妊娠中の体重増加に正解はあるのか。医師に聞く、リスクや管理方法

妊娠中の体重増加に正解はあるのか。医師に聞く、リスクや管理方法

妊娠中はホルモンバランスの乱れやつわりなど体にさまざまな変化が現れますが、なかでも気になるのが体重の増加。急激に体重が増えた場合、ダイエットをするべきか迷うこともあるのではないでしょうか。今回は、妊娠中に体重が増える原因や影響、体重管理のコントロールについて解説します。

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

妊娠中の体重増加に正解はあるのか

妊娠中は、赤ちゃんの成長とともに母親の体重も少しずつ増加していきます。体重が増えすぎないように意識をしていても、定期健診で体重増加を指摘されたり、急激な体重変化に戸惑ったりすることもあるかもしれません。

赤ちゃんの成長以外にどのような原因があるのか解説します。

体重増加の大きな原因はホルモン作用

妊娠中は、胎盤から体内に脂肪を溜め込む働きをするhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)というホルモンの分泌が影響して、体重が増加すると考えられています。

また、妊娠中は出産時の出血に備えて体内の血液量が通常の1.4倍ほど増えるため、血液量の増加も体重が増える原因のひとつ。

血液などの水分量が増えて水分が体外に排出されにくくなり、むくみやすくなります。このむくみも体重増加の大きな原因です。

食べつわりによる食べ過ぎや、妊娠中の体形変化に伴って感じる、疲れやすい、動きにくいという理由での運動不足が、体重増加に影響することもあります。

体重増加が妊娠中に与えるリスク

妊娠中の体重増加によって、母親や赤ちゃんが危険にさらされる可能性があることも忘れてはいけません。妊娠中に、急激に体重が増えると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になる可能性があります。

妊娠高血圧症候群になると、低体重児になったり、早産につながる場合も。さらに常位胎盤早期剥離のリスクを高めてしまうため、要注意です。妊娠糖尿病になると、赤ちゃんが心臓病や新生児低血糖になったり、体に奇形がみられたりする場合もあります。

これらの病気以外にも、脂肪や体重の増加によって産道にも脂肪がつくと、産道が狭くなり、難産になる可能性が高まります。
出産 ママ
iStock.com/gorodenkoff
反対に、赤ちゃんの身体が大きくなりすぎると、分娩時に赤ちゃんの肩甲骨が母親の恥骨に引っかかってしまう「肩甲難産(けんこうなんざん)」になるケースも。

長時間の出産は、母親や赤ちゃんを危険な状況におくだけでなく、緊急帝王切開になる可能性もあるため、注意が必要です。

推奨体重増加量は約7~12kgが目安

妊娠前の体重によって妊娠中の体重増加の目安は変わってきますが、妊娠すると以下の内訳で体重の増加がみられます。

・赤ちゃんの体重、3~4kg程度
・羊水 500g程度
・胎盤 500g程度
・血液増加 2kg程度
・母体の皮下脂肪 2kg程度

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で自分のBMIを出します。
BMIが18.5未満だと低体重、BMI18.5~25.0だと標準体重、BMI25.0以上だと肥満と判断されます。
体重計に乗る女性
iStock.com/stockvisual
厚生労働省の資料によると、妊娠全期を通しての推奨体重増加量は、低体重だと9~12kg、標準体重だと7~12kg、肥満だと個別対応となっています。BMI25.0以上の肥満に当てはまる場合の推奨体重増加量は、5kgが目安です。
出典:妊産婦のための食生活指針/厚生労働省

過度なダイエットは危険

妊娠中の体重を気にしすぎるあまり、食事制限をしたり、無理なダイエットを行ったりして体重が減りすぎてしまうのも気をつけたいポイントです。

厚生労働省の資料によると、日本では2500g未満の低出生体重児の割合が増えており、その背景の1つに若い女性の痩せや妊娠中の体重増加不足があるといわれています。
新生児
iStock.com/AndyL
小さく生まれた赤ちゃんは、成人後に心臓病や糖尿病など生活習慣病にかかりやすいというリスクも指摘されています。

妊娠中は、自分自身の健康と、これから生まれてくる赤ちゃんの健康が大事であることを意識して、無理なダイエットはせずに体重管理を行いましょう。
出典:若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題(執筆者:林芙美)/e-ヘルスネット 運営元「厚生労働省」 最終更新日2019年3月4日

運動は無理のない範囲で

妊娠中に運動する場合は、腰をひねる動作やバランスを崩しやすい動作、心拍数が上がる運動はお腹の赤ちゃんの負担になるため避けましょう。

妊娠中の不安要素のひとつに流産がありますが、妊娠12週未満(妊娠3カ月)までに起こる初期流産は、胎児の染色体異常が原因であること多いため、外部的な要因は少ないとされています。それ以降の妊娠12週以上からの流産は、母体による影響が大きいとされているため、注意が必要です。

妊娠中は体調が優れないことも多いです。運動をしているときにお腹の張りや出血、少しでも違和感があった場合はすぐに中止し、無理のない範囲で行うことが大切です。

また、妊娠中は代謝が上がって汗の量が増えたり、トイレの回数が増えたりして、水分を失いやすくなります。そのため、運動をするときはこまめに水分を取るようにしましょう。

ウォーキングは、出勤時や近所に買い物に行くときなどに気軽に取り入れやすい運動です。20~30分程度持続することで、適度な有酸素運動の効果が期待できます。
ランニング 女性
iStock.com/bee32
マタニティヨガやマタニティスイミングを始める場合は、一般的に妊娠16週~27週(妊娠5カ月~7カ月)の妊娠中期の時期が安定期でよいとされています。

マタニティヨガは、うつ伏せや腰をひねる動きに、マタニティスイミングは、プールサイドでの転倒に注意が必要です。不安な点がある場合は、医師に相談しましょう。
出典:エアロビクス/有酸素性運動/e-ヘルスネット 運営元「厚生労働省」

食事や生活習慣の管理が体重コントロールに

毎日体重を測ることは、簡単にできる体重管理方法のひとつです。毎日の体重を記録しておくと、体重の変化が目に見えてより意識しやすくなるでしょう。

体重を測らない日が続くと、体重が増えていることに気づけない場合もあります。朝起きて最初に体重を測ったり、お風呂に入る前に測ったりなど、毎日決まった時間帯に体重計に乗る習慣をつけましょう。
メモを取る妊婦
iStock.com/NataliaDeriabina
夜遅くまで起きていると食欲が増してしまう場合もあるため、早寝早起きを心がけ、生活習慣を整えることも大切です。

また、体重コントロールでは、食事の管理も重要。妊娠中に揚げ物や甘いものばかり食べていると一気に体重は増加します。妊娠中は特に塩分、糖分、脂分を控えて和食中心の食事を心がけましょう。

妊娠中は便秘にもなりやすいため、煮豆や納豆、しいたけやしめじ、わかめなどの食物繊維が豊富に含まれている食材を意識的に取り入れましょう。

汁物でお腹を膨らませたり、白米を玄米や五穀米に切り替えたりすると満腹感を得られやすいです。きのこ類やお豆腐、刻んだ野菜などのヘルシーな食材を加えて食事のボリュームを出したり、油を使わない料理を取り入れたりするなど料理方法を工夫するのもポイントです。
料理
iStock.com/kumikomini
「妊娠中は注意深く体重をコントロールしなければならない」というストレスから、つい食べすぎてしまうということもあるかもしれません。

どうしても甘いものが食べたくなった場合は、果物やヨーグルト、噛み応えのあるドライフルーツを食べてお腹を満たすのもひとつの方法です。無理をせず、自分に合った体重管理法で体重増加を防ぎましょう。

監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

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信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。

患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2020年10月08日

おすすめユーザーのコメント
1
    Atsuki Komuro
    ホルモンバランスの変化だけでなく血液量の増加もあるのか。
    こういう知識は接する機会持ててな
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