非常に強い感染力を持ち、空気、飛沫、接触など、人から人へとうつっていく麻疹(はしか)ウイルス。免疫を持っていなければ発症率はほぼ100%といわれています。今回は麻疹(はしか)と、混同されがちな風疹の症状や原因、感染経路や予防方法などについて解説します。
「麻疹(通称:はしか)」と風疹(通称:三日ばしか)は、どちらも通称に「はしか」がつく病気です。
予防接種(MR)が、麻疹、風疹の両方を予防する混合ワクチンになっていること、どちらも発疹をともなう症状であることから、一括りにされることの多い感染症ですが、それぞれ異なるウイルスが原因の、まったく異なる病気です。
まずは麻疹(はしか)と風疹の症状や特徴、違いを見ていきましょう。
麻疹(はしか)は、平成19、20年に10~20代に大流行しましたが、平成20年から5年間、中学1年、高校3年に該当する年代に2回目の麻しんワクチン接種を受けるようにしたことにより、その後の10~20代の患者数は激減。
2008年には11000人を超えていた患者数は、2020年で13人にまで減少し、現在では日本は、麻しんの排除状態に認定され、海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例のみです。
とはいえ、毎年ゼロではないため、注意が必要です。
麻疹(はしか)と混同されがちな風疹ですが、原因となるのは風疹ウイルスです。風疹の流行時期は冬から春といわれており、麻疹(はしか)とは発生時期が少し異なります。
風疹ウイルスの潜伏期間は長く、2~3週間は症状が出ないといわれています。個人差もありますが、風疹の初期症状は、
の計2回の予防接種が推奨されています。
MRワクチンは、一度でも接種するとほとんどの人が体内に麻疹(はしか)の抗体を持つことができ、さらに2度目のMRワクチンを打つことで生涯にわたり抗体が持続されるといわれています。
そのため、1歳からの初回接種を終えていれば、2度目のワクチン予防接種を終えていなくても、保育園や幼稚園などの集団生活を送ることに問題はありません。もちろん、年長の年になったら必ず追加接種をおこないましょう。
1歳のお子さんは2歳になるまで、年長のお子さんは3月31日まで、は公費で接種が可能ですので、接種したか不安な方は母子手帳などを確認してみてくださいね。
麻疹(はしか)は初期症状が風邪に似ていて、迅速に結果が出る検査方法がないため、発症後、コプリック斑や皮膚の発疹が出るまで診断がつかない場合があります。
発疹がでてきたら、速やかに医療機関を受診してください。診察前に電話などで医療機関に申し出ておくのもよいでしょう。
麻疹(はしか)には、具体的な治療方法や特効薬がないといわれています。麻疹ウイルスの力が弱まるまで症状を和らげるための対症療法をしていくことになるでしょう。
処方される薬は、咳止めの薬や高熱を和らげるための解熱剤などです。咳や鼻水、高熱を放置すると合併症につながる場合もあるため、処方された薬はしっかり服薬させましょう。
感染力が強い麻疹ウイルスは、赤ちゃんや子どもだけでなく、抗体のない大人にもうつりやすく、大人に感染した場合にも重症化することは珍しくありません。
特に妊婦さんが麻疹ウイルス感染すると流産や早産を招く危険性があるため、注意が必要です。ママやパパは麻疹(はしか)の流行時期の前に抗体検査や予防接種は済ませておきましょう。
子どもが麻疹(はしか)にかかった際に注意しなければならないのが、
麻疹(はしか)はかつての大流行をきっかけに、MRワクチンの定期接種化が始まり、今日の日本での発生件数は減りました。
しかし、感染力がきわめて強いため、子どもも大人も発症すると回復までに10日以上かかることが多い、やっかいな病気です。
麻疹(はしか)に感染を防ぐ方法として有効な手段は、MRワクチンの予防接種を受け抗体をつけること、そして日ごろ体調管理をおこない、免疫力を上げることといわれています。
公費で定期接種を受けられるのは1歳と、年長の学年となっているため、該当のお子さんがいるご家庭では、予防接種を受けているかどうか、再度確認してみてくださいね。
金髙太一(おひさまクリニック)
おひさまクリニック院長。小児科専門医、地域総合小児医療認定医。小児の感染症、アレルギー、免疫・膠原病を中心に東京、横浜の病院で研修・診療の経験を積み、2015年に東京の十条にておひさまクリニック(小児科、耳鼻咽喉科)を開院。
子どもたちが健やかに成長していくためのサポートをしたいと思っております。また、3児の父でもあるので、子どもに関することでしたら、お気軽にご相談ください。
2021年03月24日
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