小さな生き物との出会い。身近な生物から子どもが学ぶこと

小さな生き物との出会い。身近な生物から子どもが学ぶこと

子育てに関する著書などで活躍中の久留島太郎さんのコラムです。今回は、子どもが見ている小さな世界について書いていただきました。

子ども目線の世界

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iStock.com/imacoconut

子どもと一緒に歩いていると、子どもが急に立ち止まって地面の虫をじっと眺めたり、きれいな石を拾ったりすることがありませんか。かつて自分が小さかった頃に、座り込んでアリの巣をのぞいたり、砂の中からきれいな石を探したりしたことを覚えていませんか。

大人よりも背の低い子どもたちに見えている世界は、大人が見ている世界とは違うのかもしれません。

子どもたちの興味関心に心を寄せようとおもう時、子どもたちの目線に実際に立ってみるということはかつて子どもだった大人ができることです。そこから見えてくる世界に共感してくれるパパやママがいることが、子どもたちにはとっても嬉しいことなのです。

子どもが見つめる目の先に

子どもたちにとって身近な虫といえばアリかもしれません。学生に「小さい頃に身近だった生き物といったらなんですか?」と聞くと、「アリ」という回答が多く聞かれます。

アリはその動きが多様で、巣穴から出入りする様子もおもしろいため、子どもたちがじっと見つめる目の先にいることが多い生き物です。しかし、子どもの指先よりも小さく、捕まえるのも難しい。大人でも捕まえるのが大変な生き物です。

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iStock.com/monzenmachi

アリと同じくらい身近な環境に生きている生き物のひとつにダンゴムシがいます。ダンゴムシも多様な動きはするものの、動きはゆっくり。そして触ると体を丸めるという不思議な動きをします。丸くなったダンゴムシは子どもの小さな指先でもつまんで捕まえることができる生き物です。

手のひらに丸くなったダンゴムシを載せてしばらくすると、もぞもぞと丸めた体を伸ばして歩いていきます。そんなダンゴムシは子どもたちにとって身近に触れることができる生き物なのです。

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生き物のおもしろさを発見する

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Purino/Shutterstock.com

実は子どもたちはさまざまな場所でダンゴムシと出会うことになるのです。小さい頃は道端でパパやママと一緒にダンゴムシに出会います。「おもしろいね」「かわいいね」という、自分よりも小さい生き物との出会いを通して、世界のおもしろさを目にします。

次に、幼稚園や保育所、こども園などの遊びの中で出会うダンゴムシは、パパやママと一緒に見て触れたダンゴムシとは少し違うかもしれません。出会い方が変わることで子どもたちの興味も広がっていきます。

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iStock.com/kohei_hara

小学校に上がると、低学年の生活科では生き物と触れ合う学習の中で、身近な生き物に「かかわる」「触れる」「大切にする」ことを学ぶなかでダンゴムシに出会い直す子どももいるでしょう。

高学年になると、理科の学習の中で「生物どうしのつながり」を学ぶのですが、そこでも食物連鎖の中でりっぱに生きているダンゴムシと出会い直します。

子どもたちはダンゴムシとまず道で出会い、そして保育の場で出会い、次に学びの場で出会うのです。そんな出会いを通して、子どもたちは小さい生き物を大切にする気持ち、世界の不思議や小さい生き物への畏敬の念、人間とそれを取り巻く環境とのよりよい付き合い方を学んでいくのではないでしょうか。

子どもの世界をいっしょに見る

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iStock.com/tetsuomorita

1日3分でもよいです、家まで歩いて帰る道、自転車で移動の人は自転車置き場から玄関までの道、車で移動の人は駐車場の隅っこに腰を下ろして、子どもたちの世界をぜひ一緒に覗いてみてください!


執筆:久留島太郎

Profile

久留島太郎(植草学園短期大学准教授)

久留島太郎(植草学園短期大学准教授)

植草学園短期大学准教授。私立幼稚園、国公立幼稚園、公立小学校の教諭を経て現職。「NPO法人タイガーマスク基金」理事。社会福祉法人房総双葉学園理事。「NPO法人ファザーリング・ジャパン」元理事。4人の息子の父親としての立場、保育にかかわる教員としての立場、社会的養護を必要とする子どもたちと接する立場から、子どもたちが育つ「環境」を考えることをフィールドとしている。著書に『新しいパパの教科書』(学研)、『3歳までの子育ての教科書』(アスコム)。

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