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職場復帰してから夫との家事育児の分担がうまく行くか不安。夫のサポートと育児に追われて自分の仕事ができない。子どもの成長に合わせて働き方を変えたけどこのままでいいのか。子育てしながら働く女性は、キャリア形成にさまざまな悩みを抱えるものです。そこで、39歳まで専業主婦、その後渋谷109のアパレルショップに就職し、現在はドムドムハンバーガーを運営する(株)ドムドムフードサービス代表取締役社長の藤﨑忍さんに、働く女性たちのお悩みに答えていただきました。
▼▼▼藤﨑社長記事前編はこちら▼▼▼
「こだわらない」心が可能性を広げる
ーー次のご質問は文面でいただいています。
藤﨑 夫が病気にならなかったら、そのまま専業主婦として生きていくつもりでした。仕事にまい進しようと思ったタイミングは、39歳で働き始めた時ですね。働かざるを得なくなったからには、1秒目から仕事にまい進しようと思ったし、楽しもうと思いました。
ーーとなると、相談者の方がおっしゃるように「未来の自分のことはわからない」ですね。
藤﨑 そうそう。だから、こだわらない心が大事だと思います。
「こうあるべき」って強いこだわりを持つことは、自分を殻に閉じ込めるのと同じだと思うんです。
自分にはこだわりがないからこそ、渋谷109のあとに新橋の居酒屋でバイトもできた。その後の起業も、ドムドムハンバーガーへの就職も、すべて「自分はこういう人間」だとこだわらなかったから出来たんだと思います。何事もやってみないとわからないですからね。
ーーもともとこだわらない性格だったんですか?
藤﨑 いえ、そうではないんです。もともとは固定観念を強く持っていて、こだわりが強かった。小学校から短大までエスカレーター式で進んで、似た境遇の友だちに囲まれていたので、限られた世界の価値観の中で生きていました。
それが大きく変わったのは、渋谷109で働いたのがきっかけです。109で出会った女の子たちのおかげで、自分の感覚は大きく変わりました。
当時の渋谷はギャル全盛期で、おへそや鼻のピアスは当たり前。ローライズのジーンズが流行っていて、みんなしゃがむとTバックが見える(笑)。そんな調子で、毎日驚愕することばかりでした。見た目は派手だし言葉遣いも悪いけど、一緒に働くうちに、やさしい面や一生懸命な面が見えてくる。人を多面的に見られるようになったのはこの頃からです。
藤﨑 それまでの私は人を見た目で判断してきたし、狭い価値観のなかで生きてきた。だけど、自分の固定観念を抜け出して、こだわらない心を持った方がむしろ生きやすいし、こだわらない方が物事がうまく行くと実感したんですね。
渋谷の109で働くこと自体、それまでには考えもみなかったことだけど、何が自分を成長させるかなんて飛び込んでみないとわからない。もし失敗したらまた止まればいいし、そもそも人生に失敗なんかない。
占いのいいところだけを信じる
ーーたしかに! 素敵な言葉です。だけど、知らない環境に飛び込むことに不安はなかったですか?
藤﨑 それはね、いつも不安! だから頑張るんです。不安を補うために、とにかく頑張る。
将来の夢を聞かれることがあるけど、その質問は私にとってむずかしいんですよ。将来を考えるよりも、とにかく目の前にあるハードルを一個一個越えていく感覚でここまで来たので。
正社員として初めて働き始めたのが50歳の頃で、会議で「稟議書」って言われてもわからないわけです。「稟議書って何?」ってところでもう不安(笑)。他にも「この資料をPDFにしておいて」なんてさらっとお願いされるけど、「えっ、何をどうするって!」みたいな。
そういうことが多すぎたから、将来の目標を考えるよりも、目の前のわからないことを理解するので精一杯でした。そういう積み重ねでしかないですよね。
ーーとにかく頑張ること以外に、不安を解消するためにしていることはありますか?
藤﨑 占いを毎日見てます! そこに書いてある良いことだけを信じるようにして。そう聞くと、不安症がウソじゃないってわかるでしょう(笑)。
藤﨑 あとは、自分を好きになることが不安を打ち消すための一つの方法でしょうか。
好きな人のことなら、悪い部分には目をつぶれるじゃないですか。それと同じで、自分のことを好きになれば、自分の悪い部分ばかり考えずに済む。「私はこういうことが出来ないけど、こっちはできるからいいや」と思えるようになる。
きっと、自分に厳しい方が多いと思うんです。「普通ならこれができて当然なのにできない」とか「専業主婦は劣っているように感じる」とか。
「夫や子どものために動ける自分はえらい」って、自分をねぎらって、自分を肯定してほしいです。
ーー頭ではわかりながらも、「自分を好きになるなんて無理」と思う方も多いかもしれません。SNSで他のママたちが明るく楽しく育児しているのを見て落ち込んだり、人と比較して自分をダメだと思ってしまったり…。
藤﨑 うーん……。私も人と自分を比べて苦しかった時期はあったけど、それでもその都度自分を好きになる努力をしてきたかもしれないですね。
藤﨑 結局、他の人との資質や環境の差を嘆いても変わらなくて、自分の内なる声と戦わない限り、自分が楽になる方法はないのかもしれない。
SNSで他の人の生活をうらやましく感じるのは今の時代ならではだと思うけど、かといってSNSを見ないようにしても、根本的な解決にならない気がします。
もし「自分を好きになってみて」と言われて抵抗感があるようなら、抵抗感を持ってしまう自分をひたすら見つめる。まずはそうやって自分と向き合うことじゃないかな。
他人との比較ではないところで、自分を好きになれたらいい方向に向いていくと思います。
家の外で働くことだけが「女性の活躍」?
ーーこちらの方からも文面でお悩みをいただいています。
藤﨑 私の妹も、商社に勤める男性と結婚して海外生活が長かったんです。この方と同じように、夫のキャリアのサポートをしていましたね。
ーー「何から始めるとよいのでしょうか」との質問ですが、いかがでしょう。
藤﨑 この方の場合はまず、ご本人が何をしたいのかを明確にすることが大事かもしれません。
実績がないから自信がない、という気持ちはわかるのですが、私も39歳で仕事を始めた時にはこの方と同じ状況でした。
夫が病気で働けなくなったという事情があって、私が働かざるを得なくなった。だから、これまでずっと、やるべきことをやってきただけなんです。
なので、始める前から「実績がないので、どうしても自信がありません」と考える必要はないとお伝えしたいです。
キャリア形成に関しても、最初に目標を立ててその通りに実行する人もいると思いますが、私の場合は違いました。日々目の前のことに一生懸命取り組んだ結果、振り返ってみるとそれがキャリアになっていましたね。
ーー藤﨑さんの場合、専業主婦としてのスキルが就職後にも活かされていますよね。
藤﨑 まさにそうですね。家庭を運営することで身につくスキルには、外で働くうえでも必要なものがいろいろとありますよ。
たとえば前編に出てきた、夫と家事育児のタスクを分担されたお話は、ビジネスの場でも応用できる考え方ですよね。
藤﨑 この方の場合、海外でワンオペ育児をされているのであれば、子どもの送迎、夫の会社の人たちとのつながり、ほかにも支社長会や婦人会のような会合があるかもしれない。ボランティア活動もあるかもしれませんし、語学の習得もできるかもしれない。
そういった日々の活動の中で培われているものは間違いなくあるはずです。ご本人が、いま経験していることがビジネスでも活かせるスキルだと気付かれていないだけかもしれません。
ーー以前は専業主婦の女性がたくさんいたけれど、いまは「子どものいる女性も働いて当たり前」といった風潮が少しありますよね。そういったなかで、ご自身にキャリアがないことを心細く感じられているのかもしれません。文面から感じたことなので、あくまで想像ですが。
藤﨑 そうですね。そういう意味で言えば、政治家やメディアが「女性活躍」という言葉を盛んに使いますよね。
たとえば、インタビューなんかでも「藤﨑さんは活躍されていますが」から始まって、「女性の活躍や社会進出に関してどう思われますか?」と聞かれることがよくあります。
藤﨑 だけど、そもそものお話として、会社の社長であることが「活躍」なのでしょうか?
私は、外で働くことだけではなく、家庭内でのサポートも「女性の活躍」だと思っています。自分自身、家庭で夫と子どものサポートをしていた時も今と変わらず一生懸命でした。それは自分で選んだ道ですし、不満はありませんでした。
外で働きながら子どもを育てることは素晴らしいし、家の中の仕事に向き合う人も素晴らしい。世の中がそういう論調になっていけばいいと思います。そうじゃないとむやみに引け目を感じる人が出てきてしまう。
ーー政治家やメディアの言葉に惑わされず、自分がどうしたいか見極めることは大事ですね。
藤﨑 そうですね。あくまで、自分がどうしたいかを起点に考えるのがいいのかなと思います。
ーーありがとうございます。今日は藤﨑さんのお話を伺って、前向きな気分になれました。
藤﨑 いえいえ、みなさんの想いに寄り添えたのか。良きアドバイスが出来たのか……。いささか不安ですが、みなさんとのお話が私自身の気づきにもなりました。
書籍:藤﨑流 関係力