」が加わることによって、言語や歴史などを含めた人文学や芸術の素養を通じて自由に解釈・思考するプロセスが生まれ、課題に対する創造的な解決を導き出す能力の育成につながると考えられています。
steam教育がもたらすもの
科学分野の知見を身につけるとともに、美術・音楽・文学・歴史に関わる学習を取り入れるsteam教育は、IT分野にとどまらずあらゆるカテゴリーで未来の人材育成教育として取り入れられています。
文部科学省が2020年度に実施した「産業競争力懇談会」の報告書では、未来の人材育成という観点における学校教育の課題についての見解が示されています。
ここでは、日本の教育における人材育成の課題について触れ「国際的に単元教科の能力は高いが、イノベーションの創出の点では十分でない」こと、さらに「教科・科目毎の個別リテラシーがイノベーションにつながっていない」という問題点が指摘されています。
その上で、今後の教育における核となるのがsteam教育と位置づけ、初等教育から総合的な探究の時間を持つなど、幅広いsteam教育の展開が必須であると明記しました。
教育過程におけるsteamの学びの流れとしては、以下の3つが循環するモデルが考えられています。
・発見/刺激
テーマや人との出会いを通じ学習者の興味関心が触発され、学ぶ動機が生まれる。
・探究/創造
テーマや問いに対し試行錯誤をしながら考えを組み立て、成果物を創りあげる。
・発表・共有/振り返り
学習の成果を共有し振り返ることで、学びに活用した知識や技能が結果という形で可視化される。
この3つのプロセスが循環することで互いに刺激しあう学びとなり、主体性を持ちながら他者との対話によって学びが深められることが期待されています。
文理の融合でイノベーションを生み出すsteam教育
理数的思考に創造性を統合した教育手法として、これからの社会を生きる上で不可欠と言われるsteam教育。
初等教育から大学での学び・研究に至るまで、学習段階に応じたさまざまなプラットホームの構築や学びの機会創出が行なわれています。
人材育成という観点からも高い注目が集まるsteam教育の効果はまだ未知数。しかし、課題解決へのスキルとリテラシーを兼ね備えた未来の人材を育てるニーズは、今後ますます高まっていくでしょう。