フルタイム復帰後の家事育児分担が不安、子どもへの罪悪感も……ドムドムハンバーガー社長はどう考える?

フルタイム復帰後の家事育児分担が不安、子どもへの罪悪感も……ドムドムハンバーガー社長はどう考える?

職場復帰してから夫との家事育児の分担がうまく行くか不安。夫のサポートと育児に追われて自分の仕事ができない。子どもの成長に合わせて働き方を変えたけどこのままでいいのか。子育てしながら働く女性は、キャリア形成にさまざまな悩みを抱えるものです。そこで、39歳まで専業主婦、その後渋谷109のアパレルショップに就職し、現在はドムドムハンバーガーを運営する(株)ドムドムフードサービス代表取締役社長の藤﨑忍さんをお招きし、女性たちのお悩みに答えていただきました。前後編の前編は、春からのフルタイム職場復帰に不安を抱える女性とのお話です。

フルタイム復職予定、でも不安でいっぱい

お悩み相談の前に、藤﨑忍さんのこれまでの歩みをご紹介します。

――今日は藤﨑社長に育児中の女性たちからのお悩みにお答えいただきます。

藤﨑 みなさんの悩みにちゃんと寄り添えるかいささか不安ではございますが、真摯に考えてお答えできればと思います。よろしくお願いします。

藤﨑忍(ふじさき・しのぶ) 1966年生まれ。東京都出身。青山学院女子短期大学卒。政治家の妻になり39歳まで専業主婦、その後夫が病に倒れ生活のために働き始める。SHIBUYA109のアパレル店長、居酒屋アルバイトを経て、新橋で居酒屋を開業。一躍人気店に。その腕を常連客に見込まれ、ドムドムのメニュー開発顧問に。「手作り厚焼きたまごバーガー」をヒットさせ、ドムドム入社。その後わずか9ヶ月で社長に。「丸ごと!!カニバーガー」などが話題になり、ドムドムの業績は確実に回復している。

――それでは早速お悩みを聞いていきましょう。おひとりめは、読者代表としてお越しくださった池永さんです。今日は下のお子さんと一緒にご参加いただいています。

藤﨑 かわいい、お子さんはおひとり?

池永 上にもうひとりいて、その子は4歳です。いま保育園に通っていて、この子も同じところに決まれば、5月から職場復帰ができそうです。

 
池永香織さん

ーー今日は職場復帰に関するお悩みだと。

池永 はい。もともと正社員として医薬品の営業職をしていて、上の子が生まれたあと、一度時短勤務で職場復帰しました。

ただ時短で働いてみると、責任や求められる仕事の役割はほとんど変わらないのに、一時間早く上がるだけで給料がけっこう下がることに気付いて。

それに、「(時短だから)お先に失礼します」って早く帰るのも肩身が狭いというか……。それで、業務上の意見も言いにくくなってしまいました。

藤﨑 そこは今の社会の問題ですね。いくら働き方が自由になったと言っても、現状はそういう思いをする人が出てきてしまう。

池永 そうなんです。だから今回は時短ではなく、フルタイムで復帰することにしました。お給料も下がらないし、肩身の狭い思いをせずに済むので。それに営業職なので、ある程度自分の裁量で働けるから、そのメリットも活かしていこうと思っています。

ただ、やっぱりフルタイムで働いて、育児や家事をちゃんとやっていけるのか不安で……。

藤﨑 夫さんは協力してくれそうですか?

 

池永 そうですね、今は何とか……。

藤﨑 以前は違った?

池永 はい。夫の協力なしにはフルタイムでの復帰は無理なのですが、以前は夫が家事育児に非協力的だったんです。それで一度爆発して(笑)、ふたりで話し合いました。

藤﨑 そうなのね(笑)。

池永 それで、私が家事をリストアップして、その中から買い出しとかゴミ出しとか、夫が得意なものを選んでもらって、どうにか分担しました。

 
※写真はイメージ(iStock.com/Yagi-Studio)

池永 今度フルタイムで復帰すると、また分担の仕方を変える必要があるので、それを早めに話し合って、シュミレーションしてるんですけど、本当にうまくできるのか……。夫は在宅勤務もしやすい環境なので、その点は救いなのですが。

藤﨑 いろんなことを考えてしまいますよね。だけど、一度の爆発を経て(笑)、まず夫さんが一緒にシミュレーションしてくれている、家事育児の分担を一緒に考えている、この現状は素晴らしいこと。それをまず認識するのがいいかもしれないですね。

これはアドバイスというよりマインドの問題だけど、いまの状況って良くも悪くもずっと続くわけではないんですよ。どうしたってそのうち変わる。だから、まずは現状をラッキーだと捉えて、あとはやってみながら軌道修正するしかないんですよね。

ーー「状況は変わる」ということで言えば、藤﨑さんも今は社長ですが、長年専業主婦をされていたのですよね。

藤﨑 そうそう。もともとわたしはお嫁さんを将来の目標にしていて、実際にその夢を21歳で叶えて。当時は「目標を勝ち得た!」って喜びでいっぱいでした(笑)。政治家の男性と結婚したのも、自営業の人と結婚したかったっていう願い通りでしたしね。

 
※写真はイメージ(iStock.com/SunnyVMD)

藤﨑 私は青山学院大学の短大を出ているので、息子を小学校受験させて青学に入れて。That’s 私立系のお受験ママという感じでした。

だけど、息子が中学校に上がったときに夫が倒れて働けなくなってしまって、私が仕事をするしかなくなったわけです。

そう考えると、人生は予定通りには行かないものなんです。だからこそ、先のことを考えるよりもまず現状に満足して、ありがたいと感じることが第一だと思いますね。

かわいい子どもを授かったことも恵まれている、と捉える。もちろん、子どもを育てるのは大変なので、「もう勘弁、どっか行ってくれ」なんて泣きたくなる時もあると思うけど(笑)、それはもう当たり前のこと。

でもほんとうに、他者との比較で自分を「いい/悪い」と評価するんじゃなくて、いま周りにあるものを見つめて、大切にするのが大事だと思いますよ。

池永 そうですね。たしかに、そういうマインドが大切ですね。ありがとうございます。

実は家事育児の分担以外にも不安なことがあって、それは子どものことなんです。

先日ファイナンシャルプランナーさんに中学受験する場合に必要な金額を聞いて、それなら絶対に私も働かないとダメだなって。だから、子どもが小さいうちに、私が正社員のままフルタイムで働いて、できるだけお金を貯めたい。

 

池永 だけどそうすると子どもと過ごす時間が十分に取れなくて、さみしい思いをさせてしまうんじゃないかって心配で。

藤﨑 やさしいお母さんですね。でも私は、子どもに対して罪悪感を持つ必要はまったくないと思いますよ。ママにはママの人生があるんだから。

親が自分を愛していることが伝わればいいと思う。それは一緒に過ごす時間の問題だけではないよね。ずっと一緒にいても、もし親がスマホいじりっぱなしで子どもに関心を持っていなかったら意味がないし。

池永 そう聞くと安心します。ある本にも、一日に10分や15分でもいいから、子どもと向き合って遊んだり抱きしめたりすれば愛情は伝わると書いてあって。あとは、親以外の大人とも触れ合った経験は子どもにとっていいことだって書かれていて、心が軽くなりました。

藤﨑 心がさらに軽くなるかもしれない話をしますね(笑)。

私が働き始めた当初、息子は中学3年生で、ラグビーと野球をやっていたんですよ。その頃にはもう息子は自分でユニフォームを洗濯するようになっていたんですが、ある晩に「洗濯機回しておいたけど、今日は疲れたからもう寝たい。お母さん、干すのだけやっておいてもらえる?」って先に寝たんです。

それで、「わかったわかった」ってオッケーしたのに、私も気付いたら寝落ちしてて……(笑)。朝起きて、もう大騒ぎですよ。「グシャグシャで半乾きのユニフォームなんて友だちに笑われる!」って困っていたので、すかさずハンガーを渡して。結局、授業中にハンガーでユニフォームを干して、無事乾いたユニフォームで部活に出たそうです(笑)。

それくらい本当にバタバタしてたけど、息子は結局私の仕事を応援してくれて。

初めて本を出すお話をいただいた時も、これは自分だけじゃなく家族にも影響が出ると思って悩んだのですが、息子が「お母さんは今まで与えられていたものに対して真摯に向き合ってきたから今がある。だから本は出した方がいいよ」と背中を押してくれたんです。

池永さんのお子さんはまだ小さいけど、今からお子さんの将来のことを考えているし、そういう思いはきっと伝わると思いますよ。

池永 ありがとうございます。そう思ってもらえるよう、がんばっていきます。

 
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書籍:藤﨑流 関係力

2023年03月07日


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