【専門家監修】音読の5つの効果と進め方のポイント!おすすめの音読本や体験談も

【専門家監修】音読の5つの効果と進め方のポイント!おすすめの音読本や体験談も

小学校の宿題によく出る「音読」には、どのような効果があるのか気になる保護者は多いのではないでしょうか。今回は音読の効果や、幼児期の音読の進め方、音読が苦手な子どもへのアプローチ方法や、おすすめの本、体験談を紹介します。

子どもは言葉をはじめはひたすら耳から覚えていきます。言葉は音でありリズムであり音程なのです。だから誰もがスイスイ覚えていきます。

しかし学校に行くと、耳ではなくて目で言葉を覚えることが課されます。これは大量の新しい言葉を覚えさせる方法なのですが、あまり効率がよくありません。

そこでもう一度「耳と目と両方使って言葉と接し覚えていく」ということを子どもに体験させるという方法が思い浮かびます。これが音読です。

幼児期から、言葉を耳と目から覚えていく、味わっていくという体験をぜひさせてあげてください。

「音読」の5つの効果

小学校の国語の授業や、宿題で教科書の音読を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。音読にはどのような学習効果があるのか見ていきましょう。


1.語彙力・読解力が上がる

音読は、文章を読みながら同時に自分の耳で聞いていることにもなります。言葉を聞き、発音し、何度も反復することによって、新しい単語やフレーズを学ぶ機会が増え、子どもの語彙力は向上します。

語彙力が増えることにより、子どもは言葉と文章の関係が理解しやすくなり、文章の意味を把握する読解力の向上にもつながるでしょう。

また、音読は文章のリズムや文法構造を理解するのに役立ちます。子どもが音読を通じて文章を繰り返し読むことで、文脈や文法的な構造が理解しやすくなります。


2.脳の働きが活発になる

音読では聞く、発音する、理解するなど、複数の言語的な能力が同時に働くため、脳の言語処理領域を活性化させ、繰り返し音読を行うことによって、さらに脳の働きを活発にします。

また、音読は脳内で少し前の情報を覚えて、繰り返し処理することで文脈を理解することができるようになるため、ワーキングメモリの活性化にも関係しています。


3.集中力が高まる

※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)
※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)

音読は注意力の制御や調整に関係している脳の前頭前野を活性化します。注意力が高まることで、言語情報をより正確に処理することができ、学習効果も高まっていくでしょう。

また、別のことを考えながら音読するのは難しいため、音読は子どもの集中力を高めることもできます。


4.コミュニケーション能力が高まる

繰り返し音読することによって、子どもはさまざまな表現力を身につけます。そのため、音読の習慣のある子どもは他の人とコミュニケーションを行う時に、より適切な言葉を選び、自分の意図を正確に伝えることができるようになるでしょう。

また、音読の習慣で身につけた文脈理解の力で、他の人が話す内容が理解しやすくなり、コミュニケーションを円滑に進めることにもつながります。


5.滑舌がよくなる

正しい発音を行うためには、舌や口の筋肉を正しく使う必要がありますが、音読によって口や舌の筋肉が鍛えられ、柔軟性や発音の正確さが向上し、滑舌がよくなります。

また、滑舌がよくなることによって、子どもは自信を持って言葉を発することができるようになるでしょう。

音読と朗読の違い

音読とは、文章を声に出して読むこと。正しく、はっきり、すらすらと読むことを目的としています。

音読も朗読も、文章を声に出して読むことは同じですが、聞いている人に文章のイメージを想起させる読み方が朗読です。

幼児の音読の進め方

小学校で行うイメージのある音読ですが、幼児から音読を始めることはできます。幼児期の音読の進め方についてご紹介します。


日常的に「ひらがな」に触れさせる

※写真はイメージ(iStock.com/EikoTsuttiy)
※写真はイメージ(iStock.com/EikoTsuttiy)

まずは、ひらがなを読むことから始めましょう。ひらがな表を壁に貼り、日常生活の中でひらがなに触れる機会を作るとよいかもしれません。

ひらがなの書いてある積み木などのおもちゃや、かるたなど、遊びの中にひらがなを取り入れてもよいでしょう。ひらがなを読めるようにして、音読を始めるための下地を作ります。


追い読みをする

一音ずつひらがなが読めるようになったら、文字を一字一字たどる拾い読みができるようになります。

次の段階では、保護者が読んだ後に子どもが読む、追い読みを取り入れてみましょう。ポイントは文節ごとに短く区切って読むこと。こうすることで、子どもは一つ一つ独立していた文字を、言葉のかたまりとして認識しやすくなります。


できたことを褒める

音読を始めて慣れるまでには時間がかかります。途中で詰まったり、飛ばしたり、間違えることもあるでしょう。

しかし、楽しく音読を続けられるように間違いを叱ることはせず、さりげなく「〇〇だね」と教えてあげるとよさそうです。読み終わったらできるだけポジティブな言葉がけをして子どもの意欲を高めることも大切です。


向き合って音読を聞く

子どもが音読をしている時は、なるべく子どもの目の前に座り、向き合って音読を聞くようにしましょう。子どもは「聞いてもらっている」ことで、音読のモチベーションが高まります。

忙しくてどうしても向き合えない場合でも、聞いている姿を見せ、読み終わった後に感想を伝えるとよいでしょう。

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音読が苦手な子どもへのアプローチ

※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)
※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)

中には、音読を嫌がる子どももいるかもしれません。その場合は、無理強いせず、子どもが楽しめる要素を取り入れるとよいでしょう。

たとえば、物語の登場人物になりきって声を出したり、音読を行う際にジェスチャーや身体の動きを取り入れたり、子どもが関心を持っているジャンルの本を選ぶなどの工夫を試してみてはいかがでしょうか。

また、音読が苦手な子どもには、まずは短い文章や単語から始めて、ゆっくりと段階的にアプローチすることも大切です。少しずつ長く、難易度が上がることで子どもの成功体験につながり、音読が好きになるかもしれません。

おすすめの「音読本」

子どもの音読におすすめの本や、音読のポイントや効果を解説した保護者向けの本を紹介します。


頭のいい子を育てる 名作おんどく366

感受性や想像力を高め心を豊かにする名作、詩や古典、百人一首など、バラエティに富んだ作品が揃い、1日1話366日、日替わりで音読を楽しむことができます。子どもの頭と心をバランスよく育む、名作の音読をこの一冊から始めてみては。


5~6歳 楽しみながら脳を活性化させる おんどくれんしゅうちょう

十二支や春の七草などの知識、日本昔話や童話、ことわざ、だじゃれやオノマトペなど、保護者が子どもに読ませてあげたい文章を厳選した音読ドリルです。読んだら貼れる「がんばりシール」も付いていて、楽しみながら音読を続けられる工夫も。小学1年生の教科書に対応しているため、入学準備にもぴったりの一冊です。


どんな子も話し方に自信がつく! 小学生の 「音読」 上達レッスン 滑舌&伝える力が伸びる基礎練習ドリル

この本では、相手に届く声の出し方や、はきはきとした明るい話し方など、音読を通して話す楽しさを知るための技術が書かれています。話し方&アナウンス講師でジュニアアナウンサークラブを主宰する著者が、話し方に自信がつく一日5分のトレーニング方法を紹介します。


子どもの学力がグングン伸びる古典音読

全学級が崩壊し、学力は底辺レベルだった地方の小学校が、古文の音読暗唱を繰り返し実践したことで、わずか4年で全国平均を遥かに上回る優秀校に生まれ変わるまでの軌跡を描いた一冊。巻末には、古典音読テキストと、音読の大切なポイントを説いた解説も付いています。

【体験談】子どもの音読の感想は?

他の家庭ではどのように音読を行っているのか気になりますよね。子どもの音読の体験談を聞きました。

 
 

一年生の二学期あたりから、宿題で毎日音読があります。長女は音読を面倒そうにやるタイプなのですが(笑)、ちゃんと感情を込めて読むので、まだまだかわいいところもあるなと思う貴重な時間です。

 
 

5歳の娘が、ぬいぐるみに向かって絵本を音読をしていました。大人の真似ができるシチュエーションや、面白い発音(英語など)の単語があると小さい子でも積極的に音読をするのだと思います。

音読で何かいい効果があるかは、まだわかりませんが口に出すとストレス解消や単語を記憶しやすいなどあるかもしれません。

 
 

普段、あまり本を読まないので、音読の宿題があるのは助かっています。

普段はあまり使わないような表現など、変な発音で読んでいますが、それを指摘する機会にもなるので、音読はいいなと思っています!

 
 

娘が1歳のときからよく読んでいる絵本があるのですが、文字は読めないはずなのに、何度も読んでいるうちに内容を覚えたようで、家族相手に絵本を読んでくれるようになりました。

その様子を見ながら、まずは親が絵本を読み聞かせることで、子どもが言葉を吸収し(絵と言葉がつながる)覚えて、今度はそれを自分で読む、という経験でアウトプットして、語彙力をどんどん増やしているのかなと思っています。

最近は、本来の絵本の内容とは少し違い、自分なりにお話を作りながら読み聞かせをしてくれるので、創造力というのも鍛えられているのかなと感じています(笑)。

さまざまな効果のある音読を子育てに取り入れよう

※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)
※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)

音読には、語彙力や読解力、集中力、コミュニケーション能力の向上など多くの効果があるようです。音読によって、名作や素敵な文章に触れられる機会ができることも魅力の一つです。

小学校の宿題のイメージが強い音読ですが、幼児期から行うこともできるため、子どものペースに合わせて始めてみてはいかがでしょうか。


監修:

Profile

汐見稔幸(しおみとしゆき)

汐見稔幸(しおみとしゆき)

一般社団法人家族・保育デザイン研究所 代表理事 東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長) 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。自身も 3 人の子どもの育児を経験。 保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長でもある。持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場「ぐうたら村」村長。NHK E-テレ「すくすく子育て」など出演中。 最近の主な著書 ・『見直そう!0・1・2 歳児保育 教えて!汐見先生 マンガでわかる「保育の今、これから」』2023 年(Gakken) ・『汐見先生と考える こども理解を深める保育のアセスメント』2023 年(中央法規出 版) ・『子どもの「じんけん」まるわかり』2021 年(ぎょうせい) ・『教えから学びへ』2021 年(河出書房新社) ・『今、もっとも必要なこれからのこども・子育て支援』2021 年(風鳴舎) ・『エール イヤイヤ期のママへ』2021 年(主婦の友社) ・『エール プレ思春期のママへ』2021 年(主婦の友社) ・『保育者のためのコミュニケーション・トレーニング BOOK』2019 年(ぎょうせい)、 ・『0・1・2 歳児からのていねいな保育』 全 3 巻 2018 年(フレーベル館) ・『汐見稔幸 こども・保育・人間』2018 年(学研) ・『「天才」は学校で育たない』2017 年(ポプラ社)、 ・『人生を豊かにする学び方』2017 年(筑摩書房) ・『さあ、子どもたちの「未来」を話しませんか』2017 年(小学館)、ほか多数。
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