「判断力のある人が無意識にやっていた0歳からの習慣」産後にスタンフォード大で学んだ母の育児法

「判断力のある人が無意識にやっていた0歳からの習慣」産後にスタンフォード大で学んだ母の育児法

KIDSNA編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の書籍。今回は、出産後にスタンフォード大学教育学博士号を取得した、歌手のアグネス・チャンさんの『スタンフォード大学に3人の息子を入れた 賢い頭としなやかな心が育つ 0歳教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) を一部抜粋・再構成してお届けします。

子どもの可能性を伸ばす「教育」は0歳から始められる

「0歳教育」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?

「0歳から教育なんてありえない!」

「そんな早くから教育ってできるの?」

そう思う人もいるかもしれませんね。

もしかしたら、そう思っている人は「教育=勉強」と思っているのかもしれません。教育はいろいろな意味を持つ言葉です。

私は、子どもがもともと生まれながらにして持っている才能や可能性を最大限に伸ばしてあげることが教育だと思っています。頭脳はもちろん、心、体、すべてを伸ばしていくことです。

そう考えると、乳幼児期は教育のもっとも大切な時期です。なぜなら、子どもの脳の発育の80%は、3歳までに完成すると言われているからです。

ユニセフは、人生の最初の1000日が大切であるという研究結果を発表しています。お母さんのお腹で命が始まってから計算して、2歳過ぎまでが1000日になります。

※写真はイメージ(iStock.com/LeManna)
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この時期に愛情とケアを受け、栄養が足りている赤ちゃんは人生の良いスタートを切ることができると言っています。

ユニセフによると、学校での成績や、成人になってからの収入、健康にも影響を与える可能性があると指摘されています。逆にこの時期に愛情、ケア、栄養が足りないと、赤ちゃんの一生に影響を与えてしまう可能性もあります。

『スタンフォード大学に3人の息子を入れた賢い頭としなやかな心が育つ 0歳教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、妊娠してから12カ月までの育て方を紹介しています。

この成長の黄金期に親が子どもに何ができるのか?

毎日の世話の中で、どうすれば子どもがより賢く育てられるのか?

毎日の接し方で、どうすれば子どもは感情豊かで、優しく強い人になれるのか?

まず大事なのは、親としての自信です。自信は知識から生まれます。知識があれば、子どもの世話をする際にストレスや過敏な悩みを軽減し、子育てをより楽しくすることができます。

そこで、みなさんが有意義で、後悔しない、楽しい育児を実現するために、この本を書きました。この本の中で出てくる医学的な話は、小児科医である姉に監修してもらいました。

スタンフォード大学院での学びと3人の子育て

この本のもう一つの特徴は、私自身が大学で学んだ知見と、三人の子どもを育てたことでわかった体験を入れていることです。

私は、長男を出産した後、次男を出産間近だった33歳のとき、スタンフォード大学の大院に入学しました。学んだのは教育学です。

※写真はイメージ(iStock.com/AleksandarNakic)
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もともと教育には興味があったのですが、子どもを産んでからますます教育に対する興味が湧き、一度しっかり学びたいと思っていました。

スタンフォードの病院で次男を産んで、3歳の長男と二人の子どもを育てながら博士課程で勉強をしていました。教育に関する本や論文もたくさん読みました。子どもの教育に熱心な仲間たちにも囲まれて、本当に貴重な知識を得ました。

その後、三男が生まれ、仕事をしながらも、三人の息子たちとできるだけ一緒に過ごす時間を取るようにしました。

親として悔いがないように、毎日がむしゃらにやってきた結果、三人の息子たち全員がスタンフォード大学に合格することができました。

※写真はイメージ(iStock.com/jejim)
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先ほども紹介したとおり、0歳児は成長の黄金期です。私自身、三人の子どもを育てるうえで0歳児からの教育を意識していました。

大学の学びで得た知識に、自分の勘や親から教わったことも付け加えて、毎日さまざまな働きかけをしました。赤ちゃんと過ごす日々は毎日の楽しみでもありました。

乳幼児期の教育がうまくいけば、その後の子育てはずっと楽になります。これは、私自身が三人の子育てをしてきた中で強く感じていることです。

この本では、賢く、心身ともに丈夫な子に育てるために、0歳のときはもちろん、その後の乳児期においてぜひやっていただきたいことを数多く紹介しています。

もし、今子どもが0歳児を過ぎていても、大丈夫です。決してあきらめないでください。

賢い子は赤ちゃん期にさまざまな刺激を受けていた

脳のシナプスは、赤ちゃん期に驚くほど成長します。

つまり、親や周りの人の働きかけ、他の赤ちゃんとの交流、新しい体験によって、どんどん増えていくのです。赤ちゃんが新しい刺激を受けたとき、新しいシナプスが生まれ、脳細胞同士をつなげます。

つまり、赤ちゃんが受けた経験によって、どのシナプスが新しく作られるかも決定されます。形成されたシナプスが脳内に長く存在できるかどうかも、赤ちゃんの経験に左右されるのです。

賢い子に育てたいと思うなら、赤ちゃんに新しい経験をたくさん与えることが最重要になります。

※写真はイメージ(iStock.com/AleksandarNakic)
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赤ちゃんの脳の中にシナプスを作ることは、まるで無数の高速道路を脳内に建設し、脳が素早く働く基盤を作るようなもの。

赤ちゃんの他の人との接触は、脳の成長に影響を与える最大の刺激です。赤ちゃんの要求に、大人が素早く反応し、愛情を持って接することも、赤ちゃんの脳内のシナプスの発達を助け、良い影響を与えます。

また、赤ちゃんと話すことはもちろん、歌う、絵本を読む、遊ぶ……。たくさんの刺激を与えることが脳の成長につながります。

赤ちゃんの脳に多種多様な刺激を与えることは、生涯にわたる学習能力や人間関係に必要な基盤づくりになるのです。愛情のこもった、新しい体験がたくさんある環境に育てられた赤ちゃんは、脳シナプスが成長し、ニューロンの接続もより強くなります。

逆に、赤ちゃんが長い間無視されたり、要求に答えてあげない、または虐待されている場合、赤ちゃんの健康と脳の発達に悪影響を及ぼします。

※写真はイメージ(iStock.com/Anastasiia Stiahailo)
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身体的または感情的なストレスや外傷に直面すると、脳はコルチゾールというホルモンを分泌する信号を出します。血液中のコルチゾールの濃度が高すぎると、脳細胞が死滅したり、脳シナプスを減らしたり、重大な脳回路を損傷することもあります。

その結果、赤ちゃんの人生全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。学習能力、ストレス耐性、対人能力が低下し、感情が不安定になり、病気にもなりやすいことがわかっています。

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自己決定力は生後3カ月から育める

赤ちゃんは3〜4ヶ月から、すでに物事がわかるようになり始めます。この時点で、選択の機会を与え始めることができます

たとえば、二つのおもちゃを手に取って、「どっちが欲しい?」と赤ちゃんに考えさせます。選んだら、赤ちゃんを抱きしめて「いいね」とほめます。このプロセスは、物事を分析する訓練です。

※写真はイメージ(iStock.com/Orbon Alija)
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複数のものを提示されたら、まずは自分の好みを考えます。以前体験したことを思い出して選択をし、自分が選択したものを実際に経験する。このプロセスの中で、赤ちゃんの脳はフル回転します。

これは、赤ちゃんの脳トレに非常に良い効果を持っています。そもそも人生はたくさんある選択肢の中から選んだ結果です。実は0歳から、賢く選択するための訓練を始めることができるのです。

自分で選ぶ訓練をしないと、子どもは受け身に慣れてしまいます。

赤ちゃんのうちから自分の日常を決められる能力があることを実感させると、成長していく段階で、意見のある、自主性のある人間に育っていきます。

私は息子たちがハイハイができるようになった頃、いくつかのおもちゃをちょっと遠いところに置いて、どのおもちゃに向かってハイハイしていくのかを見ることもありました。それは赤ちゃんにとっても面白いらしく、楽しそうにやってくれました。

※写真はイメージ(iStock.com/fotostorm)
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人が何人かいるときは「(赤ちゃんが)どっちにと行くと思う?」とみんなで当てっこするときもありました。

当たった人は大喜び、赤ちゃんをほめ倒すのです。

ただおもちゃを選んだだけなのに……と赤ちゃんはびっくりした顔をするときもありますが、ほめられて、抱っこされて、赤ちゃんも大喜びです。ぜひやってみてください。

0歳児への語りかけの重要性

たくさん話すことは脳の成長にとっても、とても大事です。研究によると、子どもが3歳になるまでに、親からより多くの言葉を聞くと、IQが高くなるといわれています。

だから、0歳のときから、たくさん赤ちゃんと話をしてください。

「0歳児に何を話せばいいの?」と思いますか?最も簡単なのは、自分がやっていることをすべて言葉にすることです。

たとえば、部屋に入るときに、

「ママは今、ドアを開けるよ」

「今、明かりをつけるよ」

「これはライトのスイッチ。これはオン。これはオフ」

といったようにです。

こうすれば、部屋に入るだけでたくさんの単語を赤ちゃんに教えられますね。

赤ちゃんを抱っこして座るときは、

「ママ、今から座るよ。このソファは気持ちいいね」

「触ってみて、柔らかいね」

とソファに座るときも、赤ちゃんに物の名前と感触を教えられます。

※写真はイメージ(iStock.com/kokouu)
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赤ちゃんの口を拭くときも、「よく食べましたね。お口を拭くね」「かわいい口」と指で赤ちゃんの口を触って、「これはあなたの口よ」と赤ちゃんの指を持って自分の口を触ってもらい、次に「こっちはママの口」「ママの口も拭いてくれる?」とナプキンを渡してみたり。

こうすると、赤ちゃんの脳内のシナプスを成長させ、言語を学ぶスピードをアップさせます。そして赤ちゃんは、日常生活に必要なことをたくさん覚えるようになります。

また、赤ちゃんに単語を教えるときには、そのものを指すとより早く言語を学ぶことができるといいます。

たとえば、「見て、きれいなお月さま!」と言うときは、月を指さして見せます。「アリがいるね」とアリを指さしながら声を出すと、赤ちゃんはよりその名前を理解しやすいのです。

※写真はイメージ(iStock.com/Hakase_)
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ときどき赤ちゃんと話すときに、「〇〇でしゅ」「〇〇でちゅか?」などいわゆる「赤ちゃん言葉」を使う人がいますが、その必要はありません。

通常の言葉を使用するほうが、赤ちゃんがより多くの言語を正しく理解し、早く話せるようになります。できれば、ゆっくり、明確に発音すると赤ちゃんにとって、よりわかりやすいでしょう。

子守歌で育む記憶力と算数脳

赤ちゃんは繰り返すリズムが好きです。そして、お母さんの声を聞くのが大好きです。だから、お母さんの歌声は赤ちゃんにとって、最高の脳トレであり癒しなのです。

「私は音痴だから歌は苦手」というママがいるかもしれませんが、実は上手、下手は関係ありません。お母さんの声なら、赤ちゃんにとって最高の音楽なのです。ぜひ軽快で優しい歌をたくさん歌ってあげてください。

※写真はイメージ(iStock.com/Prostock-Studio)
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赤ちゃんの就寝前に子守歌を歌う習慣をつけると、その子守歌を聴いて、赤ちゃんは自然に眠くなります。

私は息子三人ともに、私の母が歌ってくれた子守歌を寝る前に必ず歌いました。それを聴くと、息子たちは魔法にかけられたように、本当によく寝ました。

子守歌が存在するのは偶然ではありません。それはお母さんたちの知恵です。繰り返すリズムとお母さんの声で、赤ちゃんは安心し、幸せホルモンが分泌され、眠りにつくのです。

さらに歌は、赤ちゃんの記憶力を鍛えることもできます。

たとえば、英語のアルファベットは、歌から学ぶ子どもが多いです。心理学で証明されているように、関連情報が多ければ多いほど、物事は記憶しやすくなります。

つまり、歌にはメロディ、リズム、歌詞の三つの情報があり、歌いながらさまざまなことを学ぶと覚えやすくなります。歌を通して、アルファベットだけでなく、曜日、数、九九、単語などを教えることができます。

だから、子どもの頃に習った歌は、大人になっても覚えているのに、丸暗記で覚えた教科書の内容は忘れてしまうことも多いのです。

音楽のリズムを学ぶことは数学の学習に関係している、という研究結果もあります。多くの音楽を聴いた赤ちゃんは、算数を学ぶときに有利とされているのです。

※写真はイメージ(iStock.com/dvulikaia)
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赤ちゃんが1歳前のときでも、いろいろな歌を聴くと、言葉の発音、リズム感、音程が鍛えられるのです。

私は歌手なので、子育て中に息子たちにたくさん歌を歌いました。世界の童謡の子守歌100曲を自分で録音して、息子たちに聴かせたこともあります。日本語でも、英語でも歌いました。

さらに私は適当に曲を作って、彼らを抱いて踊りながら歌ったりもしました。特に曲名はないのですが、子どもたちはキャッキャッと笑いながら喜んだものです。お兄ちゃんたちは弟が生まれると、ママと一緒になって名前のない歌を歌って踊って、赤ちゃんの機嫌を取ってくれていました。

生後6カ月から因果関係を説明する

赤ちゃんは生後6カ月くらいに、「因果関係」について理解し始めます。つまり、自分の動きによって、何かの結果が生まれる、ということがわかるようになるのです。

その際、因果関係がより明確になるように、声に出して説明してあげることが大切です。

たとえば、赤ちゃんがおもちゃを地面に投げて、結果、おもちゃが壊れたとします。そのとき、叱るのではなく、「悲しいね、おもちゃが壊れたね」とあなたの悲しみを表現しましょう。

※写真はイメージ(iStock.com/miodrag ignjatovic)
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「おもちゃが壊れて、お母さんが悲しんだ」と赤ちゃんは原因と結果を知ることになります。そして、「どうしましょう?」と赤ちゃんと相談してみましょう。

直せない場合は、さらに悲しんで、「これからはやらないでね」と繰り返し言ってみてください。

ここで大事なのは、自分の行動によって、大変なことが起きたことを赤ちゃんに認識してもらうことです。自分の行動の因果関係を覚えさせるのです。

たとえば、赤ちゃんが誰かをぶったとき、お母さんが何もしないと、赤ちゃんはその行動が正しいかどうかわかりません。

でも、そのときにお母さんがそばに行って、「人をぶってはいけないよ」と悲しんだ顔をすると、赤ちゃんは自分の行動がお母さんに大変な悲しみを与えていることを認識します。自分の行動が他人を傷つける原因になったということを感じることができるのです。

逆に、赤ちゃんが良いことをしたときは、いっぱいほめてあげてください。

たとえば、赤ちゃんが自分の食べ物をあなたに分けてくれたときは、喜びを大げさに表現して赤ちゃんに感謝しましょう。赤ちゃんはその行為(=原因)は喜ばれる(=結果)ということを認識するのです。

※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)
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遊びを通しても、因果関係を教えることができます。

その中の一つは積み木です。息子たちはよく積み木を使って遊びました。高く積みすぎると、積み木は崩れて落ちてしまいます。ここではどうすれば崩れずに高く積み上げられるかを考えさせるのです。

積み木は、自分の行動がどのような結果を生み出すのかを教える最高の遊びです。

 
 

スタンフォード大学に3人の息子を入れた 賢い頭としなやかな心が育つ 0歳教育

アグネス・チャン(著)

1,650円(税込み)ディスカヴァー・トゥエンティワン

2022.02.21

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