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話題のモンテッソーリ教育。日本の幼稚園との違いを専門家が解説
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幼児教育研究家
幼児教育研究家
英語プリスクール「リリパット・リトルキンダー」経営者、「日本・欧米いいとこどり育児」を提唱する幼児教育研究家。経営者としての視点と教育者としての視点から、子ども達が生きる未来の社会を見据えて教育に取り組んでいます。 保育士、英語教師資格保有。
世界や日本のさまざまなところで活躍する方が幼児期に受けていたことで有名になったモンテッソーリ教育。でも、モンテッソーリ教育って、具体的にはどんな教育なのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか?今日は、『モンテッソーリ教育で伸びる子を育てる』の著者で、日本・欧米いいとこどり育児を提唱している平川裕貴が、モンテッソーリ教育が日本の幼稚園とどう違うのかお話したいと思います。
モンテッソーリ教育は幼児教育なの?
モンテッソーリ教育は、イタリア初の女性医師であったマリア・モンテッソーリによって生み出された教育法です。
モンテッソーリは、障がい児教育に携わった後、家庭的に恵まれない子ども達を預かる“子どもの家”(保育所のようなもの)の監督を任されました。そこでの経験や観察からモンテッソーリ・メソッドが生まれました。ですから、モンテッソーリ教育は幼児教育と思われているのですが、実際は幼児期から青年期まで(24歳)の成長課程を対象にしている教育法です。
日本に初めて紹介されたのは1912年のこと。でもこの時は、日本の集団主義に合わないとされた教育法でした。再び脚光を浴びたのは1960年代に入ってから。筆者も30年前英会話スクールを開校する時にこの教育法も参考にしました。
日本では、モンテッソーリ教育を取り入れている小学校も中学校は少ないようですが、欧米ではたくさんあるようです。世界的に見れば、モンテッソーリ教育は、幼児教育とは言えませんが、日本では、幼稚園や保育所でモンテッソーリ教育を取り入れているところがありますから、幼児教育として、日本の幼稚園とどう違うのか見てみましょう。
モンテッソーリ教育の大きな特徴
モンテッソーリ教育が、日本の一般的な幼稚園と一番大きく違う点は、何と言ってもその授業スタイルでしょう。
さまざまな活動コーナー
モンテッソーリ教育では、子ども達が様々な活動ができるコーナーを設けています。パズルをしたり数や文字の勉強をしたり、音や匂いで遊ぶこともできます。
子ども達は、自分の好きなコーナーで自由に活動できるのです。この活動のことをモンテッソーリ教育では「お仕事」と呼び、用意されている専門の教材を「教具」と言います。教具は、ちょうど知育玩具のようなもので、それぞれに隠された教育的意図がありますが、子ども達は面白い道具で遊んでいるという感覚でしょう。
個性を大切にした先生のサポート
モンテッソーリの先生は、個別に活動している子ども達のところを回って、必要に応じてサポートするというスタイルです。
ほとんどの活動は、子ども達が一人ずつ個別に行います。ですから、先生の子どもに対する接し方も、日本の幼稚園の先生とは大きく違います。
日本の幼稚園では、クラスのみんなに工作を作ったり、みんなで歌ったりお遊戯をしたり、クラス全員で同じことを行うことが多いですね。日本の幼稚園の近くを通ると、子ども達が元気に歌っている声が聞こえてきたりします。でも、モンテッソーリの幼稚園では、みんなに一斉に同じことをさせるということはありませんから、総体的にとても静かです。
こういう点では、やはりモンテッソーリの幼稚園は個性を大切にする欧米風、日本の幼稚園は集団の和を大切にする日本的教育法と言えます。
日本の幼稚園とモンテッソーリ教育の授業、どちらがいいのか
このように指導のスタイルがまったく違う教育方法。では、モンテッソーリ教育の授業と日本の幼稚園の授業はどちらがよいのでしょうか?
当然のことながら、どちらにもメリット、デメリットがありますので、簡単に書き記してみます。
モンテッソーリ教育の授業
一人一人が、自分の好きな活動を好きなだけできるので、子どもの特性や才能を見つけやすい。また、自分の好きなことに集中して取り組めるので、自分の才能や得意を伸ばせる。
半面、個別活動なので、日本で重視される協調性や他の子とのコミュニケーション能力に不安があるという意見があるようです。
一般的な日本の幼稚園の授業
クラスのみんなが同じ活動をするので、みんなで仲良くすることや、協力して何かを成し遂げるという協調性が身につく。半面、子どもひとりひとりの個性に注目されることが少ないので、子どもの特性や才能を見出しにくい。また、先生の指示によって動くことも多いので、指示待ちになることが多いという意見もあるようです。
バランスを取って指導していくことが大切
教育の違いについてご紹介しました。どちらにもいい点も不安点もありますね。ただ言えることは、科学技術やAIが著しく発達し、今ある職業の大半がなくなるか、AIに取って変わられるだろうと言われるこれからの時代には、日本的な教育法だけでは、生き残ることが難しくなるだろうということです。
筆者は、日本と欧米の両方から優れた点を取り入れたしつけや教育を提唱していますが、学校と家庭で、日本的な教育と欧米的な教育を上手に取り入れて、バランスを取って指導していくことが大切なのではと考えています。
執筆:平川裕貴
元日本航空CA。外資系英語スクールマネージャーを経て、1988年子ども英語スクールを開校。現在、英語プリスクールで、3歳から6歳までの子ども達を、幅広い視野と思いやりを持ったバイリンガルに育てている。
また、スクール経営の傍ら、長年欧米文化に触れてきた経験から、日本と欧米の優れた点を取り入れたしつけを提唱する幼児教育研究家として活動。フジテレビ『ホンマでっか!?TV』 に子ども教育評論家として出演。
また、英語やしつけに関する記事を多数執筆。著書に『5歳からでも間に合う お金をかけずにわが子をバイリンガルにする方法』(彩図社)『グローバル社会に生きる子どものための-6歳までに身に付けさせたい-しつけと習慣』(アマゾン)
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平川裕貴
英語プリスクール「リリパット・リトルキンダー」経営者、「日本・欧米いいとこどり育児」を提唱する幼児教育研究家。経営者としての視点と教育者としての視点から、子ども達が生きる未来の社会を見据えて教育に取り組んでいます。 保育士、英語教師資格保有。